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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.31 一時の休息の影で


   Act.31 一時の休息の影で


 王者決定戦の次の日、ギルティアはアルフレッド宅の屋上で、ファラオ店長が今いる宇宙へと飛び立つルークの見送りをしていた。

「私も、エルヴズユンデが境界空間に突入可能になり次第、すぐ合流します」

「了解した」

 ルークが頷く。

「見張り、本当にお世話になりました…」

 アルフレッドが、ルークに頭を下げる。

「いや、こちらこそ、役に立てたようで、何よりだ」

 ルークが、笑顔でそれに答える。

「さて…そろそろ、行くとしようか…また会おう、ギルティア」

「ええ…ファラオ店長によろしく伝えておいてください」

「ああ」

 ルークが、飛び立つ。

「では、また会おう、皆!!」

 そして、ルークは空間の穴に突入していった…。


「…さて、施設の整備の事ですが、どれくらいかかりますか?」

 ギルティアが尋ねる。

「ええ、施設の整備に三日、エルヴズユンデの修理に二日…と言った所ですか…」

 アルフレッドの答えに、ギルティアが頷く。

「了解しました…私に何か出来る事はありますか?」

「いえ、ここまでで十分以上に修理費は支払っていただけましたのでね。

 …後は、今までの戦いの疲れをゆっくりと癒してください。

 また、これからもずっと、戦うのでしょう?」

「…分かりました」

 ギルティアが、屋上から下の階に降りる。

 既に、アルフレッド宅の後ろの工場は、工事が始まっていた。

 ランも、どうやらその工事を機体で手伝っているようだ。

「…さて、私はどうしましょう…」

 ギルティアが、再び外に出る。

「…ふふ」

 ギルティアが、静かに笑った。

 以前、シリウスが、今度遊びに来いと言っていた事を思い出したのだ。

「…行きますか」

 ギルティアは、アンファース・インダストリアルへと歩き出した…。


 アンファース・インダストリアルの入り口に、昨日シリウスが自転車で突っ込んだ跡がしっかりと残っている。

「…何でしょう?これ…」

 ギルティアは首を傾げる。

 しかし、取り敢えず、構わずにアンファース・インダストリアルの扉を叩いた…。

 社内に入ると、すぐに社長室に案内される。

「おお、お嬢ちゃんか!」

 シリウスが、ギルティアを笑顔で出迎えた。

「シリウス…アンファースの修理は大丈夫なのですか?」

「うむ、昨日のラーゼルの暴走のおかげで、ラーゼル重工自体が解体によって縮小されることになったらしいぞ」

 その言葉に、ギルティアは頷く。

「おお、そうですか…!」

「それは、我が社にとっても大きなプラスだ。

 その功績のおかげか、何か、社員達に今日はゆっくりしていてくれ、と言われてな」

 シリウスが、そう言って笑い、続ける。

「…で、規模を縮小されたラーゼル重工の、新しい社長として名乗り出たのが、何と、藤木らしい」

 その言葉に、ギルティアは笑う。

「そうですか、藤木さんが…彼なら、あの会社を良い方向へと導いてくれそうですね」

「うむ、そうあって欲しいものだ。

 それと、フレアド工業が、今回、ラーゼル重工から再び独立して開業するらしい。

 そう、フレアドイリーガル、レディオスの所属していた企業だ」

「それは…素晴らしい!つまり、フレアドイリーガルがようやく枷から解き放たれるのですね?」

 ギルティアが笑顔で尋ねる。

「そういう事だ。これからは、最初から全力になる…結構な事だ…!

 ラーゼルの横槍がなくなったおかげで、今回ラーゼルから独立したり、細々と生き延びていた企業達が、次々とフルメタルコロッセオへの参加を表明している。

 …昔の活気が、戻ってきたぞ…!」

 シリウスがニヤリと笑う。

「…これも、お嬢ちゃんがフルメタルコロッセオを引っ掻き回してくれたおかげだ。

 …感謝してもしきれぬ…本当に、ありがとう」

「いえ、私は私の使命の為に戦っただけですよ…」

 ギルティアが、笑顔で答える。

「流石お嬢ちゃんだ…そう答えると思ったぞ。

 …おっと、それと、一つ気になる事があるのだが…ラーゼルの遺体は、あの機体の中からも発見されていないらしい」

「…それは、本当ですか?」

「うむ」

 シリウスが、真剣な表情で頷く。

「…エルヴズユンデの修理を急がねばなりませんか…」

「まぁ、もっとも、今の奴は会社という後ろ盾も失っておるのだ…たとえ生きていたとて、結局、何の力も無い」

「それも、そうですね…」

 ギルティアが頷いた。

「そう言えば、異形とかいう輩の事、詳しくは聞いていなかったが…もし良ければ、お主の旅の話をもう少し詳しく聞かせてはくれまいか?」

「そういうと思っていました…ええ、私も、そのつもりで来たのです」

 ギルティアの答えに、シリウスの眼がキラキラと輝く。

「おお、それはありがたい!!」

 そして、シリウスが、社長室の棚の中から酒瓶を取り出す。

「まぁ、チビチビ飲みながら話をするとしよう」

「ええ…では、まずは私の故郷の事から…」

 ギルティアが話を始めると、シリウスはそれを興味深そうに聞いている。

 こうして、ギルティアは、自分の旅の始まりから、今に至る旅の話をした。

「興味深いな…成る程、異形というのは人間が変異したものか…道理で、性質が悪いわけだな…」

 シリウスが頷く。

「ええ、それに、色々な原因によって、今も異形はあちこちの世界に降り注いでいます」

「この世界にはおらんのか?」

「…集まりやすい宇宙、世界と集まりにくい宇宙、世界があります。

 この世界は、かなり集まりにくいです。

 もともとの宇宙群の構造的に集まりやすいか集まりにくいかと言う部分で私は判断していますが、

どうやら、それ以外の要因でも…異常に集まりやすい場所と集まりにくい場所が存在するようです。

 それに、原因は未だに不明ですが…この間、今までの異形とは全く異なる異形と遭遇し、辛うじてそれを撃破しました」

「うむ」

 シリウスが頷く。

「…先程説明してくれた、お嬢ちゃんが無理をして倒した異形の事だな?」

 ファラオ店長とルークとで戦った、かの異形の事である。

「…はい。核を破壊する事で辛うじて撃破する事が出来ましたが、

エルヴズユンデを先に修理する必要があったのは、あのような異形との戦いの際には、機動兵器が必須であると判断したからです」

「…聞きたいが、アンファースは、異形相手にどれだけ戦えるのだろうか?」

 シリウスが、唐突に尋ねる。

「そうですね…ただの大型の異形程度であれば、難なく撃破出来ると思いますよ。

 しかし、統括異形…その世界の異形を統括する強大な異形や、その『異なる異形』相手は…」

「そうか…やはり、世界は広いな…」

 シリウスは、そう言って笑った。

 そうこう、会話をしている内に、時間は既に夕方になっていた…。

「…さて、では私はこれで失礼します」

「うむ、面白い話を聞かせてくれたことに感謝する。

 …また、いつでも遊びに来てくれ」

 シリウスが、笑顔で手を振る。

「ええ、それでは、またお会いしましょう…!」

 ギルティアは、アルフレッド工業に戻った…。


 シリウスは、社長室に一人残った。

「ふむ…異形を相手に戦える装備というコンセプトで、新しい武器でも考えてみるとしようか…」

 そして、静かに言葉を続ける。

「…我が愛機アンファースも、新型の開発競争に、力負けを始めているしな…。

 そろそろ、潮時なのかも知れんな…まぁ、良い…今考えても始まらぬ事だ…」

 シリウスは、図面用紙を広げ、設計図を書き始めた…。


 そして、それから三日後、アルフレッド工業は、かつての爆破事件以前の姿を完全に取り戻していた。

「これで、ようやく修理を始める事が出来ます」

 アルフレッドが、笑顔で言う。

「おめでとうございます、よろしくお願いしますね」

「ふぅ…設備も整ったし、俺もオメガソルジャーをまた改造しようかな…」

 ランが、呟く。

「そう言えば、ランはフルメタルコロッセオに参戦しないのですか?」

「え?俺が?」

 ランが聞き返す。

「…ええ、先日の戦いぶりから考えても、十分上位を狙えますよ」

「そう、か?…ギル姉がまた別の宇宙に行ったら、アルフレッド工業から参戦する機体がいないのは寂しすぎるしな。

 …最強のメカニック…よし、軽く一歩、踏み出してみるか!!」

 ランが、笑顔で言い放つ。

「ええ、その意気です!!」

「あ、それならさ…」

「はい?」

「オメガソルジャーのAIに、フルメタルコロッセオで収集したギル姉の戦闘データを入れても良いか?」

 そう、オメガソルジャーの操縦システムを考えると、それをする事で一気に戦闘能力を増強する事が出来る。

「ええ、もちろん。私の戦いで手に入れたデータは、アルフレッド工業の所有物です」

「…ありがとう!」

 ランが、笑顔で頭を下げる。

「その代わり、エルヴズユンデの修理、頑張ってくださいね!」

「ああ、機械部分は完璧に修理してみせるよ!」

 ランが、そう言って工場の方へと駆け出していった…。

「おいおい、そう焦るな、ラン」

 アルフレッドが、駆け出したランに続く。

 それを微笑まし気に見届けると、ギルティアは屋上に上る。

「…私も、早く使命に復帰しなければ…」

 ギルティアは、静かに呟いた…。


 町外れのジャンク山に、あの男は潜伏していた…。

「このままで、終わらせるものか…あの忌々しき戦士達に、この恨みを…絶望と恐怖を、味わわせてくれる…!!

 …グレートラーゼルを超える力が…力があれば…!!」

 男の周囲には、グレートラーゼルの残骸が散乱している。

『…力を欲するか?』

 何処からか、声が聞こえる。

「…誰だ!?」

 男が周囲を見回す。

 そこには、まるで黒い影のような姿をした『何か』がいた。

『貴様は…全てを喰らい尽くす力を欲するか?』

 その問いに対して、男は答える。

「…良いだろう、貴様が誰であろうと構わん。

 その力とやら、もし本当に我が物と出来るのならば…悪魔にでも、化け物にでも…魂を売ろう!!」


『よろしい、ならば力を与えよう…全てを滅ぼすに足る、力を…!!』


 影は、そう言うと、姿を消した…。


ギルティア日記

…正直、私は焦りすぎているのかもしれません。

しかし、犠牲者が出る前に、事態を抑えなければ意味は無い。

一人でも、命は命、奪われた物は、戻ってはこないのですから。

…一刻も早く、異形討伐に戻らねば。


続く

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