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 ボイドが「祖父が殺した」と告白した瞬間、刀である私の意志は揺れ動いた。私もエルゼも刺した現場を見ていないからだ。

 姿を実体化出来るからとは言え、私は物だ。神ではない。すべてを見通せないのだ。


 私とエルゼが集めた証拠と真実が足りないのでは……。


 そう思った瞬間、私の刃が錆びていった。無実の人間を殺すかもしれないと言う事実が、私の刃を錆びさせていく。


 そして、意志が揺れ動いている者がもう一人。




***

 オルトに「初め!」と言ったが、エルゼは刀を振り上げたまま、動かなかった。瞳は怒りから迷いが生まれていた。

 乱暴者に怯えるボイドを見下ろして、エルゼは動かなかった。


 エルゼは泣きそうな顔になりながら、「審判、彼と話しをしてもいいですか」と言って刀を下ろした。

 オルトは「待て」と言い、再び和解への話し合いになった。


「あなたの話しは本当ですか?」

「え?」

「あなたは両親を殺していないって事」


 エルゼがそう聞くと、ボイドは息を吹き返したように「ああ、そうだ!」と言い、首を縦に振った。


「父さん、……いや、君から見て祖父が殺したんだ!」

「そう、分かりました。その話し、信じます」


 冷静にエルゼは言い、ボイドの口元が緩んだ。

その瞬間、「でも!」と彼女は怒鳴った。


「強盗に襲われたと言う嘘を言って、祖父を庇った事を私は許さない! あなたが提示した和解案に乗るが、あなたを私は一生恨む!」


 エルゼはそう告げ、刀の私を鞘に戻し、一礼をした。




 そうしてエルゼは決闘場を出る。そこにはサーカス団のみんなが待っていた。

 エルゼは俯いて泣いてしまい、叔母が優しく抱きしめる。


「ごめんなさい。敵を討てなくて」

「謝らないで、エルゼ」


 しばらく叔母の胸で泣いていたエルゼだったが顔を上げて、みんなを見ながら「今まで、ありがとう」と言った。


「こんな結果になって、ごめんなさい」

「いや、だから謝るな」


 そう言ってラコンテがエルゼの肩を叩く。


「エルゼが死にたくなるくらいの後悔しなければ、俺はそれでいいよ」

「でもきっと後悔すると思うよ」

「うん。でもあいつの言葉を信じないで殺して、だけど少し時間が経ったらもしかしたら本当だったかもって思い出して罪悪感で苦しんで死にたくなるだろ」

「そうだね」


 そう言って、エルゼはもう一度泣いた。




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