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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.29 波乱の王者決定戦


   Act.29 波乱の王者決定戦


 いよいよ、王者決定戦当日が訪れた。

「…ファラオ店長からの連絡はどうなっていますか?」

 出発前に、ギルティアが、アルフレッドに尋ねる。

「ええ、まだ大丈夫との事…しかし、だんだんと数は増えているようです」

「思った以上に早いようですね…ならば、私がチャンピオンの座に就く事が出来次第、ルークはあちらの増援に送った方が良さそうですね」

 ギルティアは、静かに呟く。

 王者決定戦の事も気に掛かってはいるが、ギルティアにとっては、使命が最優先事項だ。

 異形の動向が把握できれば、後は心配する事は無い。

 ただ、全力で戦う、それだけで良い。

「…いよいよ、です」

 ギルティアが呟く。

「我々も、後から応援に行きます。ご武運を…!!」

「私は、私の持てる全力で戦うだけです…私が今までそうして来たように、ね」

 ギルティアは、そう言ってエルヴズユンデの方へと歩き出した…。


 一方、アンファース・インダストリアルでは、シリウスが、応援に行く準備をしていた。

「…アンファースの整備だが、いつもより念入りに頼む。

 何か嫌な予感がする。お嬢ちゃんが負けるってのとは違う、嫌な予感が…な。

 …ラーゼルが、このまま黙っているとも思えないしな」

 シリウスは、部下にそう指示を出すと、自ら自転車をこいで、闘技場へと向かっていった…。


 更に同じ時刻、ラーゼル重工、地下室には、巨大な機械が起動する音が響いていた。

「時は来た…処刑の、始まりだ…!!」

 巨大な機械の動力が唸りを上げる。それはまるで、獣の咆哮のようだった…。


 闘技場は、かつて無いほどの熱気に包まれていた。

「遂にこの日がやってきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 エルヴズユンデと、継ぎ接ぎだらけのフレアドイリーガルが、対峙している。

「…待っていた」

「…お待たせしました」

 ギルティアとレディオスが、同時に言葉を紡ぐ。

 そして、お互いがその言葉を聞いて、笑う。

「俺はただ、強い奴と戦いたいだけだ…もっと強くなる為にな。お前が誰でも構わない…俺を楽しませて欲しい」

「私が目指すのはその先にある物です…申し訳ありませんが、勝たせて頂きます」

「その先、か…フッ、面白い事を言う…」

 レディオスが、そう言うと、ギルティアは笑って頷いた。

 そのやり取りを遮るように、実況の男の台詞が続く。

「無敗で今まで勝ち上がってきた、美しく、そして圧倒的な戦闘能力を持つ乙女!

 斬光の聖女ルギルナ=燐紅=御果!!

 愛機エルヴィントも、場違いなほどの優美さの内に眠る、恐ろしい程の力を見せ付けてきた!!

 今回の戦いでも、その美しい剣閃が見られるか!!」

 歓声が、一際強くなる。


 一方、ラーゼル重工の本社のビルを破壊して、『それ』は動き出した。

「さぁ…忌まわしき者達が集まっている、鋼鉄の闘技場に行こうぞ…!!」

 目的地は、フルメタルコロッセオだ。

 周囲の建物を踏み潰しながら、歩き出す。

「な、何て事をやってやがる、社長!!」

 崩れたラーゼル重工本社の瓦礫を突き破り、ジェネラルZXが姿を現す。

「藤木か…」

「あんた、まさかフルメタルコロッセオにそいつで乗り込む気か!?」

 藤木が叫ぶ。

「そうだ…忌まわしき輩は、あの場所で、大観衆の見守る中、公開処刑してくれる!!

 そう…この私に刃向かう愚か者への、見せしめとしてな!!」

「そうかい…今までの荒事は会社を大きくする為の『仕事』として割り切ってきたが…」

 ジェネラルZXが、大剣と榴弾砲を構える。

「あんたが『侵略』と『戦争』をする気なら、俺は社長の下では働きたくねェ!!」

「…阻むか、藤木よ…その機体で…!」

「ああ、そうさせて貰う!俺はあくまで『ラーゼル重工』の社員であって、ラーゼル社長!あんた自身の目的の為の駒じゃねェ!!」

 爆発音が、響き渡った…。


 歓声に乗って、実況の男は言葉を続ける。

「一方!対するは長い間王者として君臨してきた無敵の王者、強者との戦いのみを、ただひたすらに待ち望む戦士!

 焔光の覇者レディオス=アイルレード!!機体は変わらずフレアドイリーガル!!

 その継ぎ接ぎの奥に隠れた真の力は、まさに王者と呼ぶに相応しい戦闘能力を持っている!!

 圧倒的な技量に裏打ちされたその強さが、今回も王者の座を護るのか!!」

「…全力で、行きます」

「ああ…そうでなくては面白くない」

「さぁ、王者決定戦、皆さんご一緒に!!」

 見に来ていた大勢の観客も、一斉に叫んだ。

「GO!AHED!!」

 その言葉と同時に、エルヴズユンデがフレアドイリーガルに斬りかかる。

「先手は貰いますよ!」

「ああ、構わん!」

 エルヴズユンデが振り下ろした剣を、フレアドイリーガルは容易に回避した。

 しかし、エルヴズユンデはそのまま左腕のクローをフレアドイリーガルに叩き込んだ。

 フレアドイリーガルの胸部の継ぎ接ぎのアーマーが砕け散る。

「…っ!やるな!」

「私は、負ける訳には行かないのです…!」

 そして、二機が離れる。

 フレアドイリーガルが、腰に差した細身の剣を抜く。

「まずは、最大の枷である胸部のアーマーを破壊してくれた事に感謝しよう…次はこちらから行くぞ…!」

 フレアドイリーガルの背中のブースターが咆哮を上げる。

「…速い!?しかし!!」

 エルヴズユンデがその攻撃に合わせる。


「凄い…何て速い戦い…」

 観客席で、リラが呟く。

「軽量、ブースター特化の機動戦闘型だからな…フレアドイリーガルは。

 エルヴィントは割と重量級の方に分類されるが、それ以上に強力なブースターで動いておる。

 …機動性はほぼ互角、といえるだろうな」

 シリウスが説明を加える。

「…凄ぇ…俺達が、俺達がいじった機体が、あんな戦いをしているんだよ…!」

 ランが、目を輝かせている。

「ああ…今回、お前は良く頑張ったぞ、ラン」

 アルフレッドが、ランを見て目を細める。

「…ありがとう、アル爺!」

「ふふ、成る程、跡継ぎ候補、という訳か…」

 シリウスが、アルフレッドとランのやり取りを温かく見守っていると、突如、携帯通信機が着信を知らせる。

 …アンファース本社からだった。

「…何だ、今良い所であるぞ…何と!それは本当か…!?」

 通信を聞いて、シリウスの顔色が変わる。

「…分かった、すぐ戻る。アンファースの出撃準備をしておけ…!

 ラーゼルめ…この戦いの邪魔だけはさせぬぞ…!」

 シリウスが通信を切り、席を立つ。

「シリウス社長?」

「…少々野暮用が出来た…少しばかり、本社に戻る」

 そう言って、シリウスは駆け出した。

 凄まじい勢いで、シリウスのこいだ自転車がアンファース本社に突っ込む。

「アンファース、出撃準備完了しております!」

 部下の言葉にシリウスが、うむ、の一言で応え、乗り込む。

「…ラーゼルめ…あのような化け物を…!!」

 アンファースが、起動する。

「フルメタルコロッセオ史上、最高の王者決定戦だ…邪魔をさせる訳には、行かぬ!!」

 凄まじいスピードで、遠く響く爆発音の場所へと、飛び立った…。


 その後、エルヴズユンデも、フレアドイリーガルも、相手に一太刀当てる事が出来ずに、何度も衝突を繰り返している。

「くうっ…流石チャンピオン…そう簡単に勝たせては貰えませんか…!」

「成る程…ヴルレオの雑魚とは違うな…!」

 二機が、再び剣を構え、真正面から斬り込む。

「パワーならば…こちらが上です!!」

 エルヴズユンデが、フレアドイリーガルを押し飛ばす。

「だが、その姿勢で、回避できるか!!」

 フレアドイリーガルは、空中でそのまま姿勢を整えると、

 再びエルヴズユンデに向け、剣を叩き込む。

「くっ…!!」

 エルヴズユンデが、左腕の爪で、剣を受け止める。

「ほう…やはり、咄嗟の反応が上手いな…。

 …面白い…これだ…俺は、この戦いを待っていたんだ!!」

 レディオスが、そう言って笑う。

「ようやく、ようやくだ!楽しいぞ、楽しいぞルギルナ=燐紅=御果!!」

 フレアドイリーガルの足から一丁のアサルトライフルがせり出し、それを左手に構える。

「ようやくだ…ようやく、俺が全力で戦える相手と出会う事が出来た!!

 さぁ、この時間を、存分に楽しもうじゃないか…!!」

 そして、アサルトライフルが、エルヴズユンデに向けて放たれる。

「くっ!」

 再びエルヴズユンデがフレアドイリーガルを押し飛ばす。

 銃弾は、フレアドイリーガルがバランスを崩したため、見当違いの方向へと飛んでいった。

「どうやら、喜んで頂けているようで、何よりです…!」

 更に、エルヴズユンデが、押し飛ばされ、空中で姿勢を整えているフレアドイリーガルに追撃をかける。

「私としても、素晴らしい戦いが出来ている事…嬉しく思います…!!」

 左腕のクローを、フレアドイリーガル目掛けて叩き込む。

 フレアドイリーガルが、それを回避するが、回避しきれずに左肩のアーマーが抉り取られる。

「ええい!!」

 フレアドイリーガルが、右肩のアーマーを剣で切り落とす。

 いずれも、後からつけられたパーツだ。

 フレアドイリーガルの本来の力が、更に大きく開放された、それだけだ。

「良いぞ!そうだ、そう来なくては…!!」

「しかし、私は負けるわけには行かない…全力で、打ち破るだけです…!!」

 二人の叫びと、金属が激突する音が、闘技場を埋め尽くしていた…。


 『それ』は、ジェネラルをものともせずに、フルメタルコロッセオへと進み続けていた。

 『それ』が歩いた後には、ただ、瓦礫だけが残っていた…。

「くっ…流石に、化け物だ…!

 まさか、俺たち社員に一切気付かれずにこんな物を作っていたとはな…」

 藤木が、静かに続ける。

「…だが…」

 ジェネラルが、再び榴弾砲を構える。

「…ここで、この程度で負けられるかよ!!」

 『それ』に、榴弾砲が直撃し、凄まじい爆発が起こる。

「効かぬわ!所詮、指揮官用の高級量産機程度…虫けら同然!!

 そうだ…フルメタルコロッセオの剣闘士など、我が前には全て虫けらぞ!!」

 ラーゼルの高笑い。

 しかし、それは、次の瞬間、高高度から凄まじい勢いで叩き込まれた剣閃が、装甲に激突する甲高い金属音に掻き消された。

「ラーゼル!お主の好きにはさせぬぞ!!」

「な、あの機体は…アンファース・インダストリアルの!?」

 藤木が、その機体を見て、驚愕する。

「シリウス=アンファース…ク、クク…虫けらがほざきおる…。

 そのポンコツもろとも、鉄屑へとかえてくれる!!」

「やれるものならば…やってみよ!!」

 アンファースが、ショットガンと剣を構える。

「そこのラーゼル重工の機体!」

「俺か…!?」

 藤木が応答する。

「お主も、ラーゼルを止めようとしてくれておるのだろう!?」

「ああ、そうだ…奴が今やろうとしているのは、

 今までのような企業活動じゃねえ…侵略だ…!!」

「…儂も手を貸す!共に戦おうぞ!!」

「…ああ!」

 ジェネラルと、アンファースが、二機同時に攻撃を仕掛けた…。


 二機の戦いは、双方が全く譲らぬまま、何度も剣を交え続ける、全く互角の戦いになっていた。

「良いぞ…俺は、この瞬間が、永劫に続く事を望む!!」

「申し訳ありませんが…それを叶える訳には行きません…!!」

 エルヴズユンデが、胸部のブラスターを放つ。

「だが、俺に勝てるか…!!」

 フレアドイリーガルがそれを回避し、アサルトライフルを放つ。

「勝ちます…勝たねばなりません!!」

 アサルトライフルの銃弾を剣で叩き落し、同時に左腕のレーザー、ビーム砲を放つ。

「くうっ…!!」

 フレアドイリーガルは回避するが、全弾回避し切る事は出来ずに直撃弾を貰う。

「今です!!」

 エルヴズユンデが、その一瞬を突いて一気に踏み込む。

「まだ、終わりでは無いぞ!」

 フレアドイリーガルが、剣を強引に振りかざし、ブースターでエルヴズユンデに激突する。

「っ…!?」

「貰ったぞ!!」

 そして、フレアドイリーガルが剣を振り下ろす。

 剣が、エルヴズユンデの肩アーマーに深々と食い込む。

「果たして、そうでしょうか…!!」

 エルヴズユンデの左腕のクローが、フレアドイリーガルに叩き込まれる。

「がっ…!!」

 そして、零距離でレーザーとビーム砲を叩き込む。

 フレアドイリーガルが吹き飛ぶ。

「良い攻撃だ…!」

 レディオスが、そう言って笑う。

「…だが、まだ、俺は負けていない…!!」

 エルヴズユンデが、肩アーマーに食い込んだ剣を引き抜き、地面に突き刺す。

 フレアドイリーガルが、腰に差したダガーを抜く。

 二機が、再び一歩を踏み出そうとした。


 しかし、次の瞬間、フルメタルコロッセオを衝撃が襲った。

「…何だ…!?」

 観客席の人々が、逃げ惑っている。

 見ると、観客席の一方の箇所が崩れ、そこには、かなりの損傷を負ったアンファースが倒れていた。

「…シリウス!?」

 ギルティアが思わず叫ぶ。

「…すまぬ、ここまで、止められなんだ…!」

 アンファースが対峙していた相手は、巨大な機動兵器だった。

 全長百五十メートルはあるだろうか。

「ルギルナ君、そして、レディオス…貴様等は我が目的にとって最大の障害…我にたてつく愚か者達よ、皆纏めてここで公開処刑してくれる!!

 そう、この殲滅型重機動兵器、グレートラーゼルでな…!!」

 中からの声で、ギルティアは理解した。

「…ラーゼル…!!」

「相変わらず、人の楽しみを邪魔するのが好きな奴だ…」

 レディオスが呟く。

「さぁ、死ぬが良い!!」

 グレートラーゼルの両腕の巨大砲が火を噴く。

「立ち塞がるもの…私の使命の敵は、全力で排除します!!」

 エルヴズユンデが、フレアドイリーガルの前に立ち、プリズナーブラスターでグレートラーゼルの巨大砲を相殺する。


 一方、大混乱していた観客席では、アルフレッドが観客の避難を誘導していた。

「ラン!何処に行くんだ!!」

 ランが、全く別の方向に駆け出している。

「職員用のだが、こっちにも出入り口がある!!

 ミノリ、緊急事態だ、そっちも使う!誘導を頼めるな!?」

「ええ、分かってます!」

 ミノリが頷く。

「…俺は一旦帰って、少し持ってくるものがある!

 アレが使えれば、避難も楽になるはずだ!!」

 ランが職員用の出入り口からフルメタルコロッセオを出て、アルフレッド工業まで走る。


 一方、エルヴズユンデは巨大砲を相殺し続けていた。

「中々持ちこたえるな…!」

「私の機体を…侮って貰っては困ります…!!」

 エルヴズユンデが、ブラスターの出力を一気に引き上げる。

 巨大砲を一気に押し返し、グレートラーゼルにブラスターが直撃する。

「ぬゥ…」

「せっかくの楽しい一時を邪魔した罪は重いぞ!!」

「その通りぞ!儂とて、王者決定戦を楽しみにしておったのだからな!!」

 更に、フレアドイリーガルとアンファースが、それぞれ、アサルトライフルとショットガンを叩き込む。

「ぐ、ぐぐ…!!」

 更に、グレートラーゼルの背後に、爆発が起こる。

「俺を忘れるんじゃねえ!

 …テメェの会社の不始末だ、社員で蹴りをつけないでどうする!!」

 そこでは、ジェネラルが、榴弾砲を構えていた。

「ふ、藤木さん!?」

「おう、ウチの社長がとんだ迷惑をかけちまってるな…すまねぇ。

 これは既に『妨害』や『営業活動』ですらねェ…ただの、『侵略』だ…!!

 …何としても、止めなけりゃならねえ!!ルギルナさん、力を貸してくれや!!」

「ええ、分かっています…!」

 ギルティアが、ニヤリと笑った。


 一方、アルフレッド工業に、ランは戻っていた。

「か、身体を鍛えていて助かった…」

 ランが、工場に走る。

「オメガアームド接続正常、起動準備完了!!」

 そう、エルヴズユンデが置かれていた場所の横で横たわっていた巨体。

 ランは既に、『こちら』の改造も終わらせていたのだ。

 その胸部に、ランが乗り込む。

「…行こう、オメガソルジャーGX!!」

 オメガソルジャーと呼ばれたそれは、立ち上がる。

 見ると、両腕が腕と一体化した剣に換装され、背中にもブースターが追加されている。

「作戦目的、フルメタルコロッセオの観客の避難の支援、及び、ギル姉の支援!!」

 そして、オメガソルジャーは飛び立った。

 初めての操作だったが、ランには、上手く操縦する自信があった。

 その根拠は、ソルジャーESに搭載されていたAIの存在だ。

 ソルジャーに搭載されていたAIを、今も操縦の補助にそのまま搭載している。

 ランの操作の意図を読み取り、AIが的確に機体を動かす、それが、今のオメガソルジャーだった。


 戦闘は、ますます激化していた。

「これでも食らうが良い!!」

 グレートラーゼルの両肩が開き、夥しい量のミサイルが姿を現す。

「な、何だと!?」

「回避行動を取れば、観客への被害が拡大します…!!」

「クク…避けられまい!!」

 そのミサイルが、一斉に放たれる。

「避けられないというのならば…迎撃するまでです!!」

 エルヴズユンデが、全火力でそれを迎撃する。

 アンファースも、フレアドイリーガルも同じように、ミサイルを撃墜する。

 ジェネラルは、遠くからそれを援護している。

「…ッ!?」

 一発のミサイルが、エルヴズユンデの横を抜け、今だ避難の途中の観客席へと向かう。

「しまった…!!」

 エルヴズユンデがそちらの方を向こうとする。

 背後を見せるという事は、残りのミサイルの雨の直撃を貰う事を意味する。

 しかし、ギルティアは、今までも自分の損害より人々の方を優先してきた。

 その通りにギルティアは行動しようとした。

 しかし、上空からの声がその行動を制止する。

「ここは、俺がやるッ!!」

 直後、空中からのビームが、ミサイルを撃墜し、観客席の前にそれを撃った機体が降りる。

「ソルジャー…ラン、ですか…!?」

「ああ、俺だよ!避難の支援は俺が引き受ける!

 …ラーゼルにも一発ぶち込みたいしな!!」

「ありがとう、本当に見事です」

 ギルティアが、静かに笑う。

「…勝負は、これからです!!」

 エルヴズユンデが、グレートラーゼルに向けて突進する。

「なっ…幾らお嬢ちゃんでも、あの火力相手に、突撃は無茶だ!!」

「…これが、私の戦いです…!!」

 グレートラーゼルの各所からの凄まじい砲撃を全て剣と爪で叩き落しながら、エルヴズユンデが正面から前進する。

「す、凄ェ…!」

 藤木が、唖然とする。

「たあああああああああああっ!!!」

 剣の一撃が、グレートラーゼルの左腕の巨大砲を真っ二つにする。

「な、何だと!?」

「ラーゼル…あなたのような悪党を倒すのは、私の使命です!」

 その言葉に応えるように、ランから通信が入る。

「観客の避難はほぼ完了したよ!これから、俺もそっちの援護に入る!!」

「まだ、機体の扱いには慣れていないはずです…くれぐれも、無理はしないで下さい」

「分かってる!」

 そう言って、オメガソルジャーが、エネルギーを纏った両腕の剣を振るう。

 すると、剣から光の刃が放たれ、グレートラーゼルに直撃した。

「…どうだ!!」

 グレートラーゼルはよろめいたが、損傷はごく小さい。

「その程度…!!」

 ラーゼルの嘲笑が響く。

「威力は大した事は無くても、それで隙が出来る!今だ、皆!!」

 ランの叫びに、その場にいる全員が、今の瞬間が好機と悟る。

「でかした!流石はアルフレッドの跡継ぎだけの事はある!!

 わしと、我が相棒アンファースを、散々茶番に利用した事、後悔するが良い!!」

 アンファースが、ブースターを全開にして突っ込む。

 ショットガンを乱射し、装甲に歪みを造る。

「でええええええあああああああああああっ!!!」

 そして、一閃が、右腕の巨大砲を真っ二つにする。

「な、この老いぼれ風情が…!!」

「おっと、余所見をしている暇は無いぜ!!」

 再びグレートラーゼルの背後に爆発が起こる。

「でええええええええええええいっ!!」

 ジェネラルが、弾が尽きるまで榴弾砲を撃つ。

「ぬおおおおおおおおおっ!!!」

 そして、その爆発が集中した場所、グレートラーゼルの腹部を、剣を構えた体当たりで突き破る。

「お、おのれ、この、裏切り者が!!」

「言った筈だぜ!俺はあんたの駒じゃねえ…ただの、一つの会社の一社員だってな!!

 たとえ柄が悪かろうが良かろうが…それが、会社の為ならば仕事だと引き受けてきた…。

 だが、今のあんたに与する事が、会社の為になるとは思えねえ!!」

 それに対して、グレートラーゼルが、破壊された巨大砲を排除し、拳を振りかざす。

「俺の邪魔をした貴様が、俺の前で好き勝手に行動出来ると思ったら、大間違いだ…!!」

 フレアドイリーガルが、先程エルヴズユンデが地面に突き刺していた剣を引き抜く。

「いつも俺の邪魔ばかりしたお前には、俺とて恨みを晴らさねばならない…!!」

 フレアドイリーガルがグレートラーゼルに突進し、拳の継ぎ目に、剣を叩き込む。

 更に、その隙間から、内部に剣を食い込ませ、抉る。

 そのまま、グレートラーゼルの拳を真っ二つに切り裂く。

 更に、もう一本の腕の拳に向けて突撃し、アサルトライフルを関節の継ぎ目に撃ち込む。

 そして、そのまま、剣を用い、凄まじい手際でその関節部分を解体した。

 腕が外れ、地面に落ちる。

「…さて、最後は私の番、ですね…!」

 エルヴズユンデが、自らの剣に最大出力でブラスターをぶつける。

 剣が、凄まじい熱を帯びて赤熱化する。

「…ラーゼル!覚悟なさい…!!」

「何故だ!何故、我がこんな所で、こんな虫けらに!!」

 ラーゼルの絶叫が響き渡る。

「それは、私が今、ここにいるからです…!!」

 エルヴズユンデが、赤熱化した剣を振りかざす。

「私は私の使命を、全力で果たします…!!

 いかなる者がその前に立ち塞がろうとも、私は、躊躇ったりはしません!!!!」

 振り下ろした一撃が、グレートラーゼルを、縦に一刀両断にした。

「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 グレートラーゼルは、大爆発して消えた。

「…願わくば、汝の罪が祓われん事を」

 エルヴズユンデが剣を降ろし、ギルティアは、静かに呟いた…。


「終わり、ましたか…」

 ギルティアが呟く。

「勝手に、終わるな」

 レディオスの言葉が、それに続く。

 見ると、フレアドイリーガルが、また剣を構えている。

「…成る程、邪魔者がいなくなったところで、続き、という訳ですか…。

 …良いでしょう、お互い、これだけ消耗しても、戦意を失わないというのなら…」

 ギルティアが、ニヤリと笑った。

「…私も、最後まで付き合います…!!」

 エルヴズユンデも、剣を構えてそれに応じる。


「…!まさか、まだ戦う気なのか!?」

 シリウスが尋ねる。

「ええ…レディオスも、そのつもりのようですから」

 ギルティアが応える。

「…フ、フフ…予想外だが…どうやら、最高の戦いを見損ねずに済みそうだな…!!」

 アンファースが観客席に向かい、そして、シリウスがそこから降りて観客席に座る。

「…わしもその戦い、見届けさせてもらおう」

「おお!?これだけやって、まだ続きをするのか!?

 …物好きな連中だぜ…ま、良いさ…最高に良い勝負が見られそうだしな、俺も観客になるぜ…!」

 藤木も観客席に座る。

「俺は、当然最後まで見届けるよ。

 俺が始めてまともに改造に携わった機体なんだ…その結果は、見届けたい!!」

 ランが、オメガソルジャーの胸部から出てきて、その上に座る。

 一方、観客席に、少しだけ人が戻ってきていた。

 その中には、ミノリ、アルフレッドや、リラもいた。


 一方、実況の男が、最初にアンファースが倒れた瓦礫の中から這い出してくる。

「あんな事があって…尚、試合を、続行するのか…。

 …素晴らしい闘志だ…僕も燃え上がってきたぞ!!」

 瓦礫の上に立つ。

「観客は少ないが、これからが、本当の王者決定戦だ!!

 しっかりとその眼に焼き付けろ!これが、本当の剣闘士の姿だ!!

 さぁ、今こそ決着の時!存分に、戦うが良い!僕はそれを見届けよう!

 そう、最高の王者決定戦の、始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 実況の男の叫び。

「…行きますよ、レディオス」

「ああ…!」

 そして、二人が同時に叫んだ。


「「GO!AHED!!」」



続く

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