表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地平の旅人  作者: 白翼冥竜
41/101

Act.41 目的地は『真実』


   Act.41 目的地は『真実』


 シリウスがギルティアに合流し、次の日の朝を迎える。

「…ん…」

 ギルティアが目を覚ますと、まだ、外は明るくなっていなかった。

 ギルティアがベッドから上半身を起こし、ひとしきり伸びをする。

「…んーっ…」

 思えば、このベッドで眠るのも今日が最後か。

 ギルティアが、ベッドから起き上がり、豪華な窓のカーテンを開ける。

 地平線の彼方が微かに明るくなってきているだけで、まだ朝、というよりは夜、と言って良いだろう。

「…もう一眠り、しましょうか」

 ギルティアは、再びベッドに入った。

 たまには、こういうのも悪くはない。

 …そう思ってしまう自分の心も、本来なら不謹慎この上ない。

 しかし、もし自分がそれに相応しく生きられているというのなら、この程度ならば、許してあげても良いのかもしれない。

 今日からは、またきっといつもの旅に戻る。

 戦いになったら、今までよりも、更に更に頑張って戦おう。

 本来なら得られる筈のないものすらも、得られてしまったのだから。

 ギルティアは、静かにそう頷くと、再び眠りに就いた…。


 そして、その日の朝、ギルティア達は首都の入り口にいた…。

 エーリッヒと幾人かの部下が、見送りにきている。

「…それでは、皆さん、数日間ですが、夢のような日々をありがとうございました」

「またいつでもお立ち寄りください。国民一同、いつまでもお待ちしております!総員、敬礼!!」

 エーリッヒの言葉で、部下が一斉に敬礼する。

「この世界の未来は皆さんの双肩にかかっています…願わくば、幸せな未来あらん事を」

 ギルティアは笑顔でそう言うと、エルヴズユンデに乗り込んだ。

「…さて、行きましょうか」

「アークトゥルース、正常に起動を完了、いつでもいけるぞ」

「了解です…では、行きましょう!」

 エルヴズユンデと、アークトゥルースが飛び立つ。

 エーリッヒと部下達は、敬礼しながら、それを見送った…。

「ギルティア様…どうか、つつがない旅を…」

 エーリッヒは、空の彼方へと消えていく二筋の光をしっかりと見据えながら、そう呟いた…。


 エルヴズユンデとアークトゥルースが境界空間に出る。

「…で?方向性、というのは昨日聞いたが、お嬢ちゃんのことだ、もう具体的に考えているのだろう?」

 シリウスの問いに、ギルティアは頷き、アークトゥルースに航路を転送する。

「昨日の、ラーゼルが飛来したルートを元に、調査を行う世界の範囲を決定しました」

「成る程、まずはラーゼルがどこから来たのかを確かめるのだな?」

「ええ、今回の目的地は、具体的にはまだ存在しません。その目的地を探すのが目的のようなものですしね」

 ギルティアは、そう言って笑った。

「それに、エルヴズユンデもまだ完全ではありません…旅の途中で完全に復活させなくては」

「例の機械と融合した異形を倒していれば、あっという間なのではないか?」

 ルークが尋ねる。

「いえ…あれは普通の異形を巨大な機械と融合させたもの…。

 大きいだけで、あれから取れる実際の根源的エネルギーは、普通の異形一体分と殆ど変りません」

「…そうなのか」

「ええ…しかし、もう一種類の、核を破壊しないと何度も再生する異形の方は、かなり多くの根源的エネルギーを保持しています。

 …それ相応の損害を被る可能性もありますが、ね」

「まぁ、な」

 ギルティアの肩で、ルークが頷く。

「面倒な事を言わなければ、立ち塞がる敵を倒して、その先を調査する、という事なのだろう?

 ついでに、お嬢ちゃんの機体を、倒した敵から奪ったエネルギーで完全復活させる、と」

 シリウスが纏める。

「ええ、その通りです」

「なら、善は急げだ、行こうぞ!」

 シリウスが、そう言って笑う。

「ふふ…シリウスは、相変わらずですね…なら、そろそろ行きましょうか…!」

 二機の機動兵器は、目的の方向の手近な世界に向けて、加速を始めた…。


 一方その頃…。

「どうやら、彼女はこちらに向かって旅の方向を定めたらしいな…」

 黒い影が、呟く。

「で?相変わらず実験を続けてるようだが、いつになったらその実験は終わるんだ?もう、待ちくたびれちまったぜ…」

 黒い影の横で、銀色の、異形と思しき者が影に向かって言う。

「エルグリオか…暇なのか?」

「おいおい、当たり前の事を言うなよ。

 俺は力が欲しいんだ、こんな無駄な時間を待たされるのはごめんだぜ?」

 エルグリオと呼ばれた銀色の異形がそう言って苦笑する。

「なら、彼女に挑んでみるか?

 本調子ではないとはいえ、少なくとも、彼女ほど手応えのある相手はいないと思うが」

「…ほう、悪くねえ…」

 エルグリオが、ニヤリと笑う。

「ただし、殺すなよ。彼女は今後、大事な実験材料になり得る。

 …特に、他の鍵と違って彼女には替えが無い。事はくれぐれも慎重にな」

「分かってるって!」

 エルグリオが頷く。

「分かっているようには、到底思えんのだがな…」

「そんなに信頼できないか?俺は」

 エルグリオは、そう言って苦笑した。

「いや、念を押しただけだ。汝の強さには、その力を制御する、と言う事も含まれている。

 …それは、余も分かっているのだがな…汝の軽い言葉を聞くと、ついな」

「…まぁ、確かに、あんまり信頼できないような行動ばっかしてるのは認めるがな!はっはっは!!」

 エルグリオが、そう言って部屋の外に出て行った。

「…やれやれ、エルグリオの戦闘狂にも、困ったものです」

 エルグリオが出て行った部屋の反対側から、白い異形が入ってくる。

「グランディオスか…聞いていたのだろう?」

 影の言葉に、グランディオスと呼ばれた異形が頷く。

「…無礼ながら、立ち聞きさせて頂きました」

「そうだと思ったぞ。入ってくるタイミングが良すぎたからな。

 だが、聞いていたならば話は早い…奴がやり過ぎないか、監視を頼む」

「…御意に」

「そして、彼女に、我が友、次元竜ルークが同行している事だろう…。

 彼に、『我が実験に汝を巻き込んでしまって、本当に申し訳ない』と伝えておいてくれ」

「…承知しました」

「頼んだぞ…全ては、過ちを繰り返さぬ為に」

 その言葉に、グランディオスは黙って頷き、エルグリオと同じ出口から出て行った…。

「…フ、相変わらず自分の信念に素直な奴よ…」

 一人残った影は、そう呟いた…。


続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ