Act.78 それぞれの願いと共に
Act.78 それぞれの願いと共に
エルヴズユンデは、もう何時間移動を続けただろうか、境界空間の先に、巨大な構造物が見えてくる。
「あれは…!」
惑星、いや、恒星、いや更に大きい。
言うなれば、太陽系サイズの規模を持つ要塞だった。
その前には、何隻もの戦艦や機動兵器、異形の群れが見える。
要塞自体も、全面火器で固められている。その火力も、推して知るべし、だ。
「…これは、ルークが私をすぐにここに招かなかったわけです…」
そう、あの頃のギルティアの、まだ完全に力が戻っていない状態では、成す術も無く倒されていた事だろう。
「…良いでしょう…これで、決着です!!」
エルヴズユンデは、その要塞の勢力圏内へと、真正面から突撃していく。
一方、要塞の最奥部、インフィナイトの研究施設では、インフィナイトがその様子を、培養槽の中から、静かに睨んでいた…。
要塞から、凄まじい砲撃が開始される。
エルヴズユンデは、それをものともせずに前進する。
「…クライングフェザー…ブレェェェェェェェイクッ!!!!」
舞い散る紅の翼にブラスターが重なり、それが、紅の矢となって眼前の全てを爆砕する。
沈んだ戦艦は七隻、機動兵器は数百機、異形も同数辺りか。
少なくとも、進路上の敵は掃討できた。
…が、すぐに周囲の敵が進路上に集結する。
「…良いでしょう、ならば、殲滅して進むだけです!!
…クライング・フェザー…!」
エルヴズユンデが、プリズナーブラスターのチャージと同時に『舞う』。
翼から、凄まじい量の光が飛び散る。
「ブレェェェェェェェェェェェイクッ!!!!」
その光にブラスターが乗り、矢は、再び集結した敵を、再び消し飛ばす。
敵は、接近する事すら叶わず、成す術も無く吹き飛ばされていく。
しかし、その一瞬の隙を突いて、エルヴズユンデが囲まれる。
「甘い!プリズナーブラスター…バァァァァァストッ!!!!」
ブラスターが周囲全方位に拡散し、エルヴズユンデを囲んだ機動兵器、そして異形をぶち抜く。
直後ギルティアが、要塞の中央から発生する凄まじいエネルギー反応を察知する。
「!」
要塞の中央が開き、凄まじく巨大な砲門が姿を現す。
先日の宮殿砲程に高いエネルギー反応は無いが、収束されていない分、規模は大きい、飲み込まれれば惑星程度ならば容易に消えるだろう。
砲門に、光が集まる。
「…アトネメントプライ…!」
エルヴズユンデの胸部が開き、光が集まる。
「フィニィィィィィィィィィッシュ!!!!」
砲門から解き放たれた凄まじい閃光を、アトネメントプライの黒い光がぶち抜く。
閃光は、そのままバラバラに拡散し、周囲にいた戦艦や機動兵器、異形を巻き込んで消滅した。
砲門の中央に、アトネメントプライが直撃し、砲門が、爆発四散する。
「…機械構造物は、異形と違って被害が拡大しやすくて助かりますね」
ギルティアは、そう言ってニヤリと笑った。
砲門が爆発した巨大な穴から、内部に侵入できる。エルヴズユンデは、その穴に向けて更に前進する。
しかし、その直後、エルヴズユンデの眼前に、巨大な戦艦が三隻、見覚えのある機動兵器が二種類、五十、五十の計百機程、立ち塞がる。
戦艦は分からないが、機動兵器は、グレートラーゼルと、黒騎だ。
ラーゼルと、デストヴァールだった。
「まさか…ここまで来るとは…だが、ここが貴様の墓場となるのだ!!」
「まさか、独りで来るとは…愚かしいにも程がある!さぁ、不幸になってもらう!!」
グレートラーゼルと黒騎から一斉にその言葉が放たれ、正直、やかましい。
「…良いでしょう、纏めて片付けます!!」
プリズナーブラスター、クライングフェザー、左腕拡散レーザーを、雨あられと降らせる。
眼前の全てが、閃光に飲み込まれる。
「フハハハハハハハハハハハハハハハ!!無駄無駄ァァァァァァ!!!!」
百余名による高笑いと無駄無駄の大合唱だ。
やかましいを通り越して、ここまで来ると見事な団結力だ。流石は、皆本人だけの事はある。
そして、同時に、成る程、やはりかとギルティアは納得する。
先日の時と同じように、本体は別にいる。そして、恐らくは、要塞内部だ。
成る程、ここで防衛している限り、この敵は倒せないという事か。
…だが。
「やってみなくては、分かりません!!」
いくら本体が倒されねば何度でも再生する相手であろうと、一撃で完全に消滅させれば、再製造でもしない限り、『再生』は不可能の筈だ。
そして、その手段が、今のギルティアにはあった。
エルヴズユンデが、剣を構える。そして、黒騎とグレートラーゼルの群れに向けて突進していく。
黄金の閃光による刀身は、左腕の紅の光の刃と交わり、紅の輝きを放つ。
「コンヴィクション・クロォォォォォォォォォォズッ!!!!」
エルヴズユンデの渾身の一閃が、立ち塞がった数十機の黒騎とグレートラーゼルを、纏めて切り裂いた…いや、纏めてぶち抜いた、と表現するのが正しいか。
解き放たれた凄まじいエネルギーが、ぶち抜かれた敵を、一瞬にして消し飛ばす。
やはり、再生は無い…しかし、だった。
その直後、基地内部から、撃破した敵と同じ量の敵が姿を現す。敵の戦力は、どれだけのものなのか。
数はどうあれ、今のエルヴズユンデの敵ではない…しかし、この先の戦いの事を考えると、あまり、時間はかけられない。
ギルティアは、強行突破を試みる事にした。
進路上の敵を片っ端から斬り伏せ、要塞に開いた穴に突入しようとする。
「よし、行けます…!!」
「…そうはさせんぞ」
突如、要塞に開いた穴の向こうから、重力塊、続いての火球、ブラスター、レーザー、重力波が飛来する。
「!!」
剣と全ての装備を駆使してそれを迎撃する。
「そういう事だ、悪いが、相手させて貰うぜ…!!」
更に、上からの斬り下ろし。
エルヴズユンデがそれを剣で受け流す。
「ケーッケッケッケ!流石にこれはきついんじゃないかい?」
「生きては、返しません!!」
左右から、爪と槍の同時攻撃が来る。
「ディストレス・ストーム!!」
エルヴズユンデが、衝撃波を乗せた羽ばたきで、左右から来た敵を吹き飛ばす。
グランディオス、エルグリオ、ヴェルゼン、オーガティスだった。
「…四将…これで、勢ぞろい、という訳ですか…!」
後方から、ラーゼル、デストヴァールも迫っている。
「…上等、です…ここで、全て終わらせます!!クライング・フェザー…ブレェェェェェェェェイクッ!!!!」
紅の矢が、四将を飲み込む。
更に、背後から迫っていた軍勢に、続け様にブラスターを放つ。
一方、その遥か後方で、ズィルヴァンシュピスは紅竜と合流し、インフィナイトの本拠地へと急いでいた。
「…という事は、あなた方は私達より先に、この宇宙群の異形騒動の裏にはインフィナイトがいるって事に気付いていたんだね?」
イセリナの言葉に、ガザードが頷く。
「ああ、俺達は俺達で、交戦した異形のデータを統合、整理してたからな。データに、妙に人為的なものがあったんだ」
「確かに、それは私達も感じてたんだけど…」
「その後、それに関して調査をしていたら、四将のヴェルゼン、オーガティスと交戦、かなりの損害が出たが、何とか退けた。
それで、四将の裏に『インフィナイト』がいる事を知ったんだが…」
それに、仮面を付けたアイギス、イージスが続く。
「…その後、インフィナイトに捕まって逃げてきた私を、ガザード艦長は助けてくれた。
それで、戦うべき敵が、はっきりした、と言うわけだ」
「成る程ね…」
人員の補充により、ズィルヴァンシュピスの稼動効率も大幅に上がった。
もうすぐ、そう、インフィナイトの本拠地の勢力圏内に入るまでには、全ての機体の修理が終わっているだろう。
もっとも、どうやら、イセリナの機体の斧だけは、かなり特殊なものだったらしく、修理にはかなりの時間がかかる。
よって、今回はイセリナは艦長として指揮をする事になった。
「…とにかく、急がなきゃ…!」
遥か彼方に、構造物が見えてくる。
「あれが…インフィナイトの、本拠地…!?」
しかし、その中央に、風穴が開いている。
「…え…?」
「さすが嬢ちゃんだ…」
それを見て、ファラオ店長は一目で、それがギルティアによるものだと見破る。
「さぁ、敵の砲撃の射程圏内まで、あと三十秒、主砲、スタンバイ完了!!他全砲門、及び魚雷、爆雷発射管準備よし!!」
ファラオ店長の言葉に、イセリナが頷く。
「こちらの主砲の射程圏内に到達次第、一斉に砲撃を開始!気合い入れて行くよ、皆!!」
その言葉に、皆が応えた…。
一方、ギルティアは、四将すらも圧倒していた。
「ぐっはああああああっ!!!」
剣の一閃で、オーガティスが吹き飛ばされる。
更に、追撃でブラスターが、オーガティスを貫く。
「オーガティス!!おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ヴェルゼンが、エルヴズユンデに突っ込む。
しかし、一瞬で背後を取られる。
「甘いです!!」
「なっ…しまっ…!!」
拡散レーザーが、ヴェルゼンをぶち抜く。
「が…あ…何て…化け物…!」
ヴェルゼンが、よろよろとオーガティスを引っ張って後退する。
「チッ…だからお前らじゃ二人がかりでも無理だって言ったんだ…!!」
エルグリオが呟く。
「…やはり、私一人で十分戦えます」
しかし、ここでいたずらに力を消耗するのは得策ではない。
「多少無茶でも、強行突破する必要がありますね…」
そして、エルヴズユンデが羽ばたく。
「クライング・フェザー!!ディストレス・ストーム!!フル・バァァァァァァァァァァストッ!!!!」
周囲に衝撃波と光の矢が、文字通り嵐のように降り注ぐ。
「ぐっ!」
咄嗟にグランディオスが一斉に砲撃し、自らの方に降り注いだそれを相殺するが、その一瞬の隙を突いてエルヴズユンデが要塞の内部へと強引に突入する。
「く、逃すものか!!」
グランディオスが、それを追おうとした次の瞬間だった。
「全艦、砲撃開始!!」
レールガン、ニュートリノ砲、高出力重力砲、スナイパーライフルの銃弾、重力榴弾砲の雨あられが、要塞を襲った。
「な、まさか…!!」
グランディオスが、砲撃の方向を見る。
「全艦、砲撃開始!白銀の槍の力、存分に見せ付けちゃって!!!」
「野郎共!ドンパチの始まりだ!!撃って撃って撃ちまくれえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
要塞に向けて、銀色の巨大戦艦と、紅の巨大戦艦が、砲撃を開始する。
その前方に、見覚えのある機動兵器達が展開している。
「お嬢ちゃん!こっちはわしらが引き受ける!」
聞き覚えのある声の通信。
「…シ、シリウス!?皆…どうして!!」
「ちょっとした増援を呼んでな、お主の支援に来た!!人類が結束した力は、鍵や、究極生命より強いと言われたのだろう?
…イージスを含め、かなり大勢増援を連れてきた!こちらは、このまま一気に圧し潰してくれる!!
だが、人間であるわしらの力では、今の人数でインフィナイトの相手は出来ぬ…だから、そちらは頼むぞ!!
わしらの故郷の…わしらの宇宙群の未来…お主に託す!!」
イセリナから通信が入る。
「やっぱり、それ以外の生き方が出来ないって、お姉ちゃんは言ったよね…。
けど…私達も、やっぱりこうしないではいられなかったんだ…後ろは私達が引き受けるよ…頑張って!」
更に、イージスから通信が入る。
「ハハハハハハ!いつぞやの恩を返させてもらいに来たよ!こちらは我々に任せ、存分に決着を付けてくれ!」
その言葉に、ギルティアは頷いた。
「…分かりました。皆を、信じます」
ギルティアは静かに笑いそう呟く。
そして、エルヴズユンデは、更に要塞の深部へと突入していく。
ガザードが、イセリナに通信を入れる。
「こちらの機動兵器戦力で、四将と真正面から渡り合えるのはイージスだけだ!残りの機動兵器は、戦艦の護衛に回す!」
「了解!それじゃ…全火力を、要塞前部の砲門、砲塔に集中!一気に敵火力を沈黙させるよ!」
「了解、全砲門、一斉砲火!!」
ファラオ店長の言葉と同時に、再び、ズィルヴァンシュピスの全ての砲門が、砲撃を開始する。
「さて、わしらも行くぞ!!」
アークトゥルースが、先陣を切る。
同時に、イージスの機体とフレアドイリーガルがライフルを構え、ジェネラルが、榴弾砲を構えてそれに続く。
「へっ…まさか、向こうから乗り込んでくるとはな…シリウス!相手するぜ!!」
エルグリオが、アークトゥルースの方へ向き直る。
「我々の目的を忘れたか、エルグリオ…!」
グランディオスの言葉に、インフィナイトから通信が入る。
「…良い、好きにさせてやるが良い」
「インフィナイト様…!?」
「ギルティア=ループリングは、余が直々に相手をする…!」
その言葉に、グランディオスが驚愕する。
「では、アクセス能力は…!!」
「八十パーセント、といった所か…だが、彼女が到達するまでには恐らく完全に掌握出来るだろう。
それに、彼女の覚悟は、生半可なものではない。汝らにこれ以上、負担をかける訳には行かぬ…余とて、この目的に全てを賭けておる。
彼女と正面から向き合わずして、余の目的の成就はないと考える。
よって、もう彼女の足止めをする必要はない…遠慮せず、目の前の敵を討て!!」
そして、それと同時に、四将達に、こうも言った。
「もし、余に何かあれば…汝らは余を捨てて逃げよ…余の目的を果たすも果たさざるも、汝らの自由ぞ。
汝らは、元よりそれぞれの目的あって集った身…余と最期を共にする必要など無い」
その言葉に、グランディオスは頷いた。
そして、攻撃をかけてきた四機の方に向き直る。
「…良いだろう、インフィナイト四将…賢聖のグランディオス、参る!!」
「グランディオスよ、シリウスは俺の獲物だ…邪魔するんじゃねェぞ…!!」
そう釘を刺したエルグリオに、グランディオスは頷く。
「…分かった、だが、奴はどうやら敵の現状の最大戦力のようだ、くれぐれも油断するなよ」
「油断できる相手じゃねえってのは、奴と何度も戦ったこの俺が一番良く知ってるぜ…!」
「…フ…そうか…全機、目標変更!目標、眼前の敵戦艦、及び、機動兵器!!攻撃…開始!!」
グランディオスのその言葉と共に、砲火乱れ飛ぶ乱戦が、幕を開ける。
そして、その中央で、エルグリオとアークトゥルースが、対峙する。
「シリウス、正々堂々と勝負と行こうじゃねェか!!」
エルグリオが、蒼色の光を放つ。
「うむ!先日お流れになった戦いの決着と行こう!!フェイト・スレイヤー…リミッター解除!勝負ぞ!暴欲のエルグリオよ!!」
フェイト・スレイヤーの刀身の光が、更に強くなる。
「「参る!!!」」
そして、双方が、同時に突進する。
剣と剣が切り結ぶ。凄まじいエネルギーの激突。
「…お主は、何の為にインフィナイトに与する…!!」
「俺は…力が欲しいんだ…!!」
「お主は…十分に強いではないか…!!」
アークトゥルースが、エルグリオを押し返す。
「ぐうっ…お前に負けるようでは…俺の求めた力には届かねぇ!!タイラント・ランサァァァァァァッ!!!」
雷のようなエネルギーが周囲に放たれる。
「フィールド展開!!」
アークトゥルースが、剣からのエネルギーフィールドでそれを防御する。
「光子爆雷、射出!!」
アークトゥルースの肩から、夥しい光弾が射出される。
「脚部ビーム砲、デモンズ・スローター、一斉掃射!!」
更に、装備していた火器を一斉に放つ。
「ふんっ!!」
眼前に集中したそれらを、エルグリオは一閃で斬り伏せる。
「それだけの力を持ちながら…お主は一体何を望む!!」
「遠い過去に果たせなかった約束を…果たしに行くんだ!!」
エルグリオが、光の宿った両腕の刃を振るう。それを、アークトゥルースが剣で叩き落す。
「約束…だと…!?」
「そうだ…俺は、この異形の力でも果たせなかった約束を果たす!!
インフィナイトは、目的を達した暁には俺にもその力を分けてくれると約束した!!
あの力があれば…きっと、俺は約束を果たす事が出来る…誰にも、邪魔はさせねェ!!」
そう言ったエルグリオの目から、シリウスは、戦士の覚悟とは違う何か、そう、いわば漢の覚悟とも言うべきものを見て取った。
成る程、これは止められる訳も無い。シリウスは、ニヤリと笑った。
「成る程な…これは、わしが何か言える事では無いらしい…さぁ、続けようぞ!!」
「おうよ!お前と戦うまではすっかり忘れてたぜ…力の有無はともかく『強い』事には、人間もそれ以外も関係ないって事をな!!」
エルグリオもニヤリと笑い、直後、エルグリオとアークトゥルースは、再び真正面から激突した。
一方、グランディオスは、イージスと対峙していた。
「この私…ミラーナイト!!イィィィィィジス!!!…が相手だ!賢聖のグランディオスよ!!」
「い、以前我々に捕まった時と違って…随分と派手だな」
グランディオスが、少し引いている。
「俺にも、色々と事情があるのだ、と返答」
その言葉に、グランディオスは、フ、と笑う。
「…『彼女』の性格を顧みるに、おおよその事情は何となく理解できないでもないがな」
「分かっているならば何も言うな…行くぞ!!」
イージスの機体の各部が開き、大量の火器が姿を現す。
「一斉掃射!!」
イージスの機体が、全身の火器を一斉に放つ。
「撃ち合いならば、遅れは取らん!!」
グランディオスが、全身の口から一斉に攻撃を放つ。
そして、要塞、ティタニックラーゼル及びグレートラーゼルとデストヴァールの群れを、ズィルヴァンシュピスと紅竜、フレアドイリーガル、ジェネラルが迎え撃つ。
「ラーゼル!テメェ!いい加減くたばれ!!」
藤木が叫ぶ。
「藤木…それはこちらの台詞だ!!」
ラーゼルが大合唱で返答する。
「…見事な大合唱だな」
レディオスが、その様子に笑いを堪えている。
「笑ってる場合か!!」
藤木が、レディオスに突っ込む。
「フ…言葉でくたばれと言うよりも、実際にくたばらせてしまった方が早い。
言葉よりも、行動だ。相手の合唱を黙らせるにも、それが一番手っ取り早いだろう」
そして、戦艦の方に通信を入れる。
「…俺達は要塞内部に突入し、ラーゼル、及びデストヴァールの本体を探し出し、破壊する!突入の援護砲撃を頼む!!」
フレアドイリーガルが、剣を構える。
「了解だよ!なら、次元閉鎖破砕砲で、お姉ちゃんが入って行った以外の場所に穴を開けるから、そこから侵入して!!」
「ああ、分かった!!」
「ま、マジか!?ええい、確かにこんな時は面倒は無しだ!こうなりゃ、一か八か特攻してやろうじゃねえか!!」
ジェネラルが、重力榴弾砲を構える。凄まじい閃光が、要塞を貫く。
「今だ!行くぞ藤木!!」
フレアドイリーガルが、内部に突入する。
「おうよ!!」
ジェネラルが、それに続く。
そして、エルヴズユンデが、沢山の壁を破って、要塞の最深部に到達する。
「ここは…インフィナイトの、研究施設…!?」
機動兵器が易々と活動できるサイズの研究設備がある。
そして、玉座の周囲に、沢山の培養槽が設置されている。
その中には、どうやら、指揮個体異形が入っているようだ。
しかし、玉座には誰もいない。
エルヴズユンデが、更にその奥へと向かう。
その直後、培養槽が割れる音が響く。
それは、その培養槽の置かれた区画の最奥からだ。
足音が、響く。
「…待っていたぞ、ギルティア=ループリングよ」
黒い巨体。それは、紛れもなくインフィナイトだった。
「インフィナイト…!」
「さぁ…決着を付けようぞ」
インフィナイトが、剣を構える。
その黒い光の翼は、紛れもなく、先日のような力ではない。
インフィナイトは、アクセス能力を完全に掌握下に置いている、ギルティアは理解した。
「…ええ、私もそのつもりでここに来ました」
力は、今のインフィナイトの方が明らかに上だ。しかし、今、ギルティアが退く事は許されない。
そう、全てを捻じ伏せて前に進むしかないのだ。彼女のすぐ後ろには、守るべき沢山の幸せがある。
一つたりとも、壊させはしない。だから、退く事は許されないのだ。
ギルティアは、言葉を続けた。
「…さぁ、最後の勝負です…インフィナイト!!」
エルヴズユンデもまた、剣を構える。
そして、それぞれの願いと共に、死闘は幕を開けた…。
続く




