表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うち負けヒロインでおわるのゼロやから! 負けヒロイン?京都でわ始まりやちゃいますの?  作者: イサクララツカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

第25話 GWまで1週間、桂川高校は朝から手加減なし ――地獄の授業と、恋の先手必勝――

 臨海学校が終わった。

 普通の高校なら、ここで一回「余韻」ってもんがある。

 感想文とか、写真見返すとか、ちょっと浮かれるとか。

 ――でも、洛西大学附属桂川高校は違う。

 朝のホームルーム。

 担任が黒板にデカデカ書いた。

【GW明け:中間テスト】

【範囲:ここから地獄】

「えー、臨海学校お疲れ。ほな授業やるぞ」

「切り替え早っ!」

「余韻どこいったん!」

「余韻、先生の家に置いてきたん!?」

 教室がザワつく。

 でも先生は無慈悲に言い切った。

「余韻は単位にならん」

 全員、黙る。

(強い……先生強い……)

(京都の寺みたいに無駄がない……)

(いや寺は余韻あるやろ)

 しかも今日からGWまで残り一週間。

 GW明け即テスト。

 つまり、先生たちは急ぐ。

 ぶん回す。

 高速でぶん回す。

 教材も小テストも宿題も、全部ぶん回す。

「はい、ここ重要。次のページ。はい次。はい覚える。はい小テスト」

「待って待って待って!」

「待つのは信号だけや」

「京都の信号も待たされるわ!」

「はい静かに」

 地獄。

 朝から地獄。

■ 教室の温度:恋どころちゃう…はずやのに

 なのに。

 恋はテスト範囲に入ってへんくせに、

 勝手に心臓を揺らしてくる。

 寧々は、教科書を開いてるふりしながら、横目で秀吉を見る。

(……憎い)

 秀吉は、真面目にノート取ってる。

 無駄に字が丁寧。

 サッカーで膝やってるくせに、字は折れてへん。

(腹立つ。字までええ子ぶらんでええ)

 しかも、先生に当てられても普通に答える。

「羽柴、ここ」

「はい。……主語と述語の対応、やと思います」

「よし」

(“やと思います”言うて正解出すな!)

(逃げ腰のクセに、勉強は当ててくるんかい!)

 前田まつが、横から小声で刺してくる。

「寧々、今の顔、恋の偏差値落ちてるで」

「何それ!」

「脳みそが秀吉で埋まってる顔」

「埋まってへんわ!」

「埋まってる。地層や。秀吉層」

「やかましいわ!」

 前の席の利家が振り返る。

「何の話?」

「何でもない。黙って前向け」

「俺、今、前向いてるよ?」

「顔だけ後ろ向いてんねん!」

 竜子は、静かに笑ってノートを取ってる。

 落ち着いた顔。

 余裕の顔。

(……竜子、余裕ぶってる)

 寧々の胸が、チクッとする。

(昨日、帰り道で逃げたの、うちだけちゃう。竜子もや)

(でも竜子は、静かに燃える。怖い)

 恋の火力が違う。

 こっちは爆竹、あっちは炭火。

■ 放課後:先生の追い込みがえぐい

 放課後。

 黒板に張り紙が出た。

【GWまで:毎日小テスト】

【提出物:倍】

【欠点者:補習候補】

「誰がGWやねん」

GガチWワークやん」

「ゴールデンちゃう、グレーや!」

 誰かが叫んで、誰かが泣きそうになる。

 でも先生は涼しい顔。

「GWは休みちゃうぞ。自宅学習期間や」

「言葉の暴力!」

「京都弁で言うてください!」

「言うたる。『家でやり』」

「怖っ!」

 校舎の空気が重い。

 でも恋の空気はもっと重い。

 寧々は、今日こそ決めてた。

(先手必勝!)

(GWまでに、距離詰める!)

(テスト前の方が、心が弱る)

(そこを押す!)

 押しの寧々、出陣。

■ 寧々、先手必勝:勉強会という名の包囲網

 寧々は授業終わり、机をバン!と叩いた。

「秀吉!」

「は?」

 教室が一瞬静まる。

 先生ですら振り返る勢い。

 まつが即ツッコむ。

「寧々、告白みたいな呼び方やめぇ」

「告白ちゃう!作戦会議や!」

「恋の作戦会議やろ」

「違う、テストの作戦会議や!」

 寧々は、秀吉の机にプリントを置く。

「中間テスト、範囲エグい。

 秀吉、勉強会しよ」

「え、ええけど……」

 竜子がふわっと顔を上げる。

「……寧々、勉強会するん?」

 声は柔らかいのに、目が静かに鋭い。

(来た。炭火が酸素吸うた)

 寧々はにっこり笑う。笑顔の圧。

「するで。

 竜子も来たらええやん」

「……うん。行く」

 返事が早い。

 炭火、燃えるの早い。

 まつが手を挙げる。

「はいはい、うちも参加。

 寧々だけやと、秀吉が骨までしゃぶられる」

「しゃぶられるて言い方!」

「比喩や比喩」

 利家も混ざる。

「俺も行く!」

「お前は帰って筋トレしとけ!」

「勉強も筋肉や!」

「その筋肉、育ってへん!」

 秀吉が困り顔で笑う。

「……なんか、大ごとになってへん?」

「なってる。

 桂川高校は、勉強も恋も団体戦や」

 まつの名言っぽいのせいで、また教室がザワつく。

■ 竜子の静かな反撃:烏丸帰り道の“確保”

 放課後。

 帰りの阪急。

 寧々は河原町へ。

 竜子と秀吉は烏丸で降りる。

 ここが――竜子の“静かな勝ち筋”。

(寧々は先に動いた。

 でも帰り道は、うちの時間)

 竜子は、表情はいつも通り。

 声もいつも通り。

「秀吉、今日の小テスト、難しかったね」

「うん……英語、急に走ってきたな」

「走ってきた、って何」

「いや、追いかけても追いつかんやつ」

「……秀吉、比喩が謎やわ」

 軽く笑い合う。

 この“普通”が、竜子には嬉しい。

 でも胸の奥は震えてる。

 昨日、ケーキとお茶で鎮火しようとして、

 結局鎮火できへんかった火が、今も燃えてる。

(顔見たら震える。

 でも今日は、震えを見せへん)

 竜子は、歩幅を合わせる。

 さりげなく。

 自然に。

「……勉強会、うちも行くから」

「うん、来て」

「……うん」

 たったそれだけで、

 竜子は心の中で小さくガッツポーズした。

(確保)

(静かに確保)

■ 寧々の心:勝ちに行く。負けヒロインはゼロ。

 その頃、寧々は河原町へ向かう電車の中で拳を握ってた。

(竜子と秀吉、烏丸で一緒に降りる)

(知ってる)

(知ってるから、うちは“別の道”で刺す)

 寧々は、カバンのマスコットを撫でる。

 パーサ君とコトノちゃん。宝物。

(秀吉は覚えてへん)

(でも、うちは覚えてる)

(覚えてる方が強い)

 そして、宣言する。

(先手必勝や)

(勉強会という名の包囲網)

(GWまでに、距離を詰める)

(負けヒロインで終わるの、ゼロやから!)

 恋も、勉強も、桂川高校は手加減なし。

 地獄の一週間が始まる。

 でも――

 寧々は、地獄の方が燃えるタイプや。

「……よっしゃ」

 小さく呟いて、寧々は笑った。

 目は真剣。

 心臓は、やかましい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ