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始まりは突然に、何の予兆もなく4年たった今でも原因もわかっていない。
それは私が高校に入学した年の夏。世界各地で一斉に、猟奇殺人が発生した。今どき殺人事件など、都市部では珍しくもないかもしれない。それが猟奇と冠されていても。でもそれは小さな農村や、オフィス街、高級住宅地全てにおいて同時に起こった。
被害者は、見ず知らずの他人に。隣人に。恋人に。自らの子供に。
その日食い殺されたのだ。
自身の目の前で凶行が行われれば、絶大な恐怖であろうとも、少し距離が空くだけでそれは娯楽に変わってしまう。
第一報が報じられた時、自らは無関係と信じていた大概の人間は、センセーショナルな「話題」としてそれを受け止めていた。
私も翌朝のニュースで、アナウンサーが語る「結婚間近のカップルに起こった惨劇!猟奇殺人の真実と歪んだ愛」というのを聞き流しながら母が作ってくれた朝食をもそもそと食べていた。出かける支度は一応済んでいる。花の女子高生とは言いがたいレベルだが。
当時浮かんだ感想と言えば(リアルヤンデレは怖い。アレは2次元だけでいいよ)だったりする。
スポーツ情報にも、芸能人の恋愛にも、ほとんど興味もないため他のニュースは記憶にも残らず、私は何時ものように時間ギリギリになってから家を出た。