Act.29 波乱の王者決定戦
Act.29 波乱の王者決定戦
いよいよ、王者決定戦当日が訪れた。
「…ファラオ店長からの連絡はどうなっていますか?」
出発前に、ギルティアが、アルフレッドに尋ねる。
「ええ、まだ大丈夫との事…しかし、だんだんと数は増えているようです」
「思った以上に早いようですね…ならば、私がチャンピオンの座に就く事が出来次第、ルークはあちらの増援に送った方が良さそうですね」
ギルティアは、静かに呟く。
王者決定戦の事も気に掛かってはいるが、ギルティアにとっては、使命が最優先事項だ。
異形の動向が把握できれば、後は心配する事は無い。
ただ、全力で戦う、それだけで良い。
「…いよいよ、です」
ギルティアが呟く。
「我々も、後から応援に行きます。ご武運を…!!」
「私は、私の持てる全力で戦うだけです…私が今までそうして来たように、ね」
ギルティアは、そう言ってエルヴズユンデの方へと歩き出した…。
一方、アンファース・インダストリアルでは、シリウスが、応援に行く準備をしていた。
「…アンファースの整備だが、いつもより念入りに頼む。
何か嫌な予感がする。お嬢ちゃんが負けるってのとは違う、嫌な予感が…な。
…ラーゼルが、このまま黙っているとも思えないしな」
シリウスは、部下にそう指示を出すと、自ら自転車をこいで、闘技場へと向かっていった…。
更に同じ時刻、ラーゼル重工、地下室には、巨大な機械が起動する音が響いていた。
「時は来た…処刑の、始まりだ…!!」
巨大な機械の動力が唸りを上げる。それはまるで、獣の咆哮のようだった…。
闘技場は、かつて無いほどの熱気に包まれていた。
「遂にこの日がやってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エルヴズユンデと、継ぎ接ぎだらけのフレアドイリーガルが、対峙している。
「…待っていた」
「…お待たせしました」
ギルティアとレディオスが、同時に言葉を紡ぐ。
そして、お互いがその言葉を聞いて、笑う。
「俺はただ、強い奴と戦いたいだけだ…もっと強くなる為にな。お前が誰でも構わない…俺を楽しませて欲しい」
「私が目指すのはその先にある物です…申し訳ありませんが、勝たせて頂きます」
「その先、か…フッ、面白い事を言う…」
レディオスが、そう言うと、ギルティアは笑って頷いた。
そのやり取りを遮るように、実況の男の台詞が続く。
「無敗で今まで勝ち上がってきた、美しく、そして圧倒的な戦闘能力を持つ乙女!
斬光の聖女ルギルナ=燐紅=御果!!
愛機エルヴィントも、場違いなほどの優美さの内に眠る、恐ろしい程の力を見せ付けてきた!!
今回の戦いでも、その美しい剣閃が見られるか!!」
歓声が、一際強くなる。
一方、ラーゼル重工の本社のビルを破壊して、『それ』は動き出した。
「さぁ…忌まわしき者達が集まっている、鋼鉄の闘技場に行こうぞ…!!」
目的地は、フルメタルコロッセオだ。
周囲の建物を踏み潰しながら、歩き出す。
「な、何て事をやってやがる、社長!!」
崩れたラーゼル重工本社の瓦礫を突き破り、ジェネラルZXが姿を現す。
「藤木か…」
「あんた、まさかフルメタルコロッセオにそいつで乗り込む気か!?」
藤木が叫ぶ。
「そうだ…忌まわしき輩は、あの場所で、大観衆の見守る中、公開処刑してくれる!!
そう…この私に刃向かう愚か者への、見せしめとしてな!!」
「そうかい…今までの荒事は会社を大きくする為の『仕事』として割り切ってきたが…」
ジェネラルZXが、大剣と榴弾砲を構える。
「あんたが『侵略』と『戦争』をする気なら、俺は社長の下では働きたくねェ!!」
「…阻むか、藤木よ…その機体で…!」
「ああ、そうさせて貰う!俺はあくまで『ラーゼル重工』の社員であって、ラーゼル社長!あんた自身の目的の為の駒じゃねェ!!」
爆発音が、響き渡った…。
歓声に乗って、実況の男は言葉を続ける。
「一方!対するは長い間王者として君臨してきた無敵の王者、強者との戦いのみを、ただひたすらに待ち望む戦士!
焔光の覇者レディオス=アイルレード!!機体は変わらずフレアドイリーガル!!
その継ぎ接ぎの奥に隠れた真の力は、まさに王者と呼ぶに相応しい戦闘能力を持っている!!
圧倒的な技量に裏打ちされたその強さが、今回も王者の座を護るのか!!」
「…全力で、行きます」
「ああ…そうでなくては面白くない」
「さぁ、王者決定戦、皆さんご一緒に!!」
見に来ていた大勢の観客も、一斉に叫んだ。
「GO!AHED!!」
その言葉と同時に、エルヴズユンデがフレアドイリーガルに斬りかかる。
「先手は貰いますよ!」
「ああ、構わん!」
エルヴズユンデが振り下ろした剣を、フレアドイリーガルは容易に回避した。
しかし、エルヴズユンデはそのまま左腕のクローをフレアドイリーガルに叩き込んだ。
フレアドイリーガルの胸部の継ぎ接ぎのアーマーが砕け散る。
「…っ!やるな!」
「私は、負ける訳には行かないのです…!」
そして、二機が離れる。
フレアドイリーガルが、腰に差した細身の剣を抜く。
「まずは、最大の枷である胸部のアーマーを破壊してくれた事に感謝しよう…次はこちらから行くぞ…!」
フレアドイリーガルの背中のブースターが咆哮を上げる。
「…速い!?しかし!!」
エルヴズユンデがその攻撃に合わせる。
「凄い…何て速い戦い…」
観客席で、リラが呟く。
「軽量、ブースター特化の機動戦闘型だからな…フレアドイリーガルは。
エルヴィントは割と重量級の方に分類されるが、それ以上に強力なブースターで動いておる。
…機動性はほぼ互角、といえるだろうな」
シリウスが説明を加える。
「…凄ぇ…俺達が、俺達がいじった機体が、あんな戦いをしているんだよ…!」
ランが、目を輝かせている。
「ああ…今回、お前は良く頑張ったぞ、ラン」
アルフレッドが、ランを見て目を細める。
「…ありがとう、アル爺!」
「ふふ、成る程、跡継ぎ候補、という訳か…」
シリウスが、アルフレッドとランのやり取りを温かく見守っていると、突如、携帯通信機が着信を知らせる。
…アンファース本社からだった。
「…何だ、今良い所であるぞ…何と!それは本当か…!?」
通信を聞いて、シリウスの顔色が変わる。
「…分かった、すぐ戻る。アンファースの出撃準備をしておけ…!
ラーゼルめ…この戦いの邪魔だけはさせぬぞ…!」
シリウスが通信を切り、席を立つ。
「シリウス社長?」
「…少々野暮用が出来た…少しばかり、本社に戻る」
そう言って、シリウスは駆け出した。
凄まじい勢いで、シリウスのこいだ自転車がアンファース本社に突っ込む。
「アンファース、出撃準備完了しております!」
部下の言葉にシリウスが、うむ、の一言で応え、乗り込む。
「…ラーゼルめ…あのような化け物を…!!」
アンファースが、起動する。
「フルメタルコロッセオ史上、最高の王者決定戦だ…邪魔をさせる訳には、行かぬ!!」
凄まじいスピードで、遠く響く爆発音の場所へと、飛び立った…。
その後、エルヴズユンデも、フレアドイリーガルも、相手に一太刀当てる事が出来ずに、何度も衝突を繰り返している。
「くうっ…流石チャンピオン…そう簡単に勝たせては貰えませんか…!」
「成る程…ヴルレオの雑魚とは違うな…!」
二機が、再び剣を構え、真正面から斬り込む。
「パワーならば…こちらが上です!!」
エルヴズユンデが、フレアドイリーガルを押し飛ばす。
「だが、その姿勢で、回避できるか!!」
フレアドイリーガルは、空中でそのまま姿勢を整えると、
再びエルヴズユンデに向け、剣を叩き込む。
「くっ…!!」
エルヴズユンデが、左腕の爪で、剣を受け止める。
「ほう…やはり、咄嗟の反応が上手いな…。
…面白い…これだ…俺は、この戦いを待っていたんだ!!」
レディオスが、そう言って笑う。
「ようやく、ようやくだ!楽しいぞ、楽しいぞルギルナ=燐紅=御果!!」
フレアドイリーガルの足から一丁のアサルトライフルがせり出し、それを左手に構える。
「ようやくだ…ようやく、俺が全力で戦える相手と出会う事が出来た!!
さぁ、この時間を、存分に楽しもうじゃないか…!!」
そして、アサルトライフルが、エルヴズユンデに向けて放たれる。
「くっ!」
再びエルヴズユンデがフレアドイリーガルを押し飛ばす。
銃弾は、フレアドイリーガルがバランスを崩したため、見当違いの方向へと飛んでいった。
「どうやら、喜んで頂けているようで、何よりです…!」
更に、エルヴズユンデが、押し飛ばされ、空中で姿勢を整えているフレアドイリーガルに追撃をかける。
「私としても、素晴らしい戦いが出来ている事…嬉しく思います…!!」
左腕のクローを、フレアドイリーガル目掛けて叩き込む。
フレアドイリーガルが、それを回避するが、回避しきれずに左肩のアーマーが抉り取られる。
「ええい!!」
フレアドイリーガルが、右肩のアーマーを剣で切り落とす。
いずれも、後からつけられたパーツだ。
フレアドイリーガルの本来の力が、更に大きく開放された、それだけだ。
「良いぞ!そうだ、そう来なくては…!!」
「しかし、私は負けるわけには行かない…全力で、打ち破るだけです…!!」
二人の叫びと、金属が激突する音が、闘技場を埋め尽くしていた…。
『それ』は、ジェネラルをものともせずに、フルメタルコロッセオへと進み続けていた。
『それ』が歩いた後には、ただ、瓦礫だけが残っていた…。
「くっ…流石に、化け物だ…!
まさか、俺たち社員に一切気付かれずにこんな物を作っていたとはな…」
藤木が、静かに続ける。
「…だが…」
ジェネラルが、再び榴弾砲を構える。
「…ここで、この程度で負けられるかよ!!」
『それ』に、榴弾砲が直撃し、凄まじい爆発が起こる。
「効かぬわ!所詮、指揮官用の高級量産機程度…虫けら同然!!
そうだ…フルメタルコロッセオの剣闘士など、我が前には全て虫けらぞ!!」
ラーゼルの高笑い。
しかし、それは、次の瞬間、高高度から凄まじい勢いで叩き込まれた剣閃が、装甲に激突する甲高い金属音に掻き消された。
「ラーゼル!お主の好きにはさせぬぞ!!」
「な、あの機体は…アンファース・インダストリアルの!?」
藤木が、その機体を見て、驚愕する。
「シリウス=アンファース…ク、クク…虫けらがほざきおる…。
そのポンコツもろとも、鉄屑へとかえてくれる!!」
「やれるものならば…やってみよ!!」
アンファースが、ショットガンと剣を構える。
「そこのラーゼル重工の機体!」
「俺か…!?」
藤木が応答する。
「お主も、ラーゼルを止めようとしてくれておるのだろう!?」
「ああ、そうだ…奴が今やろうとしているのは、
今までのような企業活動じゃねえ…侵略だ…!!」
「…儂も手を貸す!共に戦おうぞ!!」
「…ああ!」
ジェネラルと、アンファースが、二機同時に攻撃を仕掛けた…。
二機の戦いは、双方が全く譲らぬまま、何度も剣を交え続ける、全く互角の戦いになっていた。
「良いぞ…俺は、この瞬間が、永劫に続く事を望む!!」
「申し訳ありませんが…それを叶える訳には行きません…!!」
エルヴズユンデが、胸部のブラスターを放つ。
「だが、俺に勝てるか…!!」
フレアドイリーガルがそれを回避し、アサルトライフルを放つ。
「勝ちます…勝たねばなりません!!」
アサルトライフルの銃弾を剣で叩き落し、同時に左腕のレーザー、ビーム砲を放つ。
「くうっ…!!」
フレアドイリーガルは回避するが、全弾回避し切る事は出来ずに直撃弾を貰う。
「今です!!」
エルヴズユンデが、その一瞬を突いて一気に踏み込む。
「まだ、終わりでは無いぞ!」
フレアドイリーガルが、剣を強引に振りかざし、ブースターでエルヴズユンデに激突する。
「っ…!?」
「貰ったぞ!!」
そして、フレアドイリーガルが剣を振り下ろす。
剣が、エルヴズユンデの肩アーマーに深々と食い込む。
「果たして、そうでしょうか…!!」
エルヴズユンデの左腕のクローが、フレアドイリーガルに叩き込まれる。
「がっ…!!」
そして、零距離でレーザーとビーム砲を叩き込む。
フレアドイリーガルが吹き飛ぶ。
「良い攻撃だ…!」
レディオスが、そう言って笑う。
「…だが、まだ、俺は負けていない…!!」
エルヴズユンデが、肩アーマーに食い込んだ剣を引き抜き、地面に突き刺す。
フレアドイリーガルが、腰に差したダガーを抜く。
二機が、再び一歩を踏み出そうとした。
しかし、次の瞬間、フルメタルコロッセオを衝撃が襲った。
「…何だ…!?」
観客席の人々が、逃げ惑っている。
見ると、観客席の一方の箇所が崩れ、そこには、かなりの損傷を負ったアンファースが倒れていた。
「…シリウス!?」
ギルティアが思わず叫ぶ。
「…すまぬ、ここまで、止められなんだ…!」
アンファースが対峙していた相手は、巨大な機動兵器だった。
全長百五十メートルはあるだろうか。
「ルギルナ君、そして、レディオス…貴様等は我が目的にとって最大の障害…我にたてつく愚か者達よ、皆纏めてここで公開処刑してくれる!!
そう、この殲滅型重機動兵器、グレートラーゼルでな…!!」
中からの声で、ギルティアは理解した。
「…ラーゼル…!!」
「相変わらず、人の楽しみを邪魔するのが好きな奴だ…」
レディオスが呟く。
「さぁ、死ぬが良い!!」
グレートラーゼルの両腕の巨大砲が火を噴く。
「立ち塞がるもの…私の使命の敵は、全力で排除します!!」
エルヴズユンデが、フレアドイリーガルの前に立ち、プリズナーブラスターでグレートラーゼルの巨大砲を相殺する。
一方、大混乱していた観客席では、アルフレッドが観客の避難を誘導していた。
「ラン!何処に行くんだ!!」
ランが、全く別の方向に駆け出している。
「職員用のだが、こっちにも出入り口がある!!
ミノリ、緊急事態だ、そっちも使う!誘導を頼めるな!?」
「ええ、分かってます!」
ミノリが頷く。
「…俺は一旦帰って、少し持ってくるものがある!
アレが使えれば、避難も楽になるはずだ!!」
ランが職員用の出入り口からフルメタルコロッセオを出て、アルフレッド工業まで走る。
一方、エルヴズユンデは巨大砲を相殺し続けていた。
「中々持ちこたえるな…!」
「私の機体を…侮って貰っては困ります…!!」
エルヴズユンデが、ブラスターの出力を一気に引き上げる。
巨大砲を一気に押し返し、グレートラーゼルにブラスターが直撃する。
「ぬゥ…」
「せっかくの楽しい一時を邪魔した罪は重いぞ!!」
「その通りぞ!儂とて、王者決定戦を楽しみにしておったのだからな!!」
更に、フレアドイリーガルとアンファースが、それぞれ、アサルトライフルとショットガンを叩き込む。
「ぐ、ぐぐ…!!」
更に、グレートラーゼルの背後に、爆発が起こる。
「俺を忘れるんじゃねえ!
…テメェの会社の不始末だ、社員で蹴りをつけないでどうする!!」
そこでは、ジェネラルが、榴弾砲を構えていた。
「ふ、藤木さん!?」
「おう、ウチの社長がとんだ迷惑をかけちまってるな…すまねぇ。
これは既に『妨害』や『営業活動』ですらねェ…ただの、『侵略』だ…!!
…何としても、止めなけりゃならねえ!!ルギルナさん、力を貸してくれや!!」
「ええ、分かっています…!」
ギルティアが、ニヤリと笑った。
一方、アルフレッド工業に、ランは戻っていた。
「か、身体を鍛えていて助かった…」
ランが、工場に走る。
「オメガアームド接続正常、起動準備完了!!」
そう、エルヴズユンデが置かれていた場所の横で横たわっていた巨体。
ランは既に、『こちら』の改造も終わらせていたのだ。
その胸部に、ランが乗り込む。
「…行こう、オメガソルジャーGX!!」
オメガソルジャーと呼ばれたそれは、立ち上がる。
見ると、両腕が腕と一体化した剣に換装され、背中にもブースターが追加されている。
「作戦目的、フルメタルコロッセオの観客の避難の支援、及び、ギル姉の支援!!」
そして、オメガソルジャーは飛び立った。
初めての操作だったが、ランには、上手く操縦する自信があった。
その根拠は、ソルジャーESに搭載されていたAIの存在だ。
ソルジャーに搭載されていたAIを、今も操縦の補助にそのまま搭載している。
ランの操作の意図を読み取り、AIが的確に機体を動かす、それが、今のオメガソルジャーだった。
戦闘は、ますます激化していた。
「これでも食らうが良い!!」
グレートラーゼルの両肩が開き、夥しい量のミサイルが姿を現す。
「な、何だと!?」
「回避行動を取れば、観客への被害が拡大します…!!」
「クク…避けられまい!!」
そのミサイルが、一斉に放たれる。
「避けられないというのならば…迎撃するまでです!!」
エルヴズユンデが、全火力でそれを迎撃する。
アンファースも、フレアドイリーガルも同じように、ミサイルを撃墜する。
ジェネラルは、遠くからそれを援護している。
「…ッ!?」
一発のミサイルが、エルヴズユンデの横を抜け、今だ避難の途中の観客席へと向かう。
「しまった…!!」
エルヴズユンデがそちらの方を向こうとする。
背後を見せるという事は、残りのミサイルの雨の直撃を貰う事を意味する。
しかし、ギルティアは、今までも自分の損害より人々の方を優先してきた。
その通りにギルティアは行動しようとした。
しかし、上空からの声がその行動を制止する。
「ここは、俺がやるッ!!」
直後、空中からのビームが、ミサイルを撃墜し、観客席の前にそれを撃った機体が降りる。
「ソルジャー…ラン、ですか…!?」
「ああ、俺だよ!避難の支援は俺が引き受ける!
…ラーゼルにも一発ぶち込みたいしな!!」
「ありがとう、本当に見事です」
ギルティアが、静かに笑う。
「…勝負は、これからです!!」
エルヴズユンデが、グレートラーゼルに向けて突進する。
「なっ…幾らお嬢ちゃんでも、あの火力相手に、突撃は無茶だ!!」
「…これが、私の戦いです…!!」
グレートラーゼルの各所からの凄まじい砲撃を全て剣と爪で叩き落しながら、エルヴズユンデが正面から前進する。
「す、凄ェ…!」
藤木が、唖然とする。
「たあああああああああああっ!!!」
剣の一撃が、グレートラーゼルの左腕の巨大砲を真っ二つにする。
「な、何だと!?」
「ラーゼル…あなたのような悪党を倒すのは、私の使命です!」
その言葉に応えるように、ランから通信が入る。
「観客の避難はほぼ完了したよ!これから、俺もそっちの援護に入る!!」
「まだ、機体の扱いには慣れていないはずです…くれぐれも、無理はしないで下さい」
「分かってる!」
そう言って、オメガソルジャーが、エネルギーを纏った両腕の剣を振るう。
すると、剣から光の刃が放たれ、グレートラーゼルに直撃した。
「…どうだ!!」
グレートラーゼルはよろめいたが、損傷はごく小さい。
「その程度…!!」
ラーゼルの嘲笑が響く。
「威力は大した事は無くても、それで隙が出来る!今だ、皆!!」
ランの叫びに、その場にいる全員が、今の瞬間が好機と悟る。
「でかした!流石はアルフレッドの跡継ぎだけの事はある!!
わしと、我が相棒アンファースを、散々茶番に利用した事、後悔するが良い!!」
アンファースが、ブースターを全開にして突っ込む。
ショットガンを乱射し、装甲に歪みを造る。
「でええええええあああああああああああっ!!!」
そして、一閃が、右腕の巨大砲を真っ二つにする。
「な、この老いぼれ風情が…!!」
「おっと、余所見をしている暇は無いぜ!!」
再びグレートラーゼルの背後に爆発が起こる。
「でええええええええええええいっ!!」
ジェネラルが、弾が尽きるまで榴弾砲を撃つ。
「ぬおおおおおおおおおっ!!!」
そして、その爆発が集中した場所、グレートラーゼルの腹部を、剣を構えた体当たりで突き破る。
「お、おのれ、この、裏切り者が!!」
「言った筈だぜ!俺はあんたの駒じゃねえ…ただの、一つの会社の一社員だってな!!
たとえ柄が悪かろうが良かろうが…それが、会社の為ならば仕事だと引き受けてきた…。
だが、今のあんたに与する事が、会社の為になるとは思えねえ!!」
それに対して、グレートラーゼルが、破壊された巨大砲を排除し、拳を振りかざす。
「俺の邪魔をした貴様が、俺の前で好き勝手に行動出来ると思ったら、大間違いだ…!!」
フレアドイリーガルが、先程エルヴズユンデが地面に突き刺していた剣を引き抜く。
「いつも俺の邪魔ばかりしたお前には、俺とて恨みを晴らさねばならない…!!」
フレアドイリーガルがグレートラーゼルに突進し、拳の継ぎ目に、剣を叩き込む。
更に、その隙間から、内部に剣を食い込ませ、抉る。
そのまま、グレートラーゼルの拳を真っ二つに切り裂く。
更に、もう一本の腕の拳に向けて突撃し、アサルトライフルを関節の継ぎ目に撃ち込む。
そして、そのまま、剣を用い、凄まじい手際でその関節部分を解体した。
腕が外れ、地面に落ちる。
「…さて、最後は私の番、ですね…!」
エルヴズユンデが、自らの剣に最大出力でブラスターをぶつける。
剣が、凄まじい熱を帯びて赤熱化する。
「…ラーゼル!覚悟なさい…!!」
「何故だ!何故、我がこんな所で、こんな虫けらに!!」
ラーゼルの絶叫が響き渡る。
「それは、私が今、ここにいるからです…!!」
エルヴズユンデが、赤熱化した剣を振りかざす。
「私は私の使命を、全力で果たします…!!
いかなる者がその前に立ち塞がろうとも、私は、躊躇ったりはしません!!!!」
振り下ろした一撃が、グレートラーゼルを、縦に一刀両断にした。
「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
グレートラーゼルは、大爆発して消えた。
「…願わくば、汝の罪が祓われん事を」
エルヴズユンデが剣を降ろし、ギルティアは、静かに呟いた…。
「終わり、ましたか…」
ギルティアが呟く。
「勝手に、終わるな」
レディオスの言葉が、それに続く。
見ると、フレアドイリーガルが、また剣を構えている。
「…成る程、邪魔者がいなくなったところで、続き、という訳ですか…。
…良いでしょう、お互い、これだけ消耗しても、戦意を失わないというのなら…」
ギルティアが、ニヤリと笑った。
「…私も、最後まで付き合います…!!」
エルヴズユンデも、剣を構えてそれに応じる。
「…!まさか、まだ戦う気なのか!?」
シリウスが尋ねる。
「ええ…レディオスも、そのつもりのようですから」
ギルティアが応える。
「…フ、フフ…予想外だが…どうやら、最高の戦いを見損ねずに済みそうだな…!!」
アンファースが観客席に向かい、そして、シリウスがそこから降りて観客席に座る。
「…わしもその戦い、見届けさせてもらおう」
「おお!?これだけやって、まだ続きをするのか!?
…物好きな連中だぜ…ま、良いさ…最高に良い勝負が見られそうだしな、俺も観客になるぜ…!」
藤木も観客席に座る。
「俺は、当然最後まで見届けるよ。
俺が始めてまともに改造に携わった機体なんだ…その結果は、見届けたい!!」
ランが、オメガソルジャーの胸部から出てきて、その上に座る。
一方、観客席に、少しだけ人が戻ってきていた。
その中には、ミノリ、アルフレッドや、リラもいた。
一方、実況の男が、最初にアンファースが倒れた瓦礫の中から這い出してくる。
「あんな事があって…尚、試合を、続行するのか…。
…素晴らしい闘志だ…僕も燃え上がってきたぞ!!」
瓦礫の上に立つ。
「観客は少ないが、これからが、本当の王者決定戦だ!!
しっかりとその眼に焼き付けろ!これが、本当の剣闘士の姿だ!!
さぁ、今こそ決着の時!存分に、戦うが良い!僕はそれを見届けよう!
そう、最高の王者決定戦の、始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
実況の男の叫び。
「…行きますよ、レディオス」
「ああ…!」
そして、二人が同時に叫んだ。
「「GO!AHED!!」」
続く




