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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.21 快進撃


   Act.21 快進撃


 フルメタルコロッセオは、再び満員御礼だった。

 ギルティアの知名度は、先の中堅への二連勝によりうなぎ登りであり、

 大勢の観客が、ギルティアの華麗な戦い方に魅了されていたのだ。

「さぁ、今日もフルメタルコロッセオは、ヒートアップしていくぞォ!!」

 実況の男が、いつも通り声を張り上げる。

 エルヴズユンデの胸部で、ギルティアが、周囲の観客と、眼前の敵を睨み据えている。

「…貧相、ですね…」

 ラーゼル製の機動兵器とはいえ、その姿には、どこか哀愁が漂っていた。

 ギルティアは、少しだけ哀れに思った。

「今日は快進撃を続けるアルフレッド工業のエルヴィント、ルギルナ=燐紅=御果と、

 ラーゼル重工のソルジャーES、パイロットなしのAIの対戦だ!!」

「パイロットの表記が無いのは何故かと思っていましたが、成る程、AI制御ですか…」

 ギルティアが、ますます哀愁を感じる。

「勝負は決まっているような対戦だが、ここはエルヴィントの華麗な戦いに注目するとしよう!!」

「…機械の公開処刑…これでは、それと同じですね…ならば、私は私なりの方法で勝利するとしましょう…」

 ギルティアが静かに笑い、エルヴズユンデに乗り込む。

「さぁ、いよいよ戦闘開始だ!GO!AHED!!」

 実況の男の合図と共に、エルヴズユンデが左腕のレーザーを放つ。

 レーザーは何時もより細い。

 レーザーは、ライフルを構えようとしたソルジャーESの、右腕の肩関節を的確に撃ち抜き、ソルジャーESは、右腕が動かなくなる。

 しかし、他の部分には全く傷がついていない。

 ソルジャーESは、左腕にナイフを構える。

「…来なさい!」

 エルヴズユンデが剣を構える。

 ソルジャーESが突き出したナイフを、エルヴズユンデが蹴りで弾き飛ばす。

 更に、剣の一撃が、ソルジャーESの左腕関節を切り落とす。

 これもまた、他の部分を一切傷つけていない。

 ソルジャーESの両足についた機関銃が火を噴く。

 しかし、エルヴズユンデは既にソルジャーESの背後に回りこみ、両足の関節を、レーザーで撃ち抜いていた。

 姿勢を保てなくなったソルジャーESは、その場に倒れた。

 攻撃を当てた部分以外には、傷一つついていない。

 エルヴズユンデが、倒れたソルジャーESを、軽く踏み、剣を掲げる。

「…お疲れ様です」

 ギルティアは、ソルジャーESに向けて優しく微笑み、静かに呟いた。

 ソルジャーESは、まるでそれを受け入れたかのように、静かに機能を停止した…。

「当初の予想通りの圧勝だぁぁぁぁ!!

 しかも、本当に必要最小限の攻撃のみで、まるで夜泣きをする赤子をあやすかのような、

そう、優しさ、そして温かさすら感じるような勝利だぁぁぁぁ!!」

 実況の男が叫ぶと、一気に周囲の歓声が強まる。

「さぁ、今日は午後も彼女の戦いが見られるぞォ!!

 午後の相手はアンファース・インダストリアルの、アンファース!

 パイロットは、アンファース・インダストリアル社長、シリウス=アンファースだァ!!

 最古参、フルメタルコロッセオを知り尽くした企業、そしてかつて王者と呼ばれた実力者相手にどう戦うのか!!

 午後のバトルからも!目が!離せないぞ!!」


 実況の言葉が終わり、ギルティアは闘技場の外で待機する。

「…ギル姉!流石にあっさり勝ったな!」

 ランが、エルヴズユンデの足元から叫ぶ。

「まぁ、勝つべくして勝った勝負でしょう…」

 ギルティアが、ランの所へ降りる。

「しかし、何であんなピンポイント攻撃で倒したんだ?」

 ランが尋ねると、ギルティアは苦笑した。

「…あの姿を見ていたら、何故か分かりませんが、哀れになりましてね…。

 まるで、破壊されるのが宿命であるかのような、そんな悲壮感が漂っていまして、つい、ね」

「あー…まぁ、何となく分かるよ」

 ランも頷く。

「しかし、あのような機体をわざわざ参加させる理由とは?」

「ああ、今のフルメタルコロッセオには、かなり多くのラーゼル製の機体が参戦してる。

 …宣伝の為には、体の良いデモンストレーションの相手がいなくちゃならないのさ。

 吸収した会社の機動兵器をそれに使っていたけど、大方ぶっ壊しちゃった結果、自社で『やられ役』も用意する事になったって訳さ…」

 ランが、やれやれ、といった顔をする。

「本当に破壊されるのが宿命の機体だったのですね…あの機体は…」

 ギルティアが、寂しげに、機能を停止したソルジャーESが運ばれていった方を眺める。

「…さて、午後の戦いの前に、少し腹ごしらえをしましょうか…」

「そう言うと思って、パンを買ってきてあるよ!」

 ランが、ギルティアにパンの入った袋を手渡す。

「おお、助かります」

「それじゃ、俺は一旦家に戻ってる!午後も大暴れ、期待してるよ!」

「…ええ、任せてください」

 ギルティアが、笑顔で頷いた。

「さて…」

 ギルティアは、闘技場の観客席の方へと歩き始めた。


 ギルティアが思ったとおり、観客席は空いていた。

 椅子に座り、パンを食べ始める。

「あれ?もしかして、ルギルナ=燐紅=御果さん?」

 後からの女性の声に、ギルティアが振り向く。

「貴女は、確か先日受付をしていた…ミノリさん、でしたか?」

 その声の主は、受付をやっていた女性、ランの知り合いの、ミノリだった。

「はい」

「…私の事は燐紅で構いませんよ。まぁ、ランはギル姉と呼んでますがね」

 ギルティアが、そう言って微笑む。

「…ミノリさんも、こちらで昼食を?」

「ええ、午後も仕事なもので…」

 ミノリが、ギルティアの横に座り、自分の持ってきたパンを食べ始める。

「…お疲れ様です」

「いえいえ、燐紅さんこそ、快進撃の程、受付の方から拝見させていただいてますよ」

「ははは…」

 ギルティアが、少しだけ照れくさそうに笑う。

「連戦に次ぐ連戦、大変じゃないですか?」

 ミノリが、唐突にギルティアに尋ねる。

「この程度の戦いは、今までも何度も潜り抜けています…願うのは、もう少し手ごたえのある相手だけですね」

「ははは…戦いでの口上の通り、強気な人ね…」

 ミノリが苦笑する。

「…ラーゼル重工は、私達、フルメタルコロッセオの管理委員会にも横槍を入れてきます。

 今後も、更に大変な戦いが待ってると思います」

「でしょうね…」

 ギルティアが、頷く。

「…しかし私も、その程度で負けるつもりはありません」

「心強いですね…今、小企業で勢力を拡大しているのはアルフレッド工業だけです。

 …このまま勝ち続けることが出来れば、あるいは…」

「ラーゼルの暴走を止められるかもしれない、ですか?」

 ミノリは、無言で頷く。

「…そこまでの大企業をその程度で止められるかは疑問ですが、

少なくとも、ダメージは与えられるでしょう…私も、あの卑怯なやり方は嫌いです」

「…それは、名乗りを聞いてれば分かるわ」

 ミノリは、そう言って笑った。

「…では、午後の戦いも頑張って!」

 パンを食べ終え、ミノリが立ち上がる。

「ええ、そちらも、お仕事頑張ってくださいね!」

 ギルティアが、それに手を振る。

「…さて、行きますか…!」

 パンを食べ終えたギルティアも、エルヴズユンデの方へと歩き出した…。


 闘技場は、午前以上の熱気に包まれていた。

「さぁ!午後のバトルの始まりだ!!」

 エルヴズユンデが、剣を手に携えて立っている。

「午前に引き続き、アルフレッド工業、エルヴィント、ルギルナ=燐紅=御果!初参戦から圧倒的な力で連勝を重ねている!!

 試合の頻度が妙に高い気がするが、それを全くものともしていないようだ!さぁ、快進撃は続くのか!!」

 エルヴズユンデと向かい合って、大剣を持った、銀色の重騎士のような機体が立っている。

「対するは、現在のフルメタルコロッセオの最古参、アンファース・インダストリアルより、アンファース!!

 パイロットは、アンファース・インダストリアル社長、『永代の騎士王』シリウス=アンファースだァ!!

 二つ名の通り、玄人から今も変わらぬ絶大な支持を受け続け、そして、次々に投入される新型を相手に一歩も退かず、

時が過ぎた今の時代も決して一線を退かないその姿は、そしてその貫禄は、まさにその二つ名の通りの永代の騎士王だ!!

 この組み合わせ、どちらが勝利しても全くおかしくは無い!

 ただ、言える事は、素晴らしい戦いを期待できる、ただ、それだけだァ!!」

「お主の戦い、楽しく拝見させてもらっておるよ…。

ラーゼルの輩を相手の大立ち回り、見ていて痛快で、わしも頑張ろうと元気付けられている。

…今日はお互い、良い戦いをしようぞ!」

アンファースの胸部に座る、歴戦の勇士の貫禄が漂う男、シリウス=アンファースはそう言って微笑んだ。

「…ええ、お互い、全力で戦いましょう」

 ギルティアも、笑顔で頷く。

 しかし、両者共にそのやり取りで、お互いの力量をある程度把握し、軽く蹴散らせる相手ではない事を悟っているようだ。

「さぁ、いよいよ戦闘開始だ!!」

 実況の男の言葉で、二機がお互いの得物を構える。

 そして、ギルティアも、シリウスも、この戦いは本当の真剣勝負であることを悟っていた。

「GO!」

 だから、実況の男の言葉に続き、二人は自然と同時に口を開いた。

「「「AHED!!」」」

 二人の言葉が綺麗に重なる。そして、その瞬間、二機が同時に突進する。

 剣と剣がぶつかり、そのまま格闘戦になる。

「この距離で、これに対処できるかな!?」

 アンファースの両肩が開き、各四発のミサイルが姿を現す。

「四連装ミサイルランチャー、展開!!ファイア!!」

「何のッ!!」

 エルヴズユンデが一歩退き、剣の一振りで、ミサイルを叩き斬る。

 しかし、爆風は防ぎきれず、エルヴズユンデが爆風に呑まれる。

「まだまだ、この程度で私を止められはしません!!」

 爆風を突き破り、エルヴズユンデが再び斬りかかる。

「お主、流石の実力だな!!」

 剣と剣が衝突する。

「ふふ、お返しはさせて頂きますよ…!!」

 剣を切り結んだ状態でエルヴズユンデが、左腕のレーザーを放つ。

「ぬ!!」

 直撃。

「フ、フフ…楽しいぞ、久しぶりに楽しんでおるぞ、わしも、そして、この機体も!!

 しがらみや野心に縛られずに、純粋に戦えるのは、何年ぶりだろうか!!」

 シリウスが、感極まって叫ぶ。

 そして、脚部に収納されていたショットガンを左手に構える。

「かつて、この機体が最強と…わしらが頂点だった頃の情熱が、蘇ってきたわァ!!」

 アンファースが、全身のブースターを展開し、エルヴズユンデに身体ごと突っ込む。

「ぬん!!」

 そして、零距離からショットガンを叩き込む。エルヴズユンデが、よろめく。

「ぐっ…やられたままでは、終わりません!!」

 しかし、エルヴズユンデの左腕の爪が、アンファースの右肩のアーマーを根こそぎ抉り取り、更に、後回し蹴りでアンファースを吹っ飛ばす。

 アンファースが、吹き飛ばされざまに、両肩からミサイルを放つ。

 エルヴズユンデが防御体制でそれを防ぐ。

 体勢を立て直したアンファースが、その爆風を突き破って剣を叩き込む。

 エルヴズユンデが、剣でそれを防ぐ。

 フルメタルコロッセオの会場は、静まり返っていた。

 皆が、食い入るように、二機の戦いを見守っている。

「流石、やるものだな…お嬢ちゃん!!」

「そういうあなたも…かつて最強と呼ばれただけの事はありますよ…!!」

 エルヴズユンデが、再び左腕のレーザーを放とうとする。

「流石に二度もその手を喰う訳には行かぬな…!」

 アンファースが、一歩後退し、左腕を狙って剣を叩き込む。

 エルヴズユンデが、左腕の爪で剣を受け流す。

「たああああああああああっ!!」

 そして、その一瞬の隙を突き、エルヴズユンデが剣を振り下ろした。

 剣を握ったまま、アンファースの右腕が落ちる。

「何の、まだこれで終わったわけでは無いぞ!!」

 両脚に内蔵されたビーム砲が火を噴く。

 エルヴズユンデが後退しながらそれを回避し、再び一気に距離を詰める。

 アンファースが、ショットガンを構えなおす。

 エルヴズユンデが、剣を構え、突進する。

「「この一撃で、勝負!!!」」

 二機が、交差する。

 数秒間の、静寂。

「…流石、ですね…」

 各部に抉られた銃創がつき、エルヴズユンデが剣を落とし、膝をつく。

「…見事、ぞ」

 そして、アンファースの腰部に爆発が起き、アンファースは、その場に倒れた。


 静寂。ギルティアとシリウス以外、まだ戦いの決着を、理解していなかった…。


 最初に口を開いたのは、実況の男だった。

「まさに、まさに血沸き肉躍る激闘…!!

 これが、この戦いこそが、フルメタルコロッセオだァァァァァァァァァ!!!!!」

 その言葉につられるように、凄まじい大歓声が、闘技場を満たした。

「お主の戦いぶりは素晴らしい…直に戦っていて、良く分かった」

 アンファースから、シリウスが外に出てくる。

「いえ、正直、私もここまで有意義な戦いを出来るなんて、思いませんでした。

 …私の機体が膝をつく事など、滅多にある事ではありません」

「フフ、言いおる…しかし、この戦い、負けたとはいえ悔いは無しぞ!!」

 シリウスが、そう言って豪快に笑う。

「わしの機体が、もう引退しても良いって程に満足しておるわ!!

 楽しかったぞ!そして、またいつか戦おうぞ!!」

「ええ、私も、その時を楽しみにしています」

 ギルティアが、エルヴズユンデの機体各部の突起を飛び石のように降りる。

「!?」

「良い戦いでした、ありがとう」

 そして、ギルティアは手を差し出した。

「…うむ!」

 シリウスも、それに応じる。

 二人は、しっかりと握手をした。

「正々堂々、戦った後の礼すらも、俺たちの心を熱くする!!

 両者共に、最高の戦士だァァァァァァァァァ!!!!」

 実況の男が、凄まじく声を張り上げて叫ぶ。

 感動しているらしい。

 そして、その声に、再び大歓声と、拍手が沸き起こった。

「やれやれ…闘技場なんて私らしくないと思っていましたが…。

 …もしかすると、この空気は、結構私好みなのかもしれませんね…」

 ギルティアは、静かにそう呟いた…。


 そして、その夜、アルフレッド工業では、ランとギルティアが話をしていた。

「凄い勝負だったな、ギル姉!」

「ええ、本調子ではないとはいえ、一騎討ちでエルヴズユンデが膝をつく事など、滅多にありません…とても有意義な戦いでした。

 …といいますか…あの、昨日、『楽勝』とか言いませんでした?」

 ギルティアが、呆れた目でランを見る。

「あー…何というか…いつも、あの社長のバトルは、基本的に下位ランクの奴との戦いが多くて、

まさに瞬殺としか言いようが無いので力量を測れなかったというか…。

 彼が本気を出したのを見た事が無かったというか…まさか本気で戦うとあそこまで強いとは思わなかった…」

「…互角の勝負をできる相手はいなかったのですか?」

「俺、まだ若いし…ラーゼルが干渉し始めた頃からしか、コロッセオは見て無いんだよ…。

 だから、彼がチャンピオンだった頃、そして彼が負けた戦いは見た事が無い…ごめん、ギル姉」

 ランが謝る。

「いえ、情報は本当に助かっていますよ…ありがとう」

 ギルティアが、笑顔でランの頭を撫でる。

「…彼以外で、あのレベルの強さの戦士はいるのですか?」

「他は分からないけど…一人だけ、確実にそのレベルの強さの奴がいる」

 ランが、静かに続ける。

「…現チャンピオン…ラーゼル重工所属、フレアドイリーガルのパイロット、焔光の覇者レディオス=アイルレード…」

「ラーゼルの所属で、そこまでの強者が?」

「元々は別企業のパイロットと機体だよ…彼の戦いは、見たほうが早いと思う。

 …最近、あまり試合が無いんだけどな」

 ランが苦笑する。

「…あ、それはそうと、少し、エルヴズユンデで運ぶのを手伝ってもらいたいものがあるんだけどな」

 ランがニヤリと笑う。

「…何ですか?」

「それはお楽しみ…ギル姉も、きっと分かると思うよ」

 ランに案内されたのは、工業地帯の外れにあるジャンク山だった。

「ここ、ですか?」

「…見てよ、あれ」

 ランが指を差す。

「…ああ」

 ギルティアは納得した。

 ランの指差した先には、その日の午前に戦ったソルジャーESが、無造作に捨てられている。

 破壊された箇所はギルティアが破壊した箇所以外に無い。

「修理とか改造とかの練習に使いたいと思ってな。

 それに、せっかくギル姉が丁寧に倒したんだ、ここで朽ち果ててくのは可哀想だと思うだろ?」

「…ふふ」

 ギルティアは、笑顔で頷いた。


 こうして、エルヴズユンデの横に、ソルジャーESが置かれる事になった…。

「…随分と大きな拾い物をしてきたな、ラン」

 アルフレッドが、それを見て思わず呟く。

「良いだろ?」

「ああ、ギルティアさんがせっかく丁寧に倒した機体だ、大事に使えよ、ラン!」

 アルフレッドが、そう言って笑った…。

「さーって、さっそくいじってみるかな…」

 ランが、目を輝かせている。早速、何をしようか考えているようだ。

「おいおい、その前に、エルヴズユンデの修理が先だろう」

「おっと、そうだった!!」

 ランとアルフレッドが、エルヴズユンデの修理に取り掛かった。

「…私も手伝います」

 ギルティアがそれに加わろうとする。

「いえ、ギルティアさんは休んでいてください。これは小生達の仕事ですので。次の戦いまではゆっくりしていて下さい」

「そうそう!快進撃を続けてくれればそれで良いって!」

「…分かりました」

 ギルティアが頷く。


 そして、ギルティアは薄いベビードールネグリジェの寝間着姿でアルフレッド宅の屋上に一人でいた。

「今日は異常無しだったぞ、ギルティアよ」

 ギルティアの肩に、ルークが乗る。

「ご苦労様です、ルーク」

 ギルティアが微笑む。

「問題無い…それはそうと、今日は素晴らしい勝負だったようだな」

「ええ、まさかエルヴズユンデが膝をつく事になるとは…。

 良い勝負でした。あのような方との戦いなら、いつでも良いですね…」

「今まではまともに勝負として成り立っていなかったからな…」

「ええ…こちらも本調子の足元にも及ばない性能とはいえ、今までの敵は弱すぎでした」

「これからも大暴れを期待しているぞ、ギルティア。さて、もう一巡見張りでもしてくるか…」

 そう言って、またルークは飛び立っていった…。

「…私は、少し休ませて頂きますか…」

 ギルティアも、そのまま自分に預けられた寝室へと歩いていった…。


ギルティア日記

今日の戦いは、私としても非常に有意義な物でした。

まさかエルヴズユンデが膝をつく事になろうとは…。

彼は紛れも無く優秀な戦士です。

あのような方とならば、幾らでも戦いたいとも思えますね…。

さて、次はどんな戦いが私を待ちうけているのでしょうか…。


続く

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