Act.49 暖かな場所で
Act.49 暖かな場所で
ギルティアは、移転したツタンカー麺に辿り着いていた。
「…これは…」
移転したファラオ店長の店は、以前より店半分程大きくなっていた。
「どうやら、先程の、繁盛の為移転したというのは本当だったらしいですね…」
ギルティアは静かに呟き、苦笑する。
「店長は…奥ですか」
店の奥のほうに明かりがついている、やはり仕込み中らしい。
「…ファラオ店長、いますか?」
ギルティアが、声をかけて中に入る。
「その声…嬢ちゃんか?」
やはり、店の奥の方からファラオ店長の返答が来る。
「ええ、例の大量に増えた異形の事で再びここを訪れる事になりました。
…また、例の特殊な異形に関する新たな情報が手に入りました。
…この方角の境界空間に、その元凶が存在する可能性があります」
「…成る程、それを考えればここであの特殊な異形と二度も交戦した事も頷けるな」
店内奥の厨房で、相変わらずのファラオ店長が作業を続行していた。
「ともあれ、移転おめでとうございます」
「ああ、客があまりにも多すぎて前の店では対応できなくなってな…」
ファラオ店長が、そう言って笑う。
「しかし、相変わらず一人で店を?」
「…一応、昼間は店員を雇っている。
もっとも、重要な部分は相変わらず俺がやっているがな。
それより、特殊な異形に関しての新たな情報、と言うのは?」
ギルティアは、先日、倒した筈のデストヴァールと交戦した事、
その後のシリウスのラーゼルとの交戦、更にその後に発生した最高位異形との交戦、
そして、『インフィナイト』の事を話した…。
「成る程な…創世者とは、確かに穏やかじゃない事態だ」
「…それと…」
ギルティアが、この宇宙にたどり着いてから今までの経緯を話した。
「そいつぁ…迷惑をかけちまったな」
「…いえ、おかげで人的被害がこれ以上出るのを食い止める事が出来ました。
保護、という形になりましたので、今後どうするかをここで相談したいのですが、よろしいでしょうか?」
ギルティアが、ファラオ店長に頭を下げる。
「ああ、開店にはまだまだ時間もあるし、好きに使ってくれ」
ファラオ店長は、そう言って作業を続けた…。
「さて…では、彼らが来るまで私も少し休みますか…」
そう言って、ギルティアは客席のテーブルに突っ伏して眠り始めた…。
数時間後、冬川と矢作警部が到着すると、ギルティアはまだ眠っていた。
ファラオ店長は、二人を出迎えると、仕込みがあるからと、また奥に戻って行く。
少しすると、気配を感じたギルティアが目を覚ました。
「…ん…私とした事が、熟睡してしまっていましたか…お待たせしてしまいましたか?」
「いや、俺達が来てから数分待たずに目を覚ましたぞ」
「それは良かった…」
そう言って、ギルティアが苦笑する。
「さて…事情はここの店長にも話しておきました。
今後、私はどうすればいいのでしょうか?具体的に説明をお願いします」
その言葉に、矢萩警部が頷き、言葉を紡ぐ。
「ギルティアさんがこの辺の異形を大方片付けるまで、保護の名目で冬川の家に滞在して貰う」
「え?だ、大丈夫なのですか?」
「ああ、綾子ちゃんにも許可は取ってある。
そして、言った通りギルティアさんの行動に制約はつけない。
護衛として俺か冬川のどっちかがついていく事にはなるだろうがな」
本来はファラオ店長の元に滞在する予定だったが、そういう事ならば、と、ギルティアは頷く。
「…了解です」
「それと、ギルティアさんの異形討伐の際には、俺達も同行する」
「…それは…!」
ギルティアの言葉を、矢萩警部が遮る。
「危険は承知だ。だが、真実を知ったからには、市民を守る警察として、戦う義務という奴がある」
「…しかし、これは私の役割で…!」
「ギルティアさんはギルティアさんで役割を果たしてくれれば良い。
我々はそれに出来るだけ協力する、それだけだ。
何、決して無理はしない。危険になったらすぐに逃げるさ…」
その言葉に、ギルティアが渋々頷く。
「…分かりました…しかし、安全の保証はできませんよ?」
「そんな保証、元々俺達警察にあると思うか?」
「そういう事ですよ、ある程度の覚悟は俺にもありますから。
それに、無茶をして綾子に心配をかける訳にも行きませんから、危険になったらすぐ逃げますよ」
二人の言葉に、ギルティアは苦笑する。
成る程、確かに警察自体、危険と隣り合わせの仕事だ。
そして、もしこの二人が同行するというのなら、自分は今まで以上に全力で戦い、可能な限り彼らの手を煩わせないようにすれば良い。
「…分かりました…ファラオ店長!聞いていましたか?」
ギルティアが、店の奥の方に声をかける。
「ああ、ちゃんと聞いていた。こちらの方面は俺が周っているから、嬢ちゃんは元々のツタンカー麺の頃の巡回場所を頼むぜ。
流石にあの数、俺一人だと一晩じゃ周り切れず、被害が出たが、嬢ちゃんも加わるならこれ以上の被害は無いだろう」
「ええ、お互い頑張りましょう…さて、では、冬川刑事、矢萩警部、行きましょうか?」
ギルティアが椅子から立ち上がる。
「それじゃ、俺の車に乗って下さい」
「分かりました…ファラオ店長、くれぐれも気をつけて!
それと、ツタンカー麺、これからも繁盛すると良いですね!」
「ああ!ありがとうよ!またな、嬢ちゃん!」
ファラオ店長が、店の奥から顔だけ出して、手を振る。
ギルティアも、それに会釈で答え、冬川の自家用車に乗り込む。
思えば、車に乗るのはどれだけぶりだろうか。
「ん?何かやたらときょろきょろしてるが…」
矢作警部が尋ねる。
「ええ、私が車に乗る事など、滅多にありませんから」
「まさか、とは思うが…異形と戦った場所からここまで、徒歩で来たのか…!?」
矢作警部が、もしや、と尋ねる。
「…ええ、生身の私の移動方法は、徒歩か、あるいは人に見られないように空中を移動する事ですから、
車などの移動手段を使用する事は滅多に無いのです」
それ以外の移動手段といえば、機動兵器による移動くらいだ。
「…凄いですね、それは…」
冬川が思わず呟く。
「実際、翼を加速装置代わりに使った移動であれば、車よりも速いですしね」
ギルティアは、そう言って笑った。
そこから、鍵の能力についてのやり取りをしながら、目的地まで車は移動を続ける。
そして、三十分ほど経過した頃、車が止まる。
「つきましたよー」
冬川の言葉と同時に、ギルティアと矢作警部が車を降りる。
車庫付きの大きな一軒家だった。
「良い家ですね」
ギルティアが言う。
「ははは、最近建てたばかりの新築なんですよー!」
「…夫婦水入らずを邪魔したようで申し訳ありません」
「いやいや、賑やかになって嬉しいっスよ!」
冬川は、笑顔でそう言った。
「…それなら良いのですけどね」
ギルティアが苦笑しながら答えた。
玄関の戸を開けると、綾子が出迎える。
「待ってたわ!さ、入って入って!」
「はい、ではお言葉に甘えて…お邪魔します」
ギルティアが頭を下げ、中に入る。
「子供の事を考えて、子供の分の部屋も作ってあるのよ!」
綾子が、家の中を案内しながら嬉しそうに説明してくれる。
「まだ空き部屋なので、遠慮せず使ってくださいな」
案内されたのは、その子供部屋用に作られた部屋だった。
まだ、家具なども置かれていない。
「成る程、部屋なら空いているといったが、子供部屋が空いてたのか…丁度良かった」
矢作警部が、そう言って笑う。
「ええ、しかし子供部屋と言う事は、丁寧に使わないといけませんね…。
一週間とはいえ、ここは綾子さんと冬川刑事の子供の為の部屋…本来、私なんかがいて良い場所ではありませんから」
ギルティアは、そう言って笑った。
「気にしなくて良いっスよ、何せ俺の命の恩人ですしね」
「いえいえ、私にとってそれは当たり前の事です…だから、心して使わせて頂きます」
そう言って、ギルティアは深々と頭を下げた。
「…さて」
ギルティアが、話題を切り替える。
「…昼の間は異形の動きは制限されます。矢作警部と冬川刑事は、普段どおり仕事をこなして頂いて構いませんよ」
「ああ、それはそうなんだが、報告書を仕上げる以上、信憑性を持たせる為に、明日、君からも『事情を聞かせて』もらわなけりゃならない。
…うまく辻褄を合わせてくれよ?」
その言葉に、ギルティアが笑顔で頷く。
「ええ、そこはお任せください」
「ちょっと待って」
突然、綾子が会話を遮る。
「綾子ちゃん、何だ?」
「ギルティアちゃんの格好、学生にしては落ち着きすぎてると思うんだけど…」
「…うーん…そう、でしょうか…?」
綾子の言葉に、ギルティアが、今の自分の服装を確認する。
今は、白のワンピースに白の上着を着用している。
確かに、近代の年頃の娘と少し感性が異なる、いや、少なくとも普通の学校に通う少女の服装傾向とは異なる。
「まぁ、確かに、見た目より年上に見えても仕方ない、とは思うな…」
「で、さっきカラオケで聞いた話から、せめて制服で行けば、違和感無いかなぁ、と思って」
「…成る程…」
ギルティアが、どことなく不服そうに、ではあるが頷く。
偽りとはいえ、情報に信憑性を持たせておけば、活動もしやすい。
必要以上に人間と接触をしてこなかったので、今まで必要には思わなかったが、こういう状況では、これ以上役立つ服は無いだろう。
思えば、冠婚葬祭の際は取り敢えず制服を着ておけば間違いは無い、という情報もある。
「分かりました。では、偽造の学生証他、必要な根回しをしておきます…事情聴取はその後で構いませんね?」
「ああ、分かった、なら、明日の午後一時に迎えに行く」
その言葉に、ギルティアが頷く。
「了解です」
「よし、それじゃ俺も家に帰って寝るか…」
「了解です、では送らせてもらいますよ」
車庫に止めてあった車に、矢作警部と冬川が乗り込む。
「矢作警部、それでは、また後で!」
ギルティアが会釈する。
「ああ、また後でな」
矢作警部は、それに敬礼で応えた…。
残ったのは綾子とギルティアだった。
「…さて、では私はもう少し休ませて頂きますよ」
「ええ、布団は貸した部屋の隣の部屋の押入れに入ってるから、適当に使っちゃって良いわよ」
「了解です」
ギルティアは、布団を準備して、その中に入る。
外は明るくなりはじめたばかりだ、まだしばらく眠る事は出来るだろう。
ギルティアの視界には、部屋の天井だけが映る。
今はまだ、何もない部屋。
しかし、きっと少し時が過ぎれば、この場所には、冬川と綾子の子供が寝ている事になる。
冬川と綾子の幸せそうな顔を見れば、きっと、その生まれて来るであろう子供は、本当に幸せな、温かな時間を過ごす事が出来るであろう事は、容易に想像できた。
「…ふふ…」
ギルティアは、静かに、そして寂しげに笑った…。
「何としても、守り抜かなければなりませんね…」
ギルティアは、そう呟き、眠りについた…。
数時間の睡眠の後、ギルティアは制服を調達して、綾子の部屋を借りて着用してみていた。
「…悪くありません」
部屋に置かれていた鏡の前で、軽く一回転する。
「…ふふ」
思えば、自身は否定していたが、ギルティアはいつも、町でそれを羨ましそうに見ていた。
その表情からも、隠しきれない嬉しさが見える…本人は抑えているつもりなのだろうが。
「似合ってるじゃない!」
突然の声に振り向く。綾子だった。
「うん、これなら、年相応に見えるわ」
「…ありがとうございます」
「取り敢えず、昼食できたけど、食べる?」
その言葉に、ギルティアが時計を確認する。
十二時だ。約束の時間まであと一時間か。
「はい」
ギルティアは、それに頷いた。
居間で、護衛のために待機していた冬川と三人で昼食を食べる。
「……」
「……」
「……」
黙々と食事が進む。
「…あの、さあ…」
間の空気に耐えられなくなった綾子が、会話を切り出す。
「はい?」
「ギルティアちゃん、何か好きな食べ物とか、あるの?」
「ええ、あちこちの世界、宇宙を旅しながら、ラーメンの食べ歩きをしています」
その言葉に、綾子が思わず笑う。
「ラーメン…思いもよらず、普通ね…」
その言葉に、ギルティアが苦笑して尋ねる。
「それ、どういう意味ですか?」
「ギルティアちゃんを見てて、第一印象が『どこかの国のお姫様みたい』だったから…まさかラーメンが好物とは、流石に思わなかったわ」
その言葉に、冬川が賛同する。
「あー、確かに言われてみれば。最近の普通の娘よりかなり品が良いッスからね…」
「…私自身は普通に振舞っているだけなのですが…」
以前ロートベルグで宮殿を貰った時、ルークからも、こういう場所が似合うと言われた。
しかし、ギルティア自身に、そのような自覚はない。
「…そう、見えますか?」
「第一印象もそうだし、立ち振る舞いとかの節々からも、何と言うか、気品、とも言えるものが見えるのよね」
「…そうですか…うーん、ここは喜ぶべき所なのでしょうか…?」
そうこう会話しているうちに、食事が終わる。
「…さて、そろそろ時間ですね」
「…うーん…なんか、足りないのよね…」
ギルティアをじっと見ていた綾子が、そう呟き、何か思い立ったように自分の部屋に駆け出す。
「?」
数分後、綾子が持ってきたのは、鞄だった。
「はい」
「…これは?」
ギルティアにも、普段物を持ち歩いている鞄はある。
「だって、ギルティアちゃんの鞄、その服とぜんぜん合わないんですもの」
「…!!!!」
それに関しては確かに、とギルティアは思う。
そして、それと同時に、年齢より上に見える、と言われた原因も理解できた。
バッグも持ってはいるが、普段使っているのはアタッシュケース然としたものだ。
それに、バッグは、どちらかと言うと学生と言うよりもは、もっと年上の女性が使うようなタイプのものだ。
成る程、普段着ている衣服とそのバッグとが違和感が無かった、それを考えれば、見た目より年上に見られていた事も理解できる。
「これなら合うでしょ?あげる」
「確かに…ありがとうございます」
ギルティアが、バッグの中に入れてあった財布と日記、その他色々を鞄に移動する。
「…これで、良し、と」
外に車が止まる音がする。
「…迎えが来たようですね。それでは、行ってきます!」
「それじゃ行ってくるよ、綾子!」
「ええ、行ってらっしゃい!」
そう言って、綾子と冬川が抱き合う。
「…ふふ…お熱いようで、何よりです」
それを尻目に、ギルティアは先に玄関を出る。
玄関を出ると、やはり矢作警部だった。
どうやら、覆面パトカーらしい。
ギルティアが後ろに乗り込む。
「待たせたな、ギルティアさん」
「いえいえ、丁度昼食を済ませた所です」
ギルティアが笑顔で答える。
「…しっかしまぁ…こうして見ると、ただ品が良いだけで、普通の年頃の娘と変わらないよなぁ…。
昨日の戦いが嘘みたいに思えてしょうがねえ…」
「そうっスねぇ…」
唯一、戦いの証拠と言えるのは、矢作警部が腕に受けた傷だけだった…。
「…まぁ、人間ではない私はともかく、普通、旅人は世界に紛れています。
ただ見ただけでは、見分けがつかないと思いますよ」
「まあ、昨日のギルティアさんの説明で、それは分かってるんだがな…」
「…ふふ」
ギルティアは、落ち着かない様子だ。
「…聞くが、もしかしてギルティアさんは、普通の年頃の少女として暮らした事が、本当に無いのか?」
矢作警部が尋ねる。ギルティアのその行動が、嬉しさから来ている事に気付いたからだった。
普通の少女と立ち振る舞いが全く異なる事も、それならば理解できる。
「ええ、私が戦いから離れた事はありません」
ギルティアが、そう答え、寂しげに笑った。
「…力を持つ誰かが、必ずやらねばならない事ですから。
他の誰かがやるよりもは、私がやった方が良い…元々、私はその為に生まれたのですから」
「…ギルティアさん…」
矢作警部は思った。
ギルティアは自分でも気付いていないのだろう、そして、気付きたくないのだろう、と。
ギルティア自身が、人間に羨望を抱いている事に。
そして、その羨望が間違ったものである事を知っているから、それをどこまでも拒絶して戦い続けられるのだろう、と。
だから、矢作警部はそれ以上追求するのを止めた…。
「…大変だったんだな」
「私は、大変だなどと思ってはいませんが、ね…」
そう言って、また、ギルティアは笑った…。
暫く話している内に、警察署に到着する。
警察署で、ギルティアは上手く話を合わせて事情を説明した。
数時間後、事情聴取が終わり、報告書の内容に信憑性を持たせる事に成功する。
「…さて、という訳で、これで、俺達がギルティアさんを保護するという事への大義名分が立つ、と言うわけだ」
後処理を冬川が引き受け、矢作警部がギルティアを車で送る。
「ええ…上手く辻褄を合わせる事が出来たようで、何よりです」
と、矢作警部が、ふと気付き、言葉を紡ぐ。
「…他人の前では戸籍上と本名、どちらの名前で呼べばいいんだ?」
「あだ名、という事で本名で誤魔化す事も出来ますので、どちらでも良いのですが…大事を取って星海の方でお願いします」
「はは、分かった、星海さん」
途中で、下校中の学生を何組も見かけるが、不思議と、いつものような感情は無い。
やはり、妙に気分が良い。ギルティアは、それを感じていた…。
その晩、ギルティアは、二人を連れて夜の街を歩いていた。
「…次は、この場所です」
再び、人気の無い路地裏に進入する。
「ところで、気になったんだが、多くの人間を食うなら、夜にしかもこんな場所で活動するよりも、
昼間に人通りの多い所で好き勝手喰い散らかしたほうが早いんじゃないか?」
矢作警部の言葉に、冬川が頷く。
「そういえば確かに。もし欲望の塊なら、手っ取り早くそっちを選択して、もっと表沙汰になってもおかしくないッスね」
二人の言葉に、ギルティアが答える。
「…確かに、効率だけを考えればそうです。
しかし、そうなれば逆に私のような存在にも狙われやすくなり、根絶も早くなります。
それに、強大な力を持った異形でなければ、矢作警部や冬川刑事でも、ある程度は退ける事が出来ます。
脳天に銃弾を叩き込まれて生きていられる異形は少ないですから。
より確実に捕食するには、弱く、数が少ない相手を集団で狙うほうが良い。
ですから、一言で言えば『群れからはぐれた者を狙っている』という事です。
…異形も元々は人間、欲望に支配されていても、それくらいの知能は持っていますから。
同じ理由で、銃刀法があって武器の所持が禁止されている場所の方が、異形の活動は活発です」
「…成る程な」
矢萩警部が頷く。
「…つまり、その服を着てきたのもその為なのか?」
まだギルティアは制服を着ていた。
「ええ、少し気になる事がありましたので。
お二人が言っておられたように、もし私が普通の少女に見られるのであれば、
先程言った法則により、普段以上に遭遇率を上げる事が出来るかもしれない、と思いましてね」
ギルティアが、そう言って笑う。
「…来るとすれば、そろそろ、です」
ギルティアが呟いた、その直後だった…。
空間が閉鎖され、ギルティアの目の前に、凄まじい量の異形が姿を現す。
「…来ます!」
ギルティアが、剣と爪を構え、突進する。
すれ違いざまの一閃で、前にいた異形が、真っ二つになる。
更に、跳躍し、空中からレーザーを雨のように撃ちまくる。
頭上からの死の雨に、その範囲内にいた異形が、全滅する。
「我々も行くぞ!」
「了解です、警部!」
矢作警部と冬川が、銃を構える。
銃弾が、異形の脳天を的確に撃ち抜き、一匹一匹だが、確実に異形の数を減らしていく。
ギルティアが、更に異形の群れの中心に向けて踏み込む。
「はあああああああああああっ!!」
左腕のレーザーを刀身として固定して、乱舞、更に乱舞。
突進してくる異形が、次々にバラバラに吹き飛ぶ。
「…まさに、圧倒的ッスね…」
銃を撃ちながら、冬川が呟く。
「ああ、本当に、我々が戦わなくても、そう、ただ見ているだけでも本当に問題ないようだ…」
矢萩警部が、そう応える。
そんな二人の会話をよそに、ギルティアが最後の一匹を仕留める。
「…願わくば、汝らの罪が祓われん事を」
ギルティアが呟き、二人の元へ戻る。
「流石、だな…本当に我々の援護は必要ないようだ」
「…本来、私は一人で戦う為に生まれた存在ですから」
ギルティアは、笑顔で言った。
「この程度の相手ならば、むしろ一人の方が早いくらいですよ」
ギルティアは、一人で戦う事に慣れている。
元々、誰の助けも借りずに戦ってきた。
そして、本来の力を取り戻す事が出来れば、異形討伐程度で誰かの力を借りる必要はないのだ。
「…さて、次の出現予想地点に移動です」
「「了解!」」
ギルティアの言葉に、思わず二人が敬礼をしてしまう。
「…ははは…」
ギルティアは、その光景に思わず苦笑した。
「さぁ、参りましょう…!」
ギルティアが、歩き出す。
その後ろ姿を見ながら、矢萩警部が呟く。
「…ああやって、どれだけ長い間、一人で旅を続けてきたのだろうな、彼女は…」
ギルティア自身も、強力な仲間達と離れて行動する事で、一人で戦う感覚を取り戻していた。
そう、前に立ち、たった一人で全てを守って戦ってきた頃の感覚を…。
矢萩警部は、その歩く後ろ姿から、その孤独を感じ取っていた。
「…我々も急がねば置いていかれてしまうぞ、冬川よ」
矢萩警部が歩き出す。
「そうッスね…」
冬川が苦笑し、それに続いた…。
続く




