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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.94 野望の果て


   Act.94 野望の果て


 アークトゥルースは、異形の群れの奥深くまで侵攻していた。

「数が多すぎて空間が見えんな…フフ、面白い!!」

 シリウスが、ニヤリと笑う。

「立ちふさがるというのならば、全て撃ち砕いて進むまで!!」

 アークトゥルースの二つの縮退炉が、シリウスの声に応えるように唸りを上げる。

「光子爆雷射出!脚部ビーム砲、デモンズ・スローター…フルバースト!!」

 進路上、進路後方の異形が一斉射撃によって爆散し、視界が晴れる。

 そして、その先に見えたものにシリウスは言葉を失った…。

 見覚えのある凄まじい巨体…しかし、覚えが正しければ、それは既に残骸だった筈だ。

 シリウスが、『それ』の名を紡ぐ。

「ジャガー…ノート…!!」

 そう、そこにいたのは、ロートベルグ帝都の地下で見た、超巨大要塞戦艦ジャガーノートだったのだ。

 しかし、かつて艦橋だったであろう部分に、巨大な人型機動兵器の上半身がついている。

「まさかここまで辿り着くとはな…シリウス!!」

 聞き覚えのある声が響く。

「…その声…ラーゼル…お主なのか…!!」

「いかにも…この力は素晴らしい!デストヴァール、このデータを預けてくれた貴様には感謝せねばなるまい!!これは、その名の通り最高の力だ!!」

 すると、ラーゼルの言葉に応えるように別の声が響く。

「お褒めに預かり光栄だな…この力ならば、究極生命だろうと敵ではあるまい!さぁ、処刑の時間と行こうか!!」

 デストヴァール…ラーゼルと共に、要塞攻略戦の際に大量に出現していた。

 シリウス自身には直接の因縁はなかったが、ルークは彼によって目覚めさせられた。

「成る程な…最後は合体という訳か…」

 そう、デストヴァールの声が機動兵器の上半身から響いていた事を考えると、どうやら、デストヴァールとラーゼルは融合して、

この巨大な要塞戦艦機動兵器を、異形の力で『再現』しているようだ。

「それが、お主らの野望の終着点というのならば、良かろう…お主らの野望も、今日が最後だ!!」

 アークトゥルースが、デモンズ・スローターとフェイト・スレイヤーを構える。

「シリウス=アンファース…アークトゥルース、参る!!」

 その言葉と、ジャガーノートからの攻撃が開始されたのは、ほぼ同時だった。

 ジャガーノートが、艦体のあちこちの巨大砲塔をアークトゥルースに向け、一斉に放つ。

「何の…これしきの攻撃でやられはせぬ!!」

 アークトゥルースが、砲撃の嵐をかいくぐり、レールガンと光子爆雷、脚部ビーム砲を乱射する。

 ジャガーノートの表面に凄まじい爆発が起こるが、相手が大きすぎてまともなダメージを与えられない。

「フハハハハハハハ!その程度の攻撃、蚊が刺した程度も感じないぞ、シリウスよ!!」

「ぬぅ…!」

「数多の余の同胞達よ、今こそ逆襲の時だ…!!」

 いつの間にか、アークトゥルースの後方にいた異形が集まり、融合し、形を変えていく。

 …成る程、これらの異形を制御しているのはジャガーノートらしい。

 ならば、これを倒せば少なくとも指揮系統に大きなダメージを与える事は可能の筈だ。

「成る程、お主らを倒せればこれらの異形は指揮系統を失うか…!!」

 シリウスが、ニヤリと笑う。

「フフ…だが、出来るかな…!!」

 沢山の異形達が融合し、百メートルを超える大型の異形へと姿を変える。数は五十体以上、といった所か。

 機械仕掛けの竜のような姿、その姿に、シリウスは既視感を覚える。

「これは…!!」

「貴様でも分かるだろう…これはルークの戦闘データを異形の力と我らの技術により再現した、いわばメカルーク…!!

 フフフ…万に一つも、貴様に勝ち目はないと知るが良い!!やれィ!メカルークよ!!」

 メカルークと呼ばれたそれらが、突っ込んでくる。

「お主らの後に本当の決戦が控えておるのだ、こんな所で負けてはおれん!!」

 一体のメカルークをフェイト・スレイヤーで叩き斬り、更に二体目にデモンズ・スローターの粒子加速砲モードを叩き込む。

 三体目を推力を最大にした体当たりで突破する。

「くっ…突破し切れん…!!」

 直後、メカルークが一斉に口から時空震砲を放つ。

 咄嗟にフェイト・スレイヤーの発生させる防護フィールドの出力を最大にして防ぐが、アークトゥルースは大きく吹き飛ばされる。

「口ほどにもないなぁ、シリウスよ!!」

 そして、そこにジャガーノートの砲撃が叩き込まれる。

「ぐおっ…!!」

 更に、メカルークが、爪から衝撃波を一斉に放つ。

「何の!!」

 アークトゥルースが、衝撃波を光子爆雷で迎撃する。空間が、白に染まる。

 直後、その光をぶち抜いて、ジャガーノートの砲撃がアークトゥルースを襲う。

 アークトゥルースは砲撃をフェイト・スレイヤーで叩き落す。直後、ジャガーノート艦橋部の巨大な機動兵器の上半身が動く。

 光が巨大機動兵器の右手に集まり、それが剣の形状を形成する。

「如何に足掻こうが無駄な事だ!!我々の力は今や究極生命に比肩する!!神と人の差…その身に刻み込んでくれる!!」

 ラーゼルとデストヴァールの声が奇麗にシンクロし、ジャガーノートは光の剣を振り下ろす。

「例えお主らが神となろうとも…わしはお主らには負けぬ!!フェイト・スレイヤー最大出力!!スターライト・セイヴァー!!」

 凄まじい閃光を放つフェイト・スレイヤーの刃が、ジャガーノートが振り下ろした光の刃と正面から衝突する。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!!」

 そして、エネルギー衝突による凄まじい爆発が、アークトゥルースを吹き飛ばす。

「これを止めるとは、流石に想定外だったな…だが、それで限界なのだろう?」

 砲撃、そしてメカルークの時空震砲の雨が、アークトゥルースを飲み込む。

「ぐああああああああああああああああああーっ!!」

「これで最後だ!死ね!シリウス!!」

 再びジャガーノートの上半身の右腕に光が宿り、剣の形状を形成する。

「負けは…せぬ!!」

 アークトゥルースが再び剣を構えた…その直後、だった。

「全主砲、斉射!!アークトゥルースを援護せよ!!」

 その声と共に、大量の砲撃が、ジャガーノートを揺るがす。

「…む…!?」

 そこにいたのは、銀の槍の名を関した巨大戦艦…ズィルヴァンシュピスだった。

 その周囲には、ジオカイザー、ルーク、ジェネラル、フレアドイリーガル、そして帝都地下から発見された黄金の機体もいる。

「シリウス!無事か!!」

 藤木から通信が入る。

「お主ら…なぜ此処に…!」

「敵の動きから敵が何処に進むのを防ごうとしているかを推測、航路を設定しました。

 そして、途中で異形が倒されているのを確認し、それを辿ってここに辿り着いたのですよ」

 アークトゥルースと、ズィルヴァンシュピスが合流する。

「…そういう事だ、運が良かったな、シリウス」

 レディオスの通信に、シリウスが苦笑する。

「さて、運が良いのか悪いのか…インフィナイトは生きておる。エルグリオとグランディオスもここにおる筈ぞ」

 その言葉に、イセリナが頷く。

「…だろうね、そんな事だろうと思ってたよ」

 そして、その会話を遮るように、デストヴァールの声が響く。

「ほう…ルークに、そして、あの時余の野望を包丁一本で阻んだ男まで現れるとはな…いつぞやの借り、今度こそしっかりと返させてもらおう!!」

「デストヴァール…お前か…」

 ルークが、ジャガーノートを睨む。

「借りを返させてもらう、はこちらの台詞だ…今度こそ、お前を、先祖と同じ場所に送ってやろう!!」

 ルークが、武器を構える。

「生憎、無能共と一緒の場所に行く気はないのだよ…そう、同じ過ちは繰り返さぬ。

 全てが終わりし後、インフィナイトの下でこの宇宙群を統べる支配者となるのは、他ならぬ余だ!!」

「我らを倒す事ができればその願いは叶うだろう…倒せれば、だがな」

 ルークが、大きく吼える。

「アルフレッド、藤木、レディオス、そしてシリウス…成る程。あの忌々しき小娘が居らぬのが心残りだが、貴様らはここで纏めて不幸になってもらう…!!」

 ラーゼルの声に、藤木が叫ぶ。

「社長…いや、ラーゼル…まさかあんたもいるとはな…そんな化け物になってまで、あんたは…何を望むんだ!!」

「武力!権力!財力!そう…私は全てを望む!!

 この姿となっては財力は望めぬが、そもそも、資本など、圧倒的武力があるならばその前には何の意味も成さぬ!!」

「元々は、会社の存続の…発展の、俺達の生活を守る為に、なりふり構わず全力を尽くすあんたを俺は尊敬してた…!

 だが…その理由がそれ…本当に自分だけの為だったってんなら…!!」

 ジェネラルが、剣と榴弾砲を構える。

「今度こそ、塵も残さず撃ち砕いてやる…この…ラーゼル重工の面汚しが!!」

「それはこちらの台詞…不幸のどん底で死ぬが良い!会社を乗っ取った裏切り者よ!!」

「レディオス、一気に仕掛けるぞ!俺に続け!!」

 ジェネラルが、ジャガーノートに猛進する。

「ああ…フレアドイリーガルに枷をはめた借り…ここで全て清算する!!」

 フレアドイリーガルが、それに続く。

「小賢しい!!」

 ジャガーノートが再び砲撃を開始する。

「わしも行くぞ…こんな所で立ち止まってはおれん…!!」

「ちょっと待って、シリウス」

 イセリナが、前進しようとするシリウスを止める。

「どうした、イセリナよ」

「その損傷…この先、きっとシリウスには別な戦いも控えてるんでしょ?一旦ズィルヴァンシュピスに着艦して機体を修理した方がいいよ」

 もっともな提案だった。確かに、このまま修理無しでエルグリオに挑んでも、勝算は無いと考えた方がいいだろう。

「止むを得ぬ、か…すぐ戻る、それまでは頼んだぞ!!」

 アークトゥルースがズィルヴァンシュピスの格納庫に突っ込む。

「何だかそのままズィルヴァンシュピスをぶち抜きそうな勢いだったね…」

 イセリナが苦笑する。

「まぁ、仕方がないさ…これは、いわゆる決戦って奴だ…それくらい勢いがなけりゃ押し切れませんぜ」

「…だね。私達も気合入れていくよ!」

 イセリナの言葉に、ファラオ店長がニヤリと笑う。

「あいよ…リーダー、俺がバックアップに回るから、前衛の指揮を頼みますぜ」

「うん…片方はアルフレッドの嫁さんと息子夫婦の仇、もう片方はルークを苦しめ、お姉ちゃんを酷い目に合わせた奴…ここで、確実に仕留めるよ」

 ジオカイザーが、斧を構える。

「アルフレッド!出し惜しみ無しで砲撃!それと、敵が艦首砲を使う事を想定し、こちらも艦首超次元閉鎖破砕砲をいつでも使えるようにしておいて!!」

「了解です!」

 アルフレッドの応答と同時に、ズィルヴァンシュピスの砲撃が一層激しくなる。

 サイズ差を考えれば象と蟻以上の差があるにも拘らず、ズィルヴァンシュピスはジャガーノートと互角の砲撃戦を展開していた。

「ファラオ店長…バックアップ、頼んだよ…行ってくる!!」

 ジオカイザーが、砲撃の雨の中へと飛び込んでいく。

「…さて」

 金色の、皇帝専用機が、非常に長い銃身のライフルを構える。

 皇帝専用機の専用武器は設計図しか存在しておらず、今はこの狙撃用のライフルを代わりに装備しているのだ。

「…行くぜ…!!」

 ファラオ店長は、そう言ってライフルを一体のメカルークの頭部目掛けて放つ。

 それはメカルークの頭部を的確に捉えるが、装甲で止められる。

「流石に硬いな…先日のようには行かないか…まぁ良い、これだけの面子が、しかもお前らに恨みのある面子が揃ったんだ…。

 …勝てると思うなよ…ラーゼル、デストヴァール…!!」

 そう言って、ファラオ店長はニヤリと笑う。その言葉を裏打ちするかのように、戦いは激化していた…。


 その頃、エルヴズユンデは複数の宇宙、世界に降りた異形を殲滅し、次の場所へと、航路上の異形を殲滅しながら凄まじい速度で移動を続けていた。

 …普段航行する際には出さない速度だ。

「流石に…このペースで異形を倒し続けるのは久しぶりですね…!!」

 そう、秒単位で異形を沈め、すぐに次の目的地へと移動する。

 異形との戦いに巻き込まれて傷を負った者がいれば、自らの体の一部を分け与え、その傷を癒す。それを、世界、宇宙規模で続けていたのだ。

「しかし…これだけ倒しても異形の数の底が見えない…やはり、目的は私の足止め…なのでしょうね」

 しかし、だからといって目の前で傷つく相手を見殺しにする事は断じて許されない。今ギルティアに出来る事は、一刻も早く異形を全滅させる事だけなのだ。

 直後、エルヴズユンデに通信が入る。この激しいジャミングの中で通信できるという事は対象は相当近くにいるらしい。

「こちら紅竜、ガザード!エルヴズユンデの姫様、応答願う!!」

「こちらギルティア!」

 ギルティアが、通信に応じる。その直後、異形の群れを突き破って紅竜が姿を現し、移動中のエルヴズユンデに並ぶ。

「大変な事になってるな…!」

「ええ…ですからこうして被害を食い止めているのです」

「…大元を叩かなけりゃならねえ事が分かっているのに、か…」

 その言葉に、ギルティアは頷く。

「…目の前で傷つく人々を見捨てては、私がその使命を果たす意味がありません」

「姫様…」

 ガザードが、言葉を続ける。

「…なら、その仕事、俺達紅蓮の旅団が引き受けよう…姫様は、大元を叩いてくれ!!」

「え…!?」

「宇宙群各地の旅人や、元旅人もこの状況に一斉に立ち上がりつつある…この程度の雑魚相手に、姫様の手をこれ以上煩わせる訳にもいかん」

 そして、ガザードは別に通信を入れる。

「アイギス、出られるな?」

「戦闘準備は既に終了済み、出撃する…!」

 ガザードの言葉に、紅竜後方の格納庫から、普段どおり外部アーマーを装備した黒い機体が出撃する。

「ウチからはこいつを決戦戦力として提供する!俺達は残りの面子で世界、宇宙に降下した異形を全力で抑える!!」

 その言葉に、ギルティアは一瞬考え、頷く。

「…分かりました」

 そして、ギルティアは言葉を続ける。

「しかし、これだけは言わせてください。皆さん、どうか無事で…私の守るべき対象には、皆さんも含まれているのです…!!」

「おう!任せろ!大体、この程度の雑魚に、俺達紅蓮の旅団が負ける訳がない…姫様の方こそ、きっちり蹴りを付けてきな!!」

 その言葉に、ギルティアは無言で頷く。

「…行きましょう、アイギス!!」

 エルヴズユンデが、転進、一気に加速する。

「了解…!」

 アイギスが、それに続く。

「…皆…ありがとう…私は…今こうして決戦に向かえる事を誇りに思いますよ…」

 ギルティアは、静かに呟き、そのままエネルギーの集束している地点の座標に存在する世界を確認する。

 座標から判断するに、それはかつてインフィナイトがいたと言う小さな世界だった。

 かつてのインフィナイトとガルデンベルグとの戦いの際に荒廃して無人になり、人が住めるような環境でもなくなった為、既に世界としても認識されていない場所だ。

 隠れるというのならば、この上なく都合の良い場所であろう。

 そして同時に、インフィナイトにとってはきっと、そこが忘れられない思い出の場所なのだろうと、ギルティアは思う。

「インフィナイト…あなたが過去に誰かが流した涙の清算を求めるというのなら、私がこの手で…この身全てを賭してそれを清算しましょう…私は、今生きている皆の笑顔を守ります…!!」

 …と、その直後、エルヴズユンデの背後に軽い衝撃が走る。

「…?」

「そちらの機体の速度が、こちらの最大巡航速度を超えた…申し訳ないが、牽引を要請する」

 アイギスからの通信に、ギルティアは笑う。

「…分かりました」

 そう、エルヴズユンデの速度にアイギスが追い付けなくなっていたのだ。ギルティアは、自らの力の大きさに頷く。

「だからこそ、私は…いえ、私が皆を守らねばならないのです」

 ギルティアの言葉に応えるように、エルヴズユンデは決戦の地に向け更に加速していった。

 そして、残った紅竜は別方向に加速を開始する。

「さぁ、野郎共!ここが正念場だァ!!我らが姫様が必死に守ろうとしたこの宇宙群、必ず守ってみせようぜ!!」

 その言葉に、艦内から歓声が上がり、同時に格納庫から大量の機動兵器が発進し、各地の世界、宇宙へと向かっていった…。


 一方、ジャガーノートの更に後方では、グランディオスとエルグリオが待機していた。

「…流石にアレには手間取っているらしいな」

「まぁ、俺達でもアレの相手はちょっと厳しいだろうからな…」

 エルグリオが、だが、と続ける。

「あんな悪党相手に、あいつらが…そして、シリウスがやられるとは思えねえ」

「ああ、まず間違いなく来るだろうな」

 グランディオスが、戦闘が行われている方を睨みながら、言葉を続ける。

「…エルグリオ、頼みがある」

「ん?」

「私に、お前の剣の破片をくれないか?」

 その言葉に、エルグリオが首を傾げる。

「それは、どういう意味だ?」

「お前があの男の相手をするという事は、こちらはギルティア=ループリングを相手にせねばならない、という事だ。

 …出来る事ならば、彼女と真正面から斬り結べるレベルの剣が欲しい」

 その言葉に、エルグリオが納得する。

「そういえば、お前は異形の力を完全に使いこなしていたな…成る程、破片があれば俺の剣も再現できるって事か…」

 そして、エルグリオは笑顔で頷く。

「良いぜ、お前が本気で戦おうとしてるってのは分かってる…俺も、それに協力は惜しまないさ」

 エルグリオはそう言って笑うと、自分の剣を割り、その破片をグランディオスに渡した。エルグリオの体の一部でもある剣は、既に再生を始めている。

「…感謝する」

「へっ…良いって事よ」

「さて、では私は本来の待機場所に戻ろうか…全ては、それぞれの願いを叶える為に」

 その言葉に、エルグリオは頷く。

「ああ…それぞれの願いを叶える為に…必ず、勝とうぜ」

 その言葉に、グランディオスは静かに笑った。

「フフ…お前らしいな…ならば、この戦いの後、また会おう」

「…ああ…また後でな!」

 そして、グランディオスが後退しながら、静かに言葉を紡ぐ。

「…すまんな、エルグリオ」

「へっ…いいって事よ」

 グランディオスが発した言葉に対してのエルグリオの言葉に、グランディオスは少し驚いた表情をし、微かに笑う。

「…そうか、お前は気付いていたのか」

「何処までとは言わないが、何をやろうとしているかはおおよそ分かってるつもりだ…止めねえよ。ただ、頑張れとだけ言っておくぜ」

「ああ、フ…お前の言う通り、全力で頑張らせてもらうさ…さらばだ、エルグリオよ」

 グランディオスはそう言うと、更に速度を上げ、飛び去っていった。その姿を見ながら、エルグリオは静かに呟く。

「あいつも不器用だよなぁ…もっと賢く立ち回れねェのか…ま、俺が言えた事じゃないか…はははっ…!」

 そして、グランディオスが見えなくなったのを確認すると、エルグリオは、未だ激戦が続く戦場を睨んだ…。


続く


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