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うち負けヒロインでおわるのゼロやから! 負けヒロイン?京都でわ始まりやちゃいますの?  作者: イサクララツカ


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第17話―すれちがいの純情。天橋立、迷子は二人と一人 (まつツッコミ多め)

松並木の道を抜けて、班の集合っぽい場所に戻った瞬間、

 秀吉は「ただいま」みたいな顔で合流した。

「おーい秀吉ー! 遅いねん!」 「膝どないや! 大丈夫か!」 「大丈夫……やと思う」 「ほら出た! “やと思う”!!」

 前田まつのツッコミが、天橋立の空に響く。

 前田利家はというと、観光客みたいに首からタオルかけて、

 ソフトクリーム片手にご機嫌や。

「まつ、怒りすぎや。

 海見て心落ち着け。波や波」 「波で落ち着くのはお前の脳みそだけや!!」

 利家、ちょっとしょんぼりして、ソフトの先っちょ舐めた。

「……塩味する」 「それ潮風や!! 味覚バグってる!!」

 秀吉は苦笑いしながら、膝を軽くさすった。

「ごめん、ちょい休んでた」 「せやから言うたやろ、無理すんなって」 「無理してへん、休んだ」 「休んだなら、最初から一緒に休め!!」

 まつの正論パンチ。

 利家は隣で「まつ先生こわ…」みたいな顔してる。

 秀吉は、ふと周りを見回して――

「……あれ」

 眉を上げた。

「寧々と竜子は?」

 その一言で、まつの眉がピクッと動いた。

「……は?」 「いや、寧々と竜子。どこ行ったん」 「え、待って。秀吉、あんた……」

 まつは一拍置いてから、ゆっくり言うた。

「二人、あんた迎えに行ってへん?」

「……え?」

 秀吉、固まる。

「迎えに?」 「そう。あんた膝やばい言うて一人残ったやろ?

 あの二人が“気になる”言うて、ふらっと消えたんやけど」 「……え、マジで?」 「マジでや」

 秀吉の顔色が変わった。

「俺、戻ってくる途中、

 二人とも会うてへんで?」 「……は?」

 まつの声のトーンが、危険な方に落ちた。

「会うてへん……?」 「会うてへん。

 松のとこで休んでて、戻っただけや」

 利家がソフトを持ったまま、ぽんと手を叩く。

「ん?

 それ……」

 利家、なぜかドヤ顔。

「すれちがいの純情やな」

 まつ、無言で利家を見る。

「……何その、

 昭和の歌謡曲みたいなまとめ方」 「え、ええやろ? 純情やぞ?」 「純情はええ!

 問題は、二人が行方不明っぽいことや!」

 利家、きょとん。

「え? 行方不明って大げさやん」 「天橋立は一本道ちゃうねん!

 展望台も神社も土産物屋もある!

 観光客も多い!

 この状況で高校一年女子二人が別々に動いてたら、

 “すれちがいの純情”とか言うてる場合ちゃうねん!!」

 まつ、息継ぎなし。

 利家、完全にソフトが溶けて垂れてきてる。

「まつ、落ち着け。ほら、ソフト落ちる」 「落ちるのはお前のソフトじゃなくて二人の理性や!!」

「え、理性!?」 「黙れ!!」

 秀吉は、真面目な顔になってスマホを出した。

「とりあえず電話するわ」

 ――が。

「……あれ?」

 画面を見る。

「圏外……?」 「天橋立、場所によって弱いねん」 「なんでやねん、ここ観光地やぞ」 「京都府やからや」 「それ雑すぎるやろ!!」 「でも当たってる気がするのが腹立つ」

 まつは自分で言って、自分でイラッとしてる。

「LINEは?」 「……送れた……っぽいけど既読つかん」

 秀吉の額に、汗が浮かぶ。

「俺、探しに行く」 「膝は!?」 「探すくらい歩ける」 「歩ける言うて、帰りに死ぬやつや!」

 まつが腕組みして、利家を見た。

「利家」 「はい」 「お前、足長いから偵察」 「はい」 「“はい”の返事が素直すぎて逆に怖い」 「まつが怖いからや」

 秀吉が困った顔で言う。

「二人、別々に動いたん?」 「たぶん。

 寧々は“トイレ”言うて消えた」 「絶対嘘や」 「せやろ?

 竜子は“秀吉大丈夫かな”みたいな顔して、静かに消えた」 「……竜子らしい」 「で、二人とも帰ってきてへん」

 利家が口を挟む。

「ほら、やっぱり純情やん」 「純情の意味、辞書で引け!!!」

 まつのツッコミが冴え渡る。

 秀吉は、少しだけ顔をしかめた。

(俺のせい……か?)

 膝が痛い言うた。

 一人で待つ言うた。

 そしたら二人が動いた。

 秀吉がため息を吐いた、その時――

「……あれ?」

 利家が遠くを指差した。

「なんか、松の陰から……」

 そこには。

 寧々が、顔真っ赤で、フラフラ歩いてくる。

 そして反対側の土産物屋の方から。

 竜子が、震えを誤魔化すみたいに深呼吸しながら歩いてくる。

 二人とも、目が泳いでる。

 でも、視線はなぜか秀吉に吸い寄せられている。

 秀吉は、ほっとして息を吐いた。

「お、お前ら! どこ行ってたん!」 「……別に」  寧々、即答。声裏返り気味。 「……散歩」  竜子、静かに即答。声ちょい震え。

 まつが、二人を交互に見て、

 ゆっくり言うた。

「……迎えに行ってへんのに、

 二人とも同じ方向から帰ってくるの、

 どういうこと?」

 寧々が叫ぶ。

「偶然や!!」  顔が赤い。 「偶然です」  竜子、真面目に言う。震えてる。

 利家がニヤニヤしながら、

 空気読まずに言うた。

「な?

 すれちがいの純情やろ?」

 まつ、利家のソフトを指差す。

「利家」 「はい」 「そのソフト、もう液体や」 「えっ!? うわぁぁ!!」 「お前の恋愛観も液体や!!」

 利家、悲鳴。

 秀吉、困惑。

 寧々、赤面のまま怒ってる。

 竜子、震えを隠そうとして失敗してる。

 まつは頭を抱えた。

「……はい、理解した」

 そして、班長の顔で宣言する。

「今日の自由行動、

 この班、絶対にバラけさせへん。

 京都の女の勘が言うてる。

 次バラけたら、事件起きる!!」

「事件って何!!」  秀吉が聞く。

 まつは、寧々と竜子を見て、

 ゆっくり言うた。

「……“すれちがいの純情”が、

 “火事”になるやつや」

 寧々、顔真っ赤のまま叫ぶ。

「火事て!!

 うち、放火ちゃうわ!!」 「自覚ない放火が一番怖いねん!!」

 竜子も小さく、でも真剣に言う。

「……私も、火種は否定できへん」 「否定しろ!!」

 まつのツッコミが、今日も天橋立に響く。

 そして秀吉は、ようやく気づきかける。

(……俺、なんかした?)

 利家が、溶けたソフトを見ながら、

 しみじみ言った。

「青春って、溶けるんやなぁ」 「黙れ!!

 まずそれ、拭け!!」

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