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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.67 戦士の誇り

   Act.67 戦士の誇り


 エルヴズユンデを先頭に、アークトゥルース、ルークが続く。

「で、奥の手、というのは一体なんの事なのだ?」

「…この宇宙群の鍵に、協力を要請します」

 その言葉に、シリウスが驚く。

「なっ…この宇宙群の鍵を見つけておったのか…!!」

 成る程、それならば先日からギルティアの様子がおかしかった理由も分かる。

「…それで、何故そこまでそれを渋っていたのだ?」

「それは…」

「…む!?」

 シリウスの問いにギルティアが答えようとした直後、境界空間に雷鳴のようなエネルギー波が轟く。

「な…一体、何です…!?」

 こちらに対する攻撃ではなかったようで、被害は無い。

 直後、遥か彼方から、こちらに突っ込んでくるものが見えた。

 シリウスが、それが一体何なのかを、初めに見抜く。

「お主は…!」

 シリウスが、言葉を紡ぐ。近づいてくるのは、見覚えのある銀色の甲殻状の鎧だ。

 『それ』は、ギルティア達と一定の距離を保って、止まる。そして、シリウスは、『それ』の名を叫んだ。

「…暴欲のエルグリオ!!」

 シリウスが、ニヤリと笑う。

「…おう!久しぶりだな、シリウス=アンファース!!」

 エルグリオも、相手がこちらを認識していた事を喜ぶように、ニヤリと笑う。

「…私への襲撃、ですか?」

 ギルティアの言葉に、シリウスが続ける。

「どうかな…奴の目は、お主ではなくわしに向いておるぞ?」

「流石はシリウス、分かってんじゃねえか…。

 そうだ、命令はギルティア=ループリングの襲撃だが、俺にはそんな事はどうでも良い…!!

 今の俺の目的は、俺の血を滾らせてくれたお前と、今一度戦う事だ、シリウス!!」

「なっ…そ、それは…!」

 ギルティアのその言葉を、シリウスが遮る。

「ほう…良かろう、仮にも剣闘士たるもの、挑戦者を断る訳には行かぬな…お嬢ちゃん、こ奴の標的はお主ではなく、わしだ。

 そして何より、わしもこ奴ともう一度戦いたいと思っておった…手出しは、無用ぞ!!」

 シリウスは、そう言って笑った。

 ギルティアは、暫く考えてから、笑顔で頷く。

「…確かに、彼ならば戦闘中に卑劣な真似もしないでしょう。

 ならば、その戦い、私が見届けます…存分に」

「それで良い。たまにはわしにも出番がなくてはな」

 アークトゥルースが、再び剣を構える。エルグリオもまた、両腕と一体化した剣を構え直す。

「準備はできたな?さぁ!リターンマッチと行こうじゃねえか!!」

「うむ!お主が相手ならば大歓迎だ!!さぁ、参るぞ!!」

 直後、アークトゥルースとエルグリオが、同時に突進する。

 しかし、その頃、エルグリオとシリウスの戦いの場に向かう複数の影がある事に、誰も気付いてはいなかった…。


 エルグリオとアークトゥルースが、真正面から激突する。

「今度は初めから前座ではなく本命として相手させて貰うぜ!!」

「こちらとて、今度は力負けは無しだ!!」

 剣と剣が、激しくぶつかり合う。

「押し返すぞ、アークトゥルース!お主の力を見せてやれい!!」

 エルグリオの二本の剣を、シリウスの剣が強引に押し返す。

「ぐっ!」

「今ぞ!光子爆雷…発射ァ!!!」

 アークトゥルースの肩が開き、凄まじい量の光弾が、至近距離からエルグリオに直撃する。

 もちろん、その至近距離ではアークトゥルースの方にも損害が及ぶ事は、覚悟の上だ。

 続けて、アークトゥルースが、エルグリオを蹴り飛ばす。

 更に、そこにデモンズ・スローターのレールガンの雨が、襲いかかる。

 全弾、直撃だった

「その距離で光子爆雷を使いやがったか…面白ェ…!!」

 爆風が一閃される。

 しかし、先回の戦いより、明らかに大きなダメージを負っている。

「攻撃力もあの時より上がっているらしいな…!」

「あの後、お嬢ちゃんが完全復活した時に、余った縮退炉を機体の動力に追加したのでな…!」

 その言葉に、エルグリオが感心する。

「ほう…そいつぁ大したもんだ!やっぱ俺達の領域に首を突っ込むなら、それくらいじゃないとなァ!!」

 エルグリオが突っ込む。

「ぬうんっ!!」

 粒子加速砲モードのデモンズ・スローターを薙ぎ払う。

 エルグリオが、その砲撃を一閃する。

 アークトゥルースが、その隙を突いて突っ込む。

「でああああああああああああああああああああああっ!!!」

 剣の一撃が、エルグリオの胸部に深い傷を作る。

「ぐうっ!!」

 エルグリオが、ニヤリと笑う。

「やってくれるじゃねえか…!」

 エルグリオのたてがみが帯電する。

 そして、そこに集中したエネルギーが、刃のような翼に流れて行く。

「だが、返しは痛ェぞ!タイラント・ランサー!!!」

 無数のエネルギーが、まるで放電現象のように周囲に飛び散る。

 咄嗟の事で、アークトゥルースが回避し損ねる。

「ぐおおおおっ!!!」

 デモンズ・スローターに爆発が発生し、使用不能になる。

「ぬぅ…我が傑作を狙いおったか…流石だな、エルグリオ!!」

 デモンズ・スローターを手放し、脚部に収納されていたショットガンを構える。

 何の事はない。使用不能になったのならば、後で修理すればいいだけの話だ。

 今の動力の状態ならば、光子爆雷でも十分なダメージが与えられる事は、先程の攻撃で分かっている。

 ならば、無理してブラックホール弾を使用する必要はない。

 互角の勝負でその攻撃を持ち出しても、つまらないだけだ。

 相手がエルグリオだからこそ、シリウスはデモンズ・スローターを安心して手放しておく事が出来た。

「だが、まだわしには、かつてより死線を共にしてきた、このショットガンがある!!」

「全く焦りもなく武器を換装してきたか…それでこそ、それでこそだぜ!シリウス!!」

 そして、エルグリオがニヤリと笑い、再び攻撃をかけようとした、次の瞬間だった。

「ケーッケッケッケ!!エルグリオ、何遊んでるんだよ!

 お前に与えられた命令はギルティアの襲撃、こんなところで一騎討ちをする事じゃないよー?」

 境界空間に声が響き、直後、たくさんの棘がアークトゥルース目掛けて飛来する。

「何だと…!?」

 突然の別方向からの攻撃に、シリウスは対応が一瞬遅れた。

 棘が、アークトゥルースに直撃する。

「シリウスッ!!」

 エルグリオが叫ぶ。エルグリオにとっても予想外だったらしい。

「ぬおぉっ!!」

 アークトゥルースの右肩のアーマーが吹き飛ぶ。

「…あの腹立たしい笑い声…オーガティス…か…!」

「あー、流石に一撃ではくたばらなかったか、流石はクソジジイ…」

 見覚えのある赤い異形が、オーガティスが、そこには立っていた。

「…オーガティス!テメェ!!」

 エルグリオが叫ぶ。エルグリオにも予想外だったらしい。

「オーガティスの言う通りです…それに、一騎討ちなど、前時代的にも程がある…戦いとは、こうするものです!!」

 聞き覚えのある声と共に、境界空間の彼方から、何かがアークトゥルースめがけて突っ込んでくる。

「ヴェルゼンだと!?や、止めろォォォォォォォォ!!!!」

 咄嗟にエルグリオが割り込もうとするが、棘の雨に阻まれる。

 突っ込んできたのは、エルグリオと同じく四将、ヴェルゼンだった…。

「くっ…一騎討ち中の不意討ちとは…!!」

 エルヴズユンデがヴェルゼンとアークトゥルースの間に割り込もうとする。

「フ…会いたかったぞ、ギルティア=ループリング、そして、ルークよ!!!」

 エルヴズユンデの真上から刃の鞭が振り下ろされる。

「!?」

 咄嗟に左腕の爪でそれを受け止める。

 そこには、またも、倒した筈の敵の、そう、デストヴァールの姿があった。

「…またですか!?デストヴァー…!!」

 そこで、ギルティアの言葉が途切れる。

 そう、そこにいたのは、デストヴァール…黒騎と融合した異形が、五体。

「…何、ですか…!?」

 思わず、ギルティアが呟く。その直後、デストヴァールの『群れ』は、一斉に攻撃を開始する。

「貰いましたよ!!」

「し、しまった…間に合わない!?」

 デストヴァール軍団の攻撃が激しく、シリウスへの援護が間に合わない。

 咄嗟に、剣を盾にして防ぐ。爪の直撃で、剣が折れ、胸部に傷がつく。

「ぬううっ…!!」

「…シリウス!!しっかりしやがれ!!シリウス!!」

 エルグリオが叫ぶ。

「ぐ…う…だ、大丈夫だ…!」

「…生きてたか…良かった…これは俺の責任だな…本当に、すまねぇ…!!

 だが、これは俺がやろうと思ってた事じゃねえ!それだけは分かってくれ…!!!」

 エルグリオは、シリウスに、本当にすまなそうに頭を下げる。

「…分かっておるよ…お主はそんな卑劣な事をする奴では、ない…」

 その言葉に、エルグリオは安堵の息を漏らすと、すぐにヴェルゼンに向き直る。

「…テメェら…一体何のつもりだ…!!」

「フフフ…僕達は、あなたがちゃんと命令を果たしているか監視に来ただけですよ?」

「…インフィナイトが命令を下したのは俺に対してだ!!やり方も俺に一任されている!!

 これが俺のやり方だ!!テメェらに文句を言われる筋合いはねえ!!」

 エルグリオが、ヴェルゼンに向かって叫ぶ。

「黙りなさい!まだその張本人であるギルティアには一太刀すら入れていないではありませんか!!」

「黙れ、も、こっちの台詞だよ!!監視すんなら最後まで黙って見てやがれ!!」

「ギルティアに攻撃を仕掛ける素振りがないのならば話は別ですよ…」

 その言葉に、エルグリオは、両腕の剣を構えて応える。

「…テメェら…他人に恥ィかかせるのも大概にしやがれ!!」

 そして、シリウスに向けて叫ぶ。

「シリウス!ギルティア!ルーク!一時休戦だ、今回はお前らに手を貸す…!!」

「え…!?」

 ギルティアが、驚愕する。

「…エルグリオ、貴様!!」

 ヴェルゼンの言葉を、エルグリオが遮る。

「テメェらは俺の誇りを傷つけた…俺に恥をかかせた!その借りだけは、きっちり返させてもらう!!」

 エルグリオのたてがみが再び帯電する。

「そういえば…テメェらにも見せた事がなかったなァ…!

 最高位異形としての俺が持つ本当の力…そう…これが!この俺の!!『力』だ!!!」

 そして、帯電が更に強くなる。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!」

 直後、凄まじい放電のような現象と共に、エルグリオが、蒼い光を放つ。

「なっ…放出されている根源的エネルギー総量が、僕達の扱っている根源的エネルギーの倍以上!?

 …馬鹿なッ!そんな馬鹿な事が!!」

 ヴェルゼンが、唖然とする。

「エルグリオ…!」

「…へへっ…シリウスよ…言っておくが、もちろん、あの時も俺は手加減無しだったさ。

だがな…『強さ』と『力』は別物だ。相手がいくら強かろうと、力の差がありゃ勝負にすらならねえ…!

しかし、お前はその力の差をひっくり返す大博打を決めやがった…。

…だから、今回の戦いでは、俺もこの力を使うつもりだったのさ…」

 インフィナイトとの戦いの事が、シリウスの脳裏をよぎる。

 恐らく、彼が言う『力』の差と言うのが、ギルティアの立っている場所に人間が立てない理由なのだろう。

「…まだ、戦えるか?」

 エルグリオの言葉に、シリウスが不敵な笑みと共に力強く頷く。

「うむ…この程度の傷、傷に入らんよ…共に参ろうぞ、エルグリオ!!」

 それまで聞いていたギルティアが、口を開く。

「…そう言う事ならば!!ルーク、行きますよ!!」

「了解した!」

 エルヴズユンデとルークが、黒騎を突破してアークトゥルースに合流する。

「四対八、上等です…皆纏めて相手になりましょう!!」

 ギルティアの言葉に、シリウスがニヤリと笑う。

「…お嬢ちゃん…フ…そう言う事だ、後悔してもらおうぞ!!剣が折れようとも、わしは負けぬ!!」

 アークトゥルースが、ショットガンを構える。

「いずれにせよ、彼我戦力差は此方に優位…後悔するのは、そちらだ!!」

 ヴェルゼンが叫び、直後、オーガティスとヴェルゼンが突っ込んでくる。

 後方から、五機の黒騎が、再び一斉に攻撃を開始した。

「オラァ!!」

 エルグリオが、透き通った両腕の刃から、光の刃を何度も放つ。

「タイラント・ランサー…ブレェェェェェイクッ!!!」

 荒れ狂う雷状のエネルギーの乱流が、光の刃に乗ってヴェルゼンとオーガティスに襲い掛かる。

「くっ…!!」

 オーガティスがそれを受け止め、吹き飛ばされる中、ヴェルゼンが、その嵐をかいくぐってエルグリオに接近する。

「捉えましたよ…!!」

 ヴェルゼンが爪を構える。

「だが、速さだけのテメェには、それが限界だッ!!」

 エルグリオが剣を構える。次の瞬間、エルグリオはヴェルゼンの背後に回り込む。

「なっ!?」

 一閃が、ヴェルゼンの翼の一枚を斬り落とす。

「今だ、シリウス!!」

「承知!!」

 アークトゥルースが一気に踏み込み、ショットガンを何度も叩き込む。

「ぐあああああああああああああっ!!!」

「ヴェルゼン!」

「…デストヴァール!援護しなさい!!」

 ヴェルゼンが叫ぶ。

 直後、黒騎の一機が、ヴェルゼンとエルグリオの間に割り込む。

「雑魚は引っ込んでろぉぉぉぉぉ!!!!」

エルグリオが、黒騎を両断する。

「フ…エルグリオ、無駄である事は、あなた自身知っているのでしょう?」

 ヴェルゼンの目が笑う。

「ッ!」

「そうだ…この程度で余を倒す事など出来ぬぞ!!」

 真っ二つになった黒騎が、瞬時に再生する。

「お嬢ちゃん、どうやら…!」

 シリウスの言葉を最後まで聞かずに、敵に対する対処法を叫ぶ。

「…ならば、本体を倒すだけです!!」

 四機分の刃の鞭が、まるで嵐のようにエルヴズユンデを阻む。

「…邪魔です!!」

 エルヴズユンデの翼が、紅の光の翼へと変わる。

「てえええええええええええいっ!!」

 刃の鞭の嵐を、ブラスターが薙ぎ払う。

「ルークッ!!」

「任せろ…!!」

 ルークが、時空震ブレスで黒騎を四体纏めて吹き飛ばす。

「やりました…か?」

 ギルティアが、爆風を睨む。

「ク、クククク…フハハハハハハハハハハハ!!!!」

 笑い声と共に、爆風の中に、八つの赤い輝きが見える。

「…な…!?」

「無駄だ…それでは余を倒す事は出来ぬ!!」

 ギルティアが、一瞬考える。

 本体を倒さねばならない敵、つまり、これは五体全てが本体では無いという事だ。

 しかし、いくら異形とはいえ、本体とそこまで距離を離して活動できる訳がない。

 …という事は、この近くに本体もいる、それは間違い無い。

 空間潜行で潜伏しているのだろうか。

 しかし、既に敵はこれまでの戦いから、こちらが時空震ブレスで潜行を強制解除させる事が出来る事を知っている筈だ。

 ならば、恐らく対策も成されている。

 今、デストヴァールを先に相手にしても、無駄に消耗するだけだ。

「と、なれば…」

 ギルティアが、ニヤリと笑う。

「デストヴァールは後回しで、先にヴェルゼンとオーガティスを倒せば良い、と」

 そう呟くと、ルークに向けて言葉を紡ぐ。

「…ルーク、『雑魚』のお相手をお願いできますか?」

 少なくとも、デストヴァール程度では今のルークを倒す事は出来ないという事は分かる。

 ならば、彼に相手をして貰えば安心だ。

「雑魚とは、デストヴァールの事か?それならば、任せるが良い」

 ルークが、ニヤリと笑って頷く。

「ええ、お任せします…デストヴァールは今の所、幾ら倒しても死にません…存分にその恨みを晴らしなさい!!」

 その言葉に、ルークが頷く。

「うむ!」

 ルークは頷くと、四機の黒騎を睨む。

「覚悟せよ…彼女に深手を負わせ、この我を侵略に利用しようとした罪、今ここでじっくりと償わせてくれる!!!」

 ルークのその言葉に、デストヴァールの背筋が凍る。

 幾ら、今の状態では絶対に死なないとはいえ、その言葉はデストヴァールを恐怖させるに十分であった…。

「ヴェルゼン!私はあなたのような卑怯者が大嫌いなのです!!」

 エルヴズユンデが、ヴェルゼンに突進し、剣を叩き込む。

「僕も、あなたのような救世主気取りの馬鹿は、大嫌いなのです!!何も救えはしないくせに信念だけ無駄に強い!!」

 ヴェルゼンが、それを回避し、爪を叩き込む。

「笑わせる…救世主が必要とされるのは、世界が悪い方向に進むからです!!

 その原因となっているのは、あなた方のような卑怯者達なのです!!」

 爪を爪で受け止め、ブラスターを放つ。

「ぐっ…!」

 直撃を受けたヴェルゼンの動きが、一瞬止まる。

「貰いましたよ…!!」

 その隙を突いて剣を叩きこもうとするが、飛来した棘に阻まれる。

「馬鹿だね、俺もいるんだよー!?」

 直後、オーガティスがエルヴズユンデに突っ込んでくる。

「おっと、そう言うお主は、わしがいる事を忘れたか!?」

 アークトゥルースが、オーガティスに光子爆雷を撃ち込む。

 オーガティスに目立ったダメージはないが、突進が止まる。

「エルグリオ!!」

「おうよ!!」

 アークトゥルースの横を、エルグリオが抜ける。

「タイラント・グリィィィィィィィィドッ!!!!」

 エルグリオが、自らの光り輝く刃を渾身の力で振るう。

 刃の嵐のような衝撃波が、オーガティスに襲い掛かる。

「おっと!」

 オーガティスが、黒騎を盾にして防ぐ。

 黒騎がバラバラに吹き飛ぶが、すぐに再生する。

「フハハハハハハハ!無駄無駄ぁぁぁぁ!!!」

 高笑いを続けるデストヴァールの後ろで、オーガティスが呟く。

「ケケッ…いやぁ、その能力便利だねー…俺もちょっと欲しいわ」

 そして、再び黒騎を掴む。

「という訳で、行くよー!!」

 オーガティスが、黒騎を構えて突っ込んでくる。

「そちらがその気ならば…!!

 プリズナーブラスター…バァァァァァァァァストッ!!!!」

 エルヴズユンデから放たれた大量のブラスターの雨が、弾道を変え、オーガティスだけを的確に捉える。

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!なーんてな…今だ!ヴェルゼン!!」

 直後、ヴェルゼンがエルヴズユンデの背後に回りこむ。

「しまった!!」

「そうはさせねェよ!!」

 エルグリオが、エルヴズユンデとヴェルゼンの間に割り込む。金属音。

「ぐ…う…」

 エルグリオの右肩に、ヴェルゼンの爪が深々と刺さる。

「エルグリオ…あなたの目的はシリウスの筈…何故私を助けたのです…!」

「お前も…いつか俺が正々堂々と正面から倒す!こんな卑怯者に…やらせはしないぜ…!!」

 エルグリオが、ヴェルゼンに頭突きを叩き込む。

「うあああああああっ!!!」

「オラオラオラオラオラオラァァァァァ!!!!」

 更に、追撃で何度も剣を叩き込む。

「隙が大きすぎるな…!!」

 黒騎が、エルグリオに向け、両肩の棘を伸ばす。

「そうはさせぬ!!」

 アークトゥルースが、黒騎に突っ込む。

 至近距離からのショットガンの射撃、更に、蹴り飛ばしてから続けての光子爆雷で、黒騎を遠くへ押し飛ばす。

「助かったぜ、シリウス!」

「この後、お主ともう一戦控えておるからな…!!」

 シリウスが、そう言ってニヤリと笑った。

「…チッ…ヴェルゼン、どうする?俺、もういい加減鬱陶しくなってきたんだが…」

「そうですね…ならば、そろそろ奥の手を使いましょう…デストヴァール!!」

「フ…ようやく許しが出たか…」

 デストヴァールの高笑いが、再び響く。

 ルークの猛攻を突破し、五機の黒騎が融合していく。

「フハハハハ…フハハハハハハハハハハァァァァァァァァ!黒神騎デストヴァール…降臨!!!

 これが、余が得た新たなる力だ!この力の前には、何人であろうとも虫けらに過ぎぬ!!

 …ただの塵に成り果てるが良い!!」

 そこに立っていたのは、エルヴズユンデの五倍ほどの巨大な機動兵器だった。

「さぁ、デストヴァール!憎しみのままに暴れなさい!!

 あなたから全てを奪ったギルティアやルークを、塵に返してしまいなさい!!」

「フハハハハハハハ!!余にこの力を授けてくれた貴様らには感謝しているぞ!!

 お陰でこの愚か者どもをひねり潰す事が…!」

 その言葉を遮るように、光子爆雷がデストヴァールの顔面に直撃する。

 更に、ブラスターの雨がデストヴァールに襲いかかる。

「無駄だ無駄だ!!その程度で、余を倒す事は出来ぬ!!」

 直撃した損傷を瞬時に回復したデストヴァールの胸部から、凄まじい衝撃波が収束して放たれる。

「くっ…!」

 咄嗟に、エルヴズユンデが前に出て衝撃波を受け止める。

「お嬢ちゃん…!!」

「この…程度…!!」

 剣の一閃が、衝撃波を両断する。

「…成る程、それなりの力は持っているようですね…」

 これで、デストヴァールも無視できない。

「…私一人ならば、何とかできるでしょう…しかし…」

 プリズナーブラスターを拡散させた空間に対する絨毯爆撃で、デストヴァールの本体を探し出す事は出来る。

 あとはその場所にアトネメントプライを叩き込めば、たとえ潜行した状態であろうとも直接攻撃を加える事が出来る。

 しかも、幾ら精密射撃が可能なプリズナーブラスターといえど、そこまで広域の攻撃となれば、精密な制御は出来ない。

 よって、今それを敢行しては味方も巻き込んでしまう。

「…くっ…」

 最良の手段は、味方を戦闘領域外に退避させる事だ。

 本来ならばそのような無茶は考えもしないだろうが、ギルティアは自分に被害が集中する事を何とも思わない。

「皆さん…!」

 ギルティアが、後退の指示を叫ぼうとした、次の瞬間だった。


「ようやく見つけた…お姉ちゃん!私が力を貸すよ!!」


 境界空間に、少女の声が響く。

 直後、凄まじい量の砲撃が、デストヴァール、そして、ヴェルゼンとオーガティスへと襲い掛かった…。


続く


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