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D旧式→E形式

注意!残酷描写があります。

ピエロから距離を取って立ち上がった私は、もう一度タイミングを計る。

いつもなら無鉄砲に飛び込んでいくくせに、こいつに対してはイヤに慎重だ。それに結界すら張らせてくれない。

私はその事をいぶかしく思うと、珍しくむこうから私が語りかけてきた。弾んだ声で。

『あの人とおんなじだ・か・ら☆』

その意味を理解。ぐぎぃぃ、と軋みをあげて『私達』が笑う。

「……ふふふ」

ピエロは畳みかけてこようとはせず、にやけ笑いを浮かべて私を観察している。

この期に及んで奴はまだ私が無力だと思っている。

馬鹿らしい。そして憎たらしい。その態度、まるであいつのようじゃないか。

「くきゃはははははははははははははははははは!!!!!!!」

あまりの馬鹿らしさに、嬉しさに『私達』が堪えきれずに大笑。

ピエロはそれでもにやけ笑いで挑発するように突っ立つ。

「ははははははっはははははっははははは!!!!」

それがあまりにも可笑しく狂ったように『私達』は大声で笑う。

「さあ、来い! 来なよポンコツ! 切り刻んでやるから☆」

「いいのかい? その可愛らしいお顔ぶっ潰しちまうぜ?」

ピエロはあくまで余裕を崩さない。それでも一応警戒しているのか、得物を捨てるようなことはしない。

「きゃはははは☆ 出っ来るっかなー?」

「出来るぜ! だってピエロは万能!!」

リミッター解除。加速。これまでにないほど全身が軋んで歓声を上げる。

ピエロが雄叫びをあげる。たぶん何かショーの開始を告げようとしたのだろうが、意味のある言葉には変わらなかったようだった。

「きゃは☆ 準備おっけー?」

私。舌なめずり。バネのように身を縮め、飛び出す準備。

ピエロ。実に嬉しそうに凶悪な笑み。

「オッケー、カマン! ちびジャリ!」

「オッケーオッケー♪ レッツゴゥ!」

私。飛び出す。ねらいは急所。

ピエロ。先手必勝とばかりに踏み込んでくる。

私。あと一歩、というところで、薙ぐように振るわれたチェーンソーに阻まれる。

ピエロ。左のチェーンソーを投げ捨て、右のチェーンソーを横に一閃。

私。屈んで避ける。紙一重。そのまま飛びかかり、股間を殴る。硬い感触。あわてて飛び下がろうとする。

ピエロ。効いた素振りを見せず、動きの止まった私を蹴り飛ばす。

私。吹き飛ばされ、床に転がる。口から血が流れる。

「HYA−HAHAHAHAHAHA!!!!!」

ピエロ。追い打ちをかけに踏み込んでくる。左手には短い直剣。右はまだチェーンソー。振り下ろされる。

私。加速。全身から歓喜と悲鳴。横に飛ぶ。着地ミス/転がる/無様

ピエロ。体制が崩れる。すぐに戻す。

私。立ち上がる。音楽/鳴り響く/頭の中。聞こえてくる/他人の歌声。

周囲を確認。岡本発見。ピエロの向こう側にハサミ=武器。認識して私は飛び出す。

ピエロ/気付く/阻止/チェーンソー/投げる/直剣構える/口から二本目。

チェーンソー/壁に激突/当たらない/音/岡本が身じろぎ。

ピエロ/抜かせまいと剣を振るう。

私/無視/突っ込む。

右からの斬撃/姿勢を低く/回避。左/振り下ろされる/横に飛ぶ/回避/戻ってくる/右/回避/左/回避/避けつつ進む。

「のガキゃああああ!!!!」

叫ぶピエロ=滑稽/猛攻止まらず。

上から下から右左左左下右上上下下右左右左……………………

全て回避。全身傷/血流れ落ちる/少しずつ/ハサミへ触れる/つま先/隙をうかがい身を低くして拾う/すぐにピエロから離れる/岡本=盾に/切り捨てられる。

「いくよ。切り刻んであげる☆」

ハサミ/二つに分ける/両手に持つ。笑う/冷たく――わき上がる疑問。『今のはどっち?』

「へーい 出来るかお嬢ちゃん!」

ピエロ迫る/右の直剣/回避/左の直剣/受け流す/連撃/避けるあるいは受け流しピエロの懐に。

その腹に突き刺す/ハサミの片割れ。

ピエロ。血を吐き出す。内臓が傷付いたらしい。ハサミの片割れはそのままピエロの腹に。

離れる/追う/ピエロ/加速/鼻血

私/加速/リミッター第2段階へ移行。

狙う=指。切り落とそうとするが、切り落とさせない。

切られる/左肩/血飛沫/砕ける鎖骨=腕、使い物にならず。

「無問題! イエイっ☆」

余裕=強制的かつ偽造。鼻の奥から出血。血の味/口の中/歯を食いしばり、なおも加速。

ピエロ。切り落とされる左の五指。私/右のハサミ/捨てる/直剣/奪う――成功。

「くがきゃあ!!」

ピエロ絶叫/それでも止まらずになおも加速/耳から目から出血。

私/溢れる/頭から/歌/口から/漏れ出す=勝利確信。

「旧式野郎を切り刻も♪」

ピエロ/笑う/振り上げる左の手/右は防護に残す――灯る危険信号。

「足から初めて 次は腕♪」

それでも止まる気は無し/突っ込む。

「スプラッタ・スレイ・ショウ!」

ピエロ/叫ぶ=トリガー=意味はない。

その体から溢れ出す刃/奔流/噴き上がる剣/必殺を確信した笑み。

私=貫かれる/左足/腹部/胸部――ぎりぎり急所外す。

噴き上がった剣/溢れ出した刃/すぐに消える。

私。床に這いつくばる。

「HYA−HAHAHAHAHAHA!!!!!!」

ピエロ。全身から血をまき散らしながら哄笑

私。無事な右足と右手に力を込める/最後の一撃の為

「それではさよならフィナーレです!」

ピエロ大きく振りかぶる/がら空きの心臓

逃さず突貫/突き出す右手。

「きひ。AHYA」

「な、んだ、い……、かいけつ、ヤッピハッピィ……」

私/崩れ落ちる/暗示強制解除。全身に死ぬほどの痛み。

ピエロ。笑顔真っ赤。

「HYA?」

末期の一言。胸から生える一本の直剣。仰向けに倒れる。

(相打ち、か)

満足行く結果ではないが、このままここで命は尽きるのだ。納得するしかない。

あいつに復讐できないのは心残りだが、誰かが代わりにしてくれるだろう。

私は目をつぶり、ゆっくりと死を待とうとする。しかし。

「おお、なんと冷たいんだろうか、君は! 心配する者のことも考えないとは!」

聞き覚えのある、嫌らしい芝居がかった声が私の意識をつなぎ止めた。

力の入らない体に鞭打って無理矢理首だけを声の方に向ける。自分の左。すぐ近くだ。

「大、首領…………!」

かすれ声でそれだけを呟く。そこには思った通り真っ白なタキシードを着た中年男が立っていた。

その手には少し太めの杖が握られている。双頭の蛇を模した、彼曰くグノーシスの杖。私の兄に作らせた仕込み杖。そして強力な魔術の媒介。

「久しぶりだ! 亜紀! だが出来ればナイスミドルと呼んでくれないか」

大首領はそう言うと私のすぐ横に膝をつく。

「青。赤。緑。その三色混じりて、生まれ出しが命。そに黄加わりて命は育まれる」

穏やかな力が流れ込み、傷がふさがっていく。大首領は癒しの魔術を使ったらしい。

何のつもりだ。そう聞こうとしたが、声にはならなかった。眠気がおそってくる。

「眠ると良い。死にかけた獲物を殺すなど私の美学に反する」

その言葉で悟る。大首領の異能の一つは強制暗示能力。この男は私を眠らせようとしているのだ。

だから、私は抗おうとした。眠れば何をされるか分からない。

「無駄なことだ」

あっさりとそれだけを彼は言った。父親のような言い方が気にくわない。

「深く眠れ」

その声には愛おしさと、切なる望みが見えた。

先ほどよりもはるかに強い眠気がする。舌を噛もうと口を開こうとしたが、まるでかんぬきでも掛けられたかのように硬く閉じていた。すでに体の自由は奪われているらしい。

「眠るのだ」

最後に見たのは、穏やかに私を見守る大首領の顔だった。

「我が娘よ」

そこで私の意識がとぎれた。


第2話『D旧式−つなぎ』了

第3話『E形式−息抜き』へ

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