Act.62 対峙
Act.62 対峙
一匹の竜が、ヴェルゼンとオーガティスと対峙している。ルークだった。
「インフィナイト様の信頼を裏切るとは…どこまでも見下げ果てた奴…オーガティス、この愚か者に死を!!」
「あいさー!ケッケッケ、そういう訳で、悪いが死んで貰うぜ!!」
「そこを退け!我は、何としてもギルティアの元へとたどり着かねばならんのだ!!」
ルークが、爪を構えた…。
エルヴズユンデとアークトゥルースが、境界空間を飛び続ける。
憐歌と出会ってから、三つ程世界を通過したが、ギルティアの気持ちは未だに晴れなかった。
「何があったかは聞かんが…元気を出せ」
「…私は、元気ですよ」
心配するシリウスの言葉に、ギルティアが、そう言って笑う。
「なら良いが…先日から、お主が何処か追い詰められているように見えてな」
「…シリウス、その言葉、そのままあなたに返します。
先日負傷してから、あなたも、何処か思い詰めているように見受けられます…あの程度、私は気にしていません」
「…お嬢ちゃん…」
心配そうなシリウスに、ギルティアは微笑んだ。
「大丈夫、大丈夫です…私は、私の使命を果たす、それだけで良い…私は、大丈夫です」
その微笑みは、何処か痛々しかった。
「…大丈夫そうに見えんから、こうして聞いているのだが、な」
シリウスは、ギルティアに聞こえないように呟いた…。
「そろそろ、次の目的地が見えてくる筈です」
ギルティアが、航路を見ながら呟く。
しかし、何も見えない。
「…空間が、暗い…!?」
「一体、何事だ…?」
直後、二人の目の前の空間が、割れた。
「これは…物質の生成…いえ、これは…創世反応…!?」
目の前の空間の裂け目が広がり、大きくなっていく。
そう、目の前に、『世界』が生まれているのだ。
「…待っていたぞ、ギルティア=ループリングよ」
境界空間に声が響く。
それと同時に、『世界』が、ギルティアとシリウスをも飲み込む。
その内部は、真っ暗な空間だった。
その中に、岩の破片のような陸地が点在している。
「…こんな事が出来る相手…まさか!」
そんな芸当が出来る存在など限られている。
そして、今のこの状況で、心当たりは一つだった。
空間の中央に、何かがいる。
その姿は、巨大な剣を携えた、ボロボロの黒い翼を持つ竜、と呼ぶのが適切か。
「はじめまして、と言っておこうか…」
…何処となく、ルークにも似ている。
ギルティアは、自らの心当たりを、そのまま言葉にして紡いだ。
「あなたは…この宇宙群の、クリエイターですね?」
ギルティアの問いに、竜は頷く。
「いかにも…余こそ、このアルセント宇宙群の創世者、インフィナイトなり!!」
竜が言ったその言葉に、ギルティアは、やはり、と頷く。
「あなたが、インフィナイト…」
エネルギーの乱流が雷鳴となって、生み出された世界を揺るがす。
「そうだ…余こそ、汝らの旅の『終着点』ぞ…!!」
凄まじい威圧感だ。いくら百戦錬磨のシリウスといえど、ここまで強大な威圧感を感じた事はなかった。
成る程、これが、神が人間と対峙するという事なのか、シリウスは、納得した。
しかし、それでもギルティアは一歩も退く様子を見せない。
「あなたには、問わねばならない事が山ほどあります」
「フ…余がわざわざ答えずとも、ここで余を倒す事が出来れば、余の目的はここで潰えよう?
ここで断言しておこう…余は、汝ら、そして、この宇宙群に住まう全ての者達の…敵だ。
…これだけで、汝が戦う理由としては、充分過ぎるであろう?」
インフィナイトが、携えていた剣を構える。
「言葉は不要、戦うのみと言う事ですか…」
エルヴズユンデもまた、剣を構える。
「この世界は、汝と戦う為に、余がわざわざ生み出したものぞ。
遠慮は不要だ…二人纏めて相手をしてやろう…来るが良い!!」
インフィナイトの咆哮が木霊し、世界が、震える。
「シリウス、危険になったらすぐに後退してください」
ギルティアが、シリウスに伝える。
「…分かった」
シリウスは、頷くしかなかった。
今眼前にて対峙している敵は、最高位異形のような、元は人間という存在ではない。
まさしく、自分達の創造主を相手にしているのだ。
少なくとも、無理をして自分が死んでは、ギルティアを更に追い詰めてしまう。
「…ごめんなさいね」
ギルティアは、寂しげに呟く。
シリウスの様子を察知したのだろう。
「いや、わしの事は心配するな…お主はお主の戦いを貫け…!!」
これ以上、ギルティアの重荷になりたくはない。
シリウスは、ニヤリと笑ってやった。
「シリウス…分かりました、ならば…行きます!!」
エルヴズユンデが、インフィナイトに突進する。
ギルティアが左腕の爪を前に突き出す。
「…ワールドコアアクセス…コンプリート…!!」
ギルティアの爪の前に、紅の魔法陣が展開される。
「祝福を受けし世界よ!汝と鍵たる我が名を以て、我らに仇成す者に遍く滅びを…!
今こそ全てを解き放つ時…さぁ、共に未来を阻む者を討ちましょう!…鮮血の、煌翼!!」
そして、ギルティアのその叫びと共に、ギルティアの四枚の翼が血のような紅の光に飲み込まれ、姿を現したのは、四枚の紅の翼。
エルヴズユンデの翼も、それに呼応して紅の光の翼となる。
「はああああああああああああああっ!!」
「ぬうううううううううううううんっ!!」
渾身の一振りが激突する。
「プリズナーブラスター…バァァァァァァァァストッ!!!」
鍔迫り合い状態から放たれた、至近距離からのブラスターが、インフィナイトに直撃する。
「創壁、展開…!!」
「なっ…!!」
ブラスターは、インフィナイトに傷一つ付けられていない。
再生されたのではない、一つ残らず、インフィナイトの周囲に展開した壁に止められている。
インフィナイトの周囲に、凄まじい密度の『空間』が、壁のように展開されている。
「覚えて置くと良い…瞬間的に空間を創生して攻撃を防ぐ…これが、クリエイターの戦い方だ!!」
インフィナイトが、剣で強引にエルヴズユンデを押し飛ばす。
「…お嬢ちゃん、ここはわしが…!!」
吹き飛ばされたエルヴズユンデの横を、デモンズ・スローターを構えたアークトゥルースが抜けていく。
「デモンズ・スローター、エネルギー充填二百パーセント!!ここで使わずして、何処で使うと言うのだ!!
デモンズ・スローター、オーバーレイ!!発射ァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
デモンズ・スローターから、光を纏った黒い塊が解き放たれる。
「ほう、ブラックホール弾とは…成る程、人間にしては面白いものを使う…だが!」
インフィナイトが、左腕を突き出す。
「ふん!!」
塊が、止まる。
「シリウス!敵とのエネルギー総量が違い過ぎます!!避けて!!」
「何と…!」
黒い塊に、更に光が集まる。
そして、アークトゥルース目掛けて、それは解き放たれた。
アークトゥルースは間一髪でそれを回避する。
直撃であれば、跡形も残らなかっただろう。
「おのれ…おのれッ!!これが…これが神と人の本当の力の差だというのか…!!」
もちろん、ツインドライブのブラックホール動力の出力は既に限界値まで引き出している。
しかし、敵の力には全く底が見えない。
「コンヴィクション・スラァァァァァァッシュ!!!」
エルヴズユンデが、アークトゥルースの横を抜け、再び突進する。
「創壁、展開!!」
展開された空間と、剣が衝突する。
「その空間ごと、斬り伏せるだけです!!」
「ほう…!」
空間が両断され、インフィナイトに剣が届く。
「成る程、やはり、空間ではブラスターやエネルギー兵器は防げても、物質は完全には防げないようですね…見かけ倒しです!!」
ギルティアが、ニヤリと笑う。
「フ…流石に気付くか…だが!」
しかし、次の瞬間、エルヴズユンデの胸部に深い傷がつく。
「ぐうっ…!?」
「完全には防げずとも、反撃への時間稼ぎくらいには使える、と言う事だ…!!」
インフィナイトの爪の一閃だった。
「まだまだぁぁぁっ!!」
しかし、エルヴズユンデが怯みもせずにインフィナイトの胸部に爪を叩き込む。
「この距離ならば…創壁では防げない筈…!!」
そして、創壁の影響も及ばない至近距離から、レーザーを幾度も放つ。
「ぬぅ…!」
エルヴズユンデが、インフィナイトを蹴り、その隙を突いて背後に回りこむ。
「何の!!」
インフィナイトが、振り向き様に剣を叩き込む。
凄まじい金属音。
剣と剣が正面からぶつかる。
「二人纏めて、と言ったのは…お主自身ぞ!!!」
アークトゥルースが、インフィナイトの背後から光子爆雷とレールガンを放つ。
「無駄だ、創壁の前には…何!?」
光子爆雷は防がれるが、何発かのレールガンが創壁を撃ち抜き、インフィナイトの背に突き刺さる。
「やはり先程のお嬢ちゃんの話から推測した通り、実弾ならばある程度は創壁を抜けるか…!!」
「超電導レールガンとは…随分と原始的な武装を使うものだ…。
だが、成る程、そちらの方が、今の余を相手にするには都合が良いらしい…フ、フフ…」
インフィナイトが笑う。
「…良かろう、ならばそろそろ、肩慣らしは終わりにしようか…!!」
凄まじいエネルギーが放出され、至近距離で剣を叩き込んでいたエルヴズユンデが吹き飛ばされる。
「な、何だと…!?」
「…やはり、本気ではありませんでしたか…!!」
インフィナイトの周囲に、いくつもの黒い球体が出現する。
「さぁ、ここからが本番だ…!!」
球体が一つ一つ姿を変え、インフィナイトの身体へと集まっていく。
「創世の神鎧よ!!」
それぞれの球体が形を成したのは、漆黒の鎧だった。
それらが、インフィナイトの身体へと集まっていく。
「インフィナイト…創世神装、完了!!」
その姿を形容するならば、騎士竜と呼ぶのが相応しいか。
「さぁ、死力を尽くしてかかってくるが良い!!」
次の瞬間、再び凄まじい量のエネルギーが、インフィナイトの鎧の各部から放出される。
「あれは…創壁と高エネルギー乱流の二重障壁…!?
シリウス、アークトゥルースの性能では、あれには接近する事すら出来ません!離脱を!!」
「む…そう、か…承知した」
シリウスはそう言うと、世界から境界空間へと離脱して行く。
そして、シリウスは静かに拳を握りしめていた…。
「…シリウス…」
「正しい判断だ、確かに彼は常軌を逸した強さを持っている…しかし、所詮は人間…最後に汝は一人で戦う、余もそう踏んでいた。
さぁ…ここからが本番だ、汝の力を見せてみよ!!」
インフィナイトは、エネルギーを帯びて輝く剣を構える。
「そう、私はこうなる事を覚悟していた筈です…最後は…私一人だと…」
その言葉は、まるで、ギルティア自身に言い聞かせているかのようだった。
エルヴズユンデの剣に、再びブラスターが集まる。
刀身に加わる黄金色の輝きに、更に何度も何度もブラスターが集まり、黄金は白へと変わりゆく。
「ブラスターでは創壁を抜く事は出来なくても…これならば!!」
インフィナイトとエルヴズユンデが、同時に突進する。
光輝く剣同士の衝突。
凄まじいエネルギーのぶつかり合いが、世界にヒビを入れる。
エルヴズユンデの、舞い散る紅の翼が、インフィナイトの放出する莫大なエネルギーと喰い合って、それによって発生した爆発は、まるでエネルギーの津波のように世界を揺る
がしていく。
エルヴズユンデが、少しずつ押し負ける。
「…くううっ…!!」
「クク…やはり、所詮はアクセス率五十パーセントか…」
インフィナイトが、ニヤリと笑う。
「私は、負ける訳には…行かない!!」
一歩剣を引き、インフィナイトの背後に回り込む。
「やあああああああああああああああっ!!!」
一閃が、インフィナイトの翼を斬り落とす。
「成る程、所詮は、という言葉は取り消そう…これでは、汝を追い詰める事など出来ぬか…」
「何…!?」
ギルティアにも、先日のグランディオスとの戦いのような余裕はない。
グランディオスは確かに今のインフィナイトと同程度の力を振るっていた。
しかし、グランディオスはあくまで人間からあの領域まで『到達した』者だ。
インフィナイトやルークのような究極生命とは、初期能力が異なるのだ。
そう、究極生命は、底が、見えないのだ。
「…ふんっ!!」
瞬間的に、インフィナイトの翼が再生する、
いや、翼を『創生』したと言った方が良いかも知れない。
直後、夥しい量の光弾がインフィナイトの周囲に停滞する。
「喰らい尽くせ、ミッドナイト・ハウリング!!!」
停滞していた光弾一つ一つが、インフィナイトの咆哮に応えるように、光の竜となってエルヴズユンデへと襲いかかる。
「ええいっ!!」
エルヴズユンデが、片っ端からそれを斬り捨てる。
しかし、斬り捨てきれずに竜がエルヴズユンデの左腕を噛み砕く。
更に右足、右肩が食い千切られる。
「…ぐ、う…!」
左腕の爪部の損傷は、それとリンクしているギルティア自身の左腕に損害を及ぼす。
ギルティアの左腕が砕け、血が滴る。
「…まだまだ!!」
傷を推して、エルヴズユンデが突進する。
体当たり、続けて渾身の剣撃を叩き込む。
流石に、あの攻撃の直後に反撃を受けるとは想定していなかったらしく、インフィナイトは直撃を貰う。
「成る程…良い攻撃だ」
だが、インフィナイトはまだ、かなりの余裕を残している。
ここで何も出来なければ、今までの旅も、救ってきた全ても、全てが無意味に帰す。
「だが…その程度の攻撃で、余を倒す事など出来はせぬぞ!!」
「くっ…このままでは…しかし、ここで負ける訳には…!」
ギルティア自身も気付いていた。このまま戦い続けても、勝ち目は薄い。
「こうなれば…一か八かです…!!」
先程のシリウスのデモンズ・スローターのオーバーチャージによる砲撃が返された事から、この攻撃が通じるかは分からなかった。だから、ここまでは使わなかった。
エルヴズユンデの胸部が、展開する。
「ほう…」
「アトネメントプライ…チャージ…!!」
胸部に、黒い光が集まり始める。
そして、エルヴズユンデが、そのままインフィナイトに再び突進する。
「成る程、次元壁破砕砲か…良かろう!さぁ、汝の死力を余に見せてみよ!!」
インフィナイトの周囲に、再び光弾が停滞する。
「ミッドナイト・ハウリング!!」
再び大量の光の竜が、エルヴズユンデへと襲い掛かる。
「アトネメントプライ…フィニィィィィィィィィィッシュ!!!!」
エルヴズユンデの胸部から、黒い光が解き放たれる。
それは、光の竜を全て喰らい尽くし、そのまま、インフィナイトへと襲い掛かる。
「成る程、確かに大した力だ…この出力では返す事は叶わぬな…!」
インフィナイトが、再び左手でそれを抑える。
「だが、返せずとも…握り潰す事くらいは出来る!」
インフィナイトの左手が、黒い光を握り潰す。
「…そん、な…!」
「まだ、『あの力』を発揮せぬか…いや、彼女自身には『あの力』を使っている自覚が無いのか…?」
インフィナイトが、聞こえないように呟く。
「ならば、もっと追い詰めねばならんのだろうな…さぁ、続けるとしようか!!」
インフィナイトが、剣を構える。
「私の命はまだ潰えていない…諦めは、しない…!!」
エルヴズユンデが、再び剣を構えた、次の瞬間だった。
爆音、続く轟音。
二人の戦いに世界が耐えられず、崩壊を始めたのだ。
「…今です!!」
一瞬の隙を突いて、インフィナイトに、渾身の剣撃を叩き込む。
鎧に傷はつかないが、インフィナイトが、大きく吹き飛ばされる。
「時間がない、すぐに宇宙群への被害を防がなくては!!」
エルヴズユンデが、凄まじい量の根源的エネルギーを放出する。
世界の崩壊の余波が、他の世界、宇宙、そして宇宙群に影響を及ぼさないようにするためだった。
「はああああああああああああああああああああああっ!!!」
「戦闘中に他の心配とは…汝は本当に優しいようだ…だが、その優しさが命取りとなる!!」
「同時に両方をやる、ただそれだけです…!!」
エルヴズユンデが、剣を構える。
しかし、アクセス状態で供給されるエネルギーの大半を被害の軽減に使っている。
今は、せいぜい『動ける』程度だ。勝てる訳がない。
「ならば、見せて貰おうか…ミッドナイト…!」
インフィナイトを襲う凄まじい時空震が、その言葉を遮る。
「貴公の思い通りにはさせぬぞ…インフィナイト!!」
インフィナイトのものとは異なる咆哮が、世界に木霊する。
「ぬうっ!?」
境界空間から突っ込んできたのは、ギルティアの見知った竜だった。
「ルー…ク?」
「ギルティアよ、何とか間に合ったらしいな…!」
良く見ると、ルークの装備が変わっている。
骨で出来た翼は機械仕掛けの翼に変わり、両腕にシールドと思しきパーツがついた巨大な機械爪がついている。
「…まさか、ルーク…汝、創世の力を…!!」
インフィナイトが驚愕する。
「貴公の見よう見まねだったが、おかげさまで、巨大化よりも効果的に力を使えるようになった」
「フ…礼には及ばぬよ…それは、汝の心の成せる技だ…しかし、やはり、汝は彼女の側につくのだな…」
インフィナイトのその言葉に、ルークは静かに頷く。
「ああ、友として、我は貴公のやる事を見過ごせぬ…よって、我は友として貴公を止めねばならぬ」
「フ…分かっている。誰かに理解してもらえるとは、余も思っておらぬよ…そう、これは、あくまで余が成し遂げねばならぬ事…」
「ライズ…貴公、そこまでの覚悟で…ならば、我もそれ相応の覚悟で挑ませて貰う…!!」
ルークが、再び時空震を放とうと口を開ける。
その前方に、魔法陣がまるで砲身のように展開する。
「…良かろう!二人纏めてかかってくるが良い!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!」
その一撃は、創壁を抜き、インフィナイトに直撃する。
「ぐうっ!」
凄まじい爆発が発生する。
「…凄い…」
ギルティアが驚愕する。成る程、ルークもまた、やはり究極生命だったのだ。
その力は、巨大化していた時のルークの力すらも大幅に上回っている。
直後、爆風の内部から、インフィナイトが飛び出す。ほぼ無傷だが、少なくとも、攻撃は通っている。
「フ、フフ…強くなったな、ルークよ…だが、その程度で余の目的を阻めると思うな!!」
インフィナイトの剣と、ルークの機械爪が激突する。
「阻めぬならば散るのみだ!」
両者が一歩離れる。
「良かろう!ならば…ミッドナイト・ハウリング!!」
「何の!!」
ルークに襲い掛かる無数の竜、しかし、ルークはそれを時空震で相殺する。
「流石はルーク…しかし、その戦いは…私の役目…。
この場所で傷つくのは…命を賭けるのは…私だけで…私だけで良いのです…」
ギルティアが、静かに呟く。
「…ルーク!そこを退きなさぁぁぁぁぁいっ!!!」
「!?」
とっさに、ルークが一歩引く。
直後、インフィナイトに向けて、エルヴズユンデが凄まじい勢いで突っ込む。
「む!?」
「でええええええええええええええいっ!!!」
渾身の拳が、インフィナイトの顔面に激突する。
更に、続けて胸部に渾身の蹴りを叩き込む。
次元兵装が効かなくとも、直に殴る事ならばできる。
「ぐおおおおっ!!」
エルヴズユンデが左腕の爪から放たれるレーザーを刀身として展開する。
「はあああああああああああああああああああああああああああーっ!!!!」
そして、渾身の一閃が、インフィナイトの胸部の鎧を破壊した。
「む…これは…!!」
エルヴズユンデの左腕のレーザーの放つ光の色が、黒ずんだ紅へと変化している。
「はぁ…はぁ…本来、あなたの相手は…この私です…背を向ける事など…許しません!!」
「フ、フフ…流石の力だな…」
インフィナイトが、ニヤリと笑った。
直後、凄まじい爆発が発生し、全ては白に包まれた…。
そして、白の彼方から、インフィナイトの声が響く。
「どうやら、今日はここまでのようだ!また会おうぞ、ギルティア=ループリング、そしてルークよ!!」
爆発が晴れると、そこにはボロボロのエルヴズユンデと、ルークしかいなかった…。
そして、ギルティアの力で、周囲には被害が及んではいない。
「…無事か!お嬢ちゃん!!」
アークトゥルースが、凄まじい勢いで合流する。
「…ええ、何とか無事です」
ギルティアの言葉に、シリウスは安堵のため息を漏らす。
「しかし…凄まじい勢いで突っ込んで行ったのは、ルーク、お主だったのか…」
「うむ、何とか、間に合って良かった。彼の本拠地に行き、我は彼の目的を知った。
そして、貴公らに彼が攻撃を仕掛けようとした、だから、我も急いで後を追ったのだ」
その言葉に、ギルティアが頷く。
「…そう、でしたか…」
正直、力が足りなかった。
あのまま、ルークが助けに来ていなければ、どうなっていた事か。
ギルティアは、その不安を押し殺すように、言葉を続ける。
「では、説明していただけないでしょうか…インフィナイトの正体と、その目的を」
「もちろんだ、その為に、我はここに戻ってきたのだからな…」
ルークは、そう言って頷いた…。
続く




