Act.87 炎獄の騎士に安らかな眠りを
それは遠い昔の記憶。
二つに分かれる前のギルティアの故郷の宇宙群で、俺は生まれた。
人間兵器として赤ん坊の時代から育てられたが故に本名は無し、呼ばれ方は兵士百六十三号。
その激しい戦いぶりから、『鬼神騎士』と呼ばれた。
血みどろの戦いの末、戦争は終結した。
しかし、一つの戦争が終われば、また次の戦争が始まる。
戦い、終戦、宣戦布告、戦い、終戦、宣戦布告…世界の一部が平和でも、世界のどこかで必ず続く終わりの無い無限ループだ。
こと、当時の俺の故郷では、それは顕著だった。
…もう、終わらない殺し合いは懲り懲りだ。
それ以外の、血を流さずに戦いを終わらせる本当に『正しい方法』は、必ずあるはずだ。
きっと、この選択は正しい。俺は、そう信じて、同志を募り反戦運動を行った。
かなり多くの同志が集い、それは大きな動きとなった。
しかし、扇動され、暴徒と化した民衆に、俺の同志達は次々に殺され、最後に残った、首謀者である俺も、最後にはぼろきれのようにされ、あとは死を待つだけとなった。
俺はこんな所で死ねない…俺は、生きたい…!!
俺は、そう願った。そう、願ってしまった。
気がつくと、俺は、暴徒達を全員、喰い殺していた。
異形の空間は願いを叶える空間だ。俺は、異形になっていたんだ。
異形になった筈なのに、不思議と理性は残っていた。
…他者の為に、そして全ての人々の為に平和を望んで、そして、それを行動で示した、罪の無い同志達は死んだ。
国の言葉を盲信し、俺の同志達を虐殺した連中も俺が殺した。
…最後に残ったのは、俺一人だ。
一体、何故こうなった。仲間は最後の最後まで俺を裏切らなかった。
なら、何故俺だけここに生きている。
…俺は、あいつらを裏切ってしまったのか。
…人が『正しい』と言う行いに近ければ近いほど、不幸になる。
それなら、その逆はどうか。
今、全てを喰らった俺は、ここに生きている。
生きている事こそが、正しさの証だ。
それは、生命体共通の本能、生命体共通の願いなのだから。
他者を殺しても自分は死にたくない、そんな理不尽な願いを抱いて、人は生きる。
幸せを、時として命をも他者から奪い、人は自らの幸せを求める。
ならば、俺は自分の命を以って、可能な限り多くの幸せを、命を奪おう。
そして、可能な限り生き抜こう。
…見ろよ人間、思い知れよ人間!これがお前らが示した正しい生き方だ!!
―溢れ出る光の中、ギルティアは、そんな声を聞いた気がした…。
Act.87 炎獄の騎士に安らかな眠りを
光の彼方にあったのは、沢山の骸が転がる荒野だった。かつて戦場だった場所のようにも見える。
「ここが…終着点ですか…しかし、今のは…!?」
ギルティアは、先程聞こえた声は何だったのか、一瞬考える。
少なくとも、声はオーガティスのものだったように思える。
しかし、ここは敵前だという事を思い出し、意識を再び眼前に戻す。
「やれやれ…まさかここまで来ちまうとは…流石は救世主を気取るだけの事はあるねぇ…」
骸が積みあがった、まるで祭壇のような場所に炎が集まり、形を成す。
それは、青い炎、ケンタウロス状の四足を持った、オーガティスだった。
どうやら、そのオーガティスそのものが、この巨大なオーガティスの核らしい。
「…オーガティス…先程の声は、あなたなのですか?」
「ん?何だい?」
「あなたの本当の願いが、自らの故郷の争いを終わらせる事だったというのは、本当なのですか?」
ギルティアの問いに、オーガティスは一瞬驚くと、ため息をついた。
「何故それを…ああ、そうだよ…昔の話だけどな」
本人は言った覚えは無いらしい。
ならば、それは異形空間に刻まれた、オーガティスの強い想いだったのだろうか。
「何故それを知ったのかは知らないが…何処まで知った?」
「あなたが何故異形になったのか、そして、あなたが何故、本来なら到底正しいと言えない事を、正しいと言い放てるのか、その理由が分かりました」
「何だ、殆ど全部じゃないか…なら、聞きたい…お前はあの時の俺が間違っていたと思うかい?」
その言葉に、ギルティアは首を横に振った。
「あなたの願いは、ごくごく当たり前の、そして、至極正当ものです」
そして、ギルティアは続ける。
「…その場に私がいたら、あなたとあなたの同志を見捨てたと思いますか?
そして、もしその結末を辿っていれば、あなたは今ここにいますか?」
確かに、もしギルティアがその場にいたならば、決して見捨てなかっただろう。
たとえ自らの命と引き換えにしてでも必ずや救出していた、そうやって、きっと自分達の行動に報いてくれた、オーガティスは、そう思った。
「…現実にお前は来なかったし、誰も俺達を救う奴はいなかったよ…推測に意味なんてない…それが、現実だ」
「ええ、私にとっても辛い事実ですが、誰もあなたを、そしてあなたの仲間を救えなかった。
…だから、私には、生きる事を望んだ、その時のあなたの選択を責める事は出来ません。
もしもあなたの選択を責めるというのならば、それは、罪の無い人間に、正しい事の為に死ねと命じている事と等しいのですから」
しかし、と、ギルティアは続ける。
「…あなたが、他者の幸せを、そして、命を奪い続けると言うのならば、私は、あなたを許す訳にはいきません」
その言葉を、オーガティスは笑う。
「ケケケッ…不幸になると…その先に何の光も無いと知っていて、お前はそれでも、皆を守ろうとするか…まったく、お前は何処までも正義の味方だよ」
「正しい者が必ずしも勝つわけでも、正しい者が最後には幸せになるわけでもありません。
しかし、正しい者が勝つ事は、その後ろにいる人々にとって一番幸せな事です。そして…私は、使命を、そしてここまでの歩みを、後悔してはいませんよ」
その言葉に、オーガティスは苦笑した。
「成る程ね…それが、お前の正義か…」
そして、オーガティスは真顔に戻って、続ける。
「けどな…俺だって、今までの歩みを後悔していないし、するつもりも無い。
あそこで生き残ってしまった以上、俺は最後までそのやりかたを貫くさ…貫くしか無い」
だが、と、オーガティスは続ける。
「…この状況じゃ、幾ら俺でも、逃げる事も隠れる事も、何か策を準備する余裕も無いよなぁ…。
面倒な事になっちまったもんだ…だから、今は…」
オーガティスが槍を構える。
「今だけは、正面から戦わせて貰うさ…俺は、お前を殺して生き延びる…!!
俺を間違ってると言うのならば…俺を倒して見せろ!目の前の悪を、討ち払って見せろ!!
だがな…俺は負けない…俺は今まで生きてきた…生き延びてきた!それは、俺の歩みが正しかったからだと信じる…!!」
オーガティスの口調が、少しだけ変わっている。その言葉に、ギルティアは頷く。
「オーガティス…ならば私も真正面から、全力でお相手します…本当の正義を…そして、正義が最後には勝利する事を示すために!!」
ギルティアが信じた正義は、戦う事によって成し遂げられるもの、かつてのオーガティスの信じた、武力によらない正義とは違う。
例え今ここでオーガティスを倒したとしても、かつての彼の正義が正しかった事の証明にはならない。
しかし、それでも、今、ここで真正面からオーガティスを叩き伏せれば、本当に『正しい』ものは別にある…その可能性を示してやる事が出来る。
確かにオーガティスやヴェルゼンのした事は、理由はどうあれ決して許される事ではない。
それでも、だからこそ、これ以上罪を重ねさせたくはなかった。ギルティアは、覚悟を込めて言葉を紡いだ。
「オーバーアクセス…アクセス率百五十パーセント…!!」
エルヴズユンデの各部が展開する。
「…アクセス『レベル2』…発動!!」
そして、それらから凄まじい紅のエネルギーが放出される。
「ああ、それで良い…今回は、お互い面倒は無しだ。オーガティックナイト…狂騎のオーガティス…いざ!!」
オーガティスが、前足を上げて咆える。周囲の宇宙から炎が、エネルギーがどんどん集まっているのが確認できる。
「…勝負です!狂騎のオーガティス!!ギルティア=ループリング…参ります!!」
エルヴズユンデが、剣を構え、一気に踏み込む。
「何の!」
オーガティスが、剣の一振りを、槍で受け流す。そして、すれ違い様に槍の柄でエルヴズユンデを殴る。
「…ぐっ…!」
オーガティスは、間髪いれずに反転し、全身の棘が逆立つ。
「爆ぜよ!ブレイジングニードル!!!」
炎を纏った棘が、エルヴズユンデに襲い掛かる。
「プリズナーブラスター…バァァァァァァァストッ!!!」
棘とブラスターが食い合って爆発を起こす。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!」
オーガティスの左腕の盾が砕け、そこに炎が集まり、炎の剣を形成する。そして、一気に距離を詰めて、斬りかかる。
エルヴズユンデは、一振り目を回避し、二振り目を左腕のクローから放たれた光の刃で受け流す。
「隙あり!!」
オーガティスが、右腕の槍を突き出す。
「何の!」
エルヴズユンデは、剣を盾にしてそれを防ぐ。
「ディストレス・ストォォォムッ!!!」
エルヴズユンデの羽ばたきが衝撃波を発生させ、オーガティスが一瞬怯む。
「今です!クライングフェザー…ブレェェェェェェェェェェイクッ!!!」
その衝撃波に乗って距離を離したエルヴズユンデが、紅の矢でオーガティスに攻撃をかける。
「貫け!オーガティックランサーッ!!!」
オーガティスの槍が纏った青い炎が、まるで炎の竜巻のように解き放たれる。
その炎は、紅の矢を飲み込み、そのままエルヴズユンデを飲み込む。
「…うっ…ぐぅ…この程度…!!」
エルヴズユンデが、その身を焼かれながらも強引に姿勢を整える。
「アトネメントプライ…ファイアーッ!!!」
炎をかき消し、黒い光が、オーガティスの槍ごと右腕を撃ち抜く。
「ぐっ…!」
「今です!」
エルヴズユンデが一気に踏み込む。
「何の、そうはさせない!!」
オーガティスの左腕の剣に更に強いエネルギーが集まる。
「はああああああああああああああっ!!」
剣と剣が衝突する。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
オーガティスが、強引に剣を押し切る。
「っ…!!」
更に、幾度も幾度も剣を叩き込む。
「これが…オーガティスの、本当の力…!!」
オーガティスの右腕が、槍ごと再生する。
「しかし…!!」
エルヴズユンデが再び左腕の爪からの閃光を刃にする。
「まだまだ!」
炎の剣と閃光の刃が切り結ぶ。
「ケケケッ…しかし、まさか『この場所』が再現されちまうとはな…!
かつての俺の願いが潰えた場所…死体の位置まであの時と同じじゃねえか…!
皮肉なもんだなぁ…俺自身がこの場所に帰る事を望んだってか…!」
オーガティスは、思う。今自分が立っている場所は、かつて、自分と同胞達がいた場所を再現したもの以外の何物でもない。
何故この場所なのか。それは、自分がこの場所に帰る事を願ったからに他ならない。
ならば…オーガティス自身、逃げられないこの時を待っていたのかもしれない。
自らと同胞の正義を否定した正義を誰かが否定してくれるこの時を、ずっと待っていたのかもしれない。
今、オーガティスの力は、当時オーガティスを否定した者達よりも遥かに上だ。
それでも、ギルティアは真正面からそれを否定している。自分なんかと、向き合ってくれている。
オーガティスは、心の何処かで、嬉しいと感じていた。
そして、だからこそ、全力で、そう、力の出し惜しみは無しで戦わねばならないと感じた。そう、自分が、『生き延びる』ために。
「まだまだ、俺は余力を残してるんだぜ…さぁ、全力で来なよ…救世主!!」
オーガティスが、一歩距離を離す。そして、周囲に、更に強大なエネルギーが集まり始めた…。
一方、外でオーガティスを倒しながら惑星移送の護衛をしていたエルグリオとシリウスは、放出されたオーガティスの殆どを既に撃破していた。
いや、オーガティスが出てこなくなり、残っていたオーガティスを全滅させた、と言うのが正解かもしれない。
「…ぜぇ…ぜぇ…これで、打ち止めか…?」
シリウスが、息も絶え絶えに呟く。
「はぁ…はぁ…さぁ、な…だが、何が起こってる…?」
オーガティスも、息が上がっている。二人が見ると、巨大なオーガティスの動きが止まっている。
しかも、所々が、崩れ始めている。しかし、ギルティアがオーガティスを倒した様子は無い。
何が起こっているのか、二人にも分からなかった。
「お嬢ちゃん…死ぬなよ…!!」
シリウスは、そう呟いた…。
更に、内部で戦っていたグランディオスとヴェルゼンの方も、その異変に気付く。
「再生用のエネルギー供給が、止まった…!?」
ヴェルゼンが、冷や汗をかく。
「…フ、どうやら、向こうはそれだけ切羽詰った状況らしいな」
「くっ…!!」
ヴェルゼンが、転進してオーガティスの方へと向かおうとする。しかし、背後に大量の熱線と火球が直撃する。
「ぐはっ…!?」
グランディオスの攻撃だった。
「お前の相手は私だと言った筈だ!そんな最短の直線距離で移動して、私が狙い撃てないとでも思ったのか?」
「く…っ!!」
「さぁ、続けようか…!!」
グランディオスは、そう言って笑った…。
凄まじいエネルギーを纏ったオーガティスが、突っ込んでくる。
「はああああああああああああああああああーっ!!!」
「何の!」
槍の一撃と、剣の一閃が交差する。エルヴズユンデの脇腹に、深い傷がつく。オーガティスの左腕が落ちる。
「真正面から戦った方が強いではないですか…!!」
左腕の痛みが強くなっている。しかし、ここで歩みを止めるよりも、一刻も早くこの戦いを終わらせる事の方が優先されるだろう。
「…ケケッ…そうかい?けど、真正面からじゃ今まで生き延びてはこれなかったろうさ…!!」
そして、オーガティスが再び槍を構える。
「…そろそろ、決着をつけようぜ!オーガティックランサー…オーバーフレイム!!」
オーガティスの槍から、再び凄まじい炎の嵐が解き放たれる。先程の一撃よりも遥かに強大だ。炎が、エルヴズユンデを飲み込む。
「…ぐうう…っ!!」
「ケケケッ…願わくばこの炎が、この最低な世界の連なりに溢れる、数多の偽りの正義を…影も形も残さず焼き尽くさん事を…!!」
その、炎やプラズマの領域を超えた熱量に、機体各部が溶け出す。
これではアトネメントプライは使えない。むしろ、アトネメントプライの発射は、核への致命傷になるだろう。
「私は負けない…私の使命を果たす為に…そして、今は何より…オーガティスを救う為に!!」
紅の翼の光が強くなる。エルヴズユンデが、剣を構える。
「エルヴズユンデよ!祝福されし世界よ!そして遠き我が故郷、過ちの鎖輪の世界よ!!我が正義を彼の者に示す為の力を…!!!」
エルヴズユンデが、炎の中を力強く羽ばたく。
「勝負です!オーガティス!!」
更に、左腕の爪から放たれるレーザーを刃の姿にし、閃光の刃と重ねる。剣の光が、更に強く、そして、刀身が更に長くなる。
「俺は…生きて生きて生き延びる!!オーガティックランサー…フィニィィィィィィィィィィィッシュ!!!!!」
オーガティスが、更に強大な炎を槍に集積し、突進する。
「願わくば…汝に安らかな眠りを!!コンヴィクション・クロォォォォォォォォォォォォォズッ!!!!!」
エルヴズユンデの剣の渾身の一振りが、その槍と衝突する。
一瞬の静寂。
「ケケッ…やれやれ、負けちまった、か…」
オーガティスが呟く。エルヴズユンデの一撃は、オーガティスを、その構えた槍ごと両断していた。
「オーガティス…かつてのあなたを否定した偽りの正義は、この私が倒しましたよ」
「…ケケッ…お前のような馬鹿正直な奴は好きじゃないんだがなぁ…思い出しちまったよ…馬鹿正直だった、昔の俺を」
解き放たれたエネルギーが、閃光が、オーガティスを消し飛ばしていく。
「思い出しちまったよ…最期の瞬間まで諦めないと息巻いてた、あの頃の俺を…」
「…オーガティス、私には、あなたを救ってあげる事は出来ませんでした…。
しかし…少なくとも、かつてのあなたは…確かに正しい道を歩んでいた。
…私は、かつてあなたが命を賭けて信じた正義を、正義であると認めます」
「ケケ…本当…馬鹿だな…お前は…何も出来ずにくたばった、ただの馬鹿が信じた正義を…信じるってか…?」
その言葉に、ギルティアは頷いた。
「ええ…誰が、そして、例え今のあなた自身が否定したとしても、私は、かつてのあなたが正しかったと信じます」
その言葉を聞いて、オーガティスは笑った。
既に声を発するほども破片は残っていないながら、オーガティスは、静かに願った。
『…出来る事なら、お前には幸せになって欲しいもんだなぁ…ギルティア…。
まぁ…お前が、俺がそう思ったお前である限り、まず不可能だろうがな…。
全く…どこまでも救えない馬鹿だよ、お前は…ケケ…ケ…ケ……。』
オーガティスが消滅し、周囲が崩壊を始める。
「…オーガティス…願わくば、汝の罪が祓われん事を」
オーガティスがエネルギーを自分に集積したおかげで、宇宙の規模は一気に小さくなっている。
「この規模ならば、今の私ならば、このまま崩壊させて被害を抑えるよりも、破壊する事で被害を抑える事が出来るはず…!!」
ギルティアが、通信回線を開いた…。
一方、ヴェルゼンが、オーガティスが倒された事に気付く。
「…オーガティス…!?」
「隙だらけだぞ…そこだ!!グラウンド・ブレイクトゥースッ!!!」
全身から火球を放ちながら、グランディオスが爆炎を纏う槍を、ヴェルゼンへと叩き込む。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああーっ!!!」
ヴェルゼンは、胸部を貫かれ、そのまま爆風へと飲み込まれる。
「ぼ…僕は死なない!この借りは…いつか数億倍にして返してやる…っ!?」
ヴェルゼンは爆風から飛び出し、高速で後退しようとするが、オーガティスの崩壊に巻き込まれる。
「く…おのれ…おのれおのれおのれぇぇぇぇぇぇぇ!!!
ただで死ねると思うなよ、裏切り者グランディオス!!必ず、殺してやるからな!滅亡の魔女ギルティア=ループリングめぇぇぇぇぇぇぇ…!!」
ヴェルゼンは、そのままオーガティスの崩壊に飲みこまれていった…。
「返せるものならば返してみるが良い…私は逃げも隠れもしない…待っているぞ」
グランディオスがそう呟くと同時に、ギルティアから通信が入る。
「グランディオス!この宇宙の残滓を一斉攻撃で破壊します…協力して頂けますね?」
「了解した…すぐに始められるか?」
「ええ、次はシリウスとエルグリオですね…」
ギルティアが、更にシリウスとエルグリオに通信を入れる。
「…何だ?ようやく戦いが終わったんじゃないか?今からシリウスと蹴りをつけようと思ってたんだが…」
エルグリオの返答に、ギルティアは思わず苦笑する。
「…この非常時に何やろうとしてるんですか!!」
「いや何、途中からオーガティスの増援が全く無くなってな…惑星は安全圏まで離脱したぞ」
シリウスの言葉に、ギルティアは、先程のオーガティスの戦闘能力に納得する。オーガティスの生産までも止めて戦っていたのか。
「成る程…それで、決着をつけようとしていた、と…残念ですが、まだやる事が残っていますよ。
この宇宙の残滓を、一斉攻撃で破壊します!二人の力を貸してください!!」
ギルティアの言葉に、二人が頷く。
「成る程な…承知!」
「蹴りを付けたい所だったが、そういう事なら仕方ねえ…後始末はしっかりと、ってな!」
核部分から、エルヴズユンデが脱出してくる。
既に、グランディオスはオーガティックフォームを解除し、シリウス、エルグリオと合流して待機していた。
「…皆、準備はいいですね!?」
エルヴズユンデが、剣を構える。まだ、損傷が完全に回復している訳ではない。そして、左腕からは既に血が流れ出している。
しかし、今は自身のダメージより優先して、やるべき事がある。ギルティアが、言葉を紡ぐ。
「…行きましょう、皆!!」
エルヴズユンデが、アトネメントプライで口火を切る。
「うむ!」
アークトゥルースが、光子爆雷を放ち、オーガティスの残滓を爆散させていく。
「はあああああああああああああああああっ!!」
エルグリオが、衝撃波の嵐で、オーガティスの残滓を砕いていく。
「強度の最も低い場所を確認…ファイア!!」
グランディオスが、全身から一斉射撃しながら、的確に残滓を解体していく。残滓は残り半分程度だ。
「あと一頑張りです!クライングフェザー…ブレェェェェェェェェェイクッ!!!」
エルヴズユンデの翼が、紅の光の矢となり、どんどん残滓を削り取る。
「デモンズ・スローター…オーバーレイ!発射!!」
アークトゥルースの構えたデモンズ・スローターから放たれた重力塊が、周囲の残滓を根こそぎ食らい尽くして飛んでいく。
「タイラント・ランサー…ブレェェェェェイクッ!!!」
雷のような閃光の槍が、大量に解き放たれ、残滓を穿つ。
「宇宙崩壊の衝撃が来ます!あとは私に任せて下さい!!」
ギルティアの言葉で、全員がエルヴズユンデの後ろに下がる。
「オーガティス…きっと、私自身の結末も、決して幸せなものではないでしょう…しかし、それでも私はその瞬間まで歩み続けます」
エルヴズユンデが、剣を構える。
「…最後の瞬間まで、その歩みを後悔したりはしません!!」
宇宙が、その残エネルギーを一気に爆発させる。
「だから…おやすみなさい」
エルヴズユンデの紅い翼が、紅の鎖となり、その爆発を抑え込む。そして、爆発が収まる。
百五十パーセントのアクセスを解除したエルヴズユンデが、グランディオスとエルグリオ、アークトゥルースの方に向き直る。
「…これで、まず懸念材料が一つ消えました。あとは…あなた方、ですね。
グランディオス、それにエルグリオ、あなた方はこれからどうするつもりなのです?
…返答によっては、ここで決着をつけます」
「私達はこの宇宙群に存在する、インフィナイト様の、及びこの私が集めたデータ、そしてそれらのバックアップを回収してからこの宇宙群を去る予定だ。
インフィナイト様亡き今、我らは我らの目的を達する為に必要な行動を取るだけだ。だが…どうしても、と言うのならば相手になるが?」
その言葉に、ギルティアは苦笑する。
「あなた方の目的は分かりました…そういう事ならば、戦うにしても、今戦うのはお互いにとって得策ではないでしょう。
私としても、惑星の移動先の決定など、やらねばならない事は少なくありません。
…もしも、お互いのすべき事が全て終わって尚、お互いが戦わなければならなかったならば、その時に、本当の決着をつけましょう」
その言葉に、グランディオスは静かに笑い、頷く。
「…フ…了解した…」
その言葉に、エルグリオがおい、と言葉を紡ぐ。
「…待てよ、また俺達の決着をお預けにする気かよ!?」
「…決着を付けるのは、後顧の憂いが絶たれてからでも遅くはあるまい。
今は、インフィナイト様が残した物、及びデータのバックアップを回収し、ヴェルゼンやオーガティスのように悪用させないようにする事が先だ。
我々がやらねばならない事は、決して少なくは無いのだ…それらを成し遂げた上で、まだ決着をつけたければ、好きにすると良い」
その言葉に、エルグリオはため息混じりに頷く。
「分かったよ…やれやれ、また決着はお預けか…シリウス、すまんなぁ…一体何度お流れになるのやら…」
「まぁ、仕方あるまい。今度会う事があったら酒でも飲み交わしながら考えるとしようぞ」
シリウスは、そう言って笑った。
「そりゃ良いな!なら、またお前と会える幸運を祈っとくか!」
「ギルティア=ループリングよ、身内の不始末の収拾に巻き込んだ事を謝罪する…さらばだ」
グランディオスが、移動を開始する。
「それじゃ、シリウスよ、またな!!」
エルグリオが、それに続いた…。
「…さて、私達も、ズィルヴァンシュピスに合流しますか」
「うむ!」
そして、エルヴズユンデとアークトゥルースもまた、ズィルヴァンシュピスへと飛び立っていった…。
続く




