「君」のこたえ
ノートを閉じ、「君」は呟いた。
「馬鹿みたい」
投げ出されたノートには、詩とも日記とも手紙ともつかない文章が、綴られていた。
端正な字が、最後の方には震えるように歪んでいる。
少年は、死に追われながら、これを書いた。
死に蝕まれていく身体で、
生を感じ、
自分を保ち、
世界を愛し、
「君」を想った。
彼は、最期の瞬間まで、自分の生を尊び続けたのだ。
生きたい。
彼は結局、一度もその言葉を口にする事は無かった。
自分の期限を知った時も、遂に身体の糸が切れてしまった時も。
ごめんね。
ありがとう。
いつもそう言っては、笑っていた。
心の中では、叫んでいたのだろうか。
生きたい。生きたい。死にたくない。
泣き、嘆き、叫んでいたのだろうか。
本当は、泣いていたのかも知れない。でも、彼はいつも笑顔で、「君」に「笑って」と語りかけた。
そんな彼に、「君」はとうとう、一度も笑顔を見せる事は出来なかった。目を、逸らしてしまった。
笑えば良かったのだろうか。
「君」はノートを抱き締めた。
強張る頬で、微笑んで見せる。
笑顔をなぞるように、涙が伝った。噛み締めた歯の隙間から、堪えきれなかった嗚咽が洩れる。
その場に頽れ、宿主を失った白いベッドにすがりついた。片手でノートを抱き、もう片方の手で布団を握り締めて。
一緒に居たかった。
生きていて欲しかった。
本当は、愛していたんだよ…………。
人間の彼は、もう居ない。
でも。
「僕」は今も、世界の欠片として、
「君」と共に居る。
ーENDー
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
いかがでしたか。
ここまでも、「?」となった方は多数いらっしゃったでしょうが、最終話でもやはり、核心には触れていません。
隠された沢山のメッセージを、受け取って頂けたら幸いです。
貴方なりの答えは、見つけられたでしょうか。
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