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「【ルドバン公爵夫人殺しの決闘裁判への批判】?」

「これ、オルトさんの母親殺しの裁判なの」

「え? オルトって白い結婚の決闘裁判で証人として来た牧師だよな。と言うか公爵の家の人だったのか……」


 ラコンテは新聞を読み進めると「理不尽な話しだな」と呟いた。


「病死した母親は殺されたって父親が訴えられて、決闘になって父親は死んでしまった……。今はルートゥリア公爵って奴が継いでいるのか」

「彼の父方の叔父ですって。だけど、引き取った後すぐに牧師になるために教会へ入ったそうよ」

「……読んでみると、決闘裁判に反対している人が多いんだな」

「やっぱり残酷だからね」


 エルゼは遠い目をしながら、そう言った。

 確かに決闘と言うものは残酷だ。負けた人間は実質的な死か社会的な死しか無いのだから。

 我が国にいた時も、私は決闘をする事があった。決闘に対しての内容は様々だが、特に親殺しが多かった。

 と言うのも我が国では土地を守る者が殺された場合、その子供が仇を討たないと跡を継げないのだ。だが幼い子供の場合、戦えない者が多いため私が【助太刀】していたのだ。

 奇妙な縁で我が国をここに来たのだが、エルゼも同じことをやっていて不思議な気持ちだ。

 ちなみにこの国で、一番多い裁判は土地の権利をめぐる係争だ。


 ラコンテは長い時間をかけて記事を読み、「はあ」とため息をついた。結構、難しい記事だったようだ。


「難しいな、決闘裁判って」

「まあね。真実や正義を言うものに神が付く。だから戦って勝った方が正義で真実って言う建前だけど、結局戦う者の実力になって来るから」

「……まあ、そうなんだけど」


 ラコンテは何か言いたそうだが、難しくてどういえばいいか分からない顔をしていた。それをエルゼは平気そうな顔をして「大丈夫よ」と言った。


「ちゃんと戦うから」

「そうじゃないよ」


 ラコンテは首を振って、「そうじゃない」と繰り返し言う。エルゼは不思議な顔で「どういう事?」と聞いた。だがラコンテは何と言っていいか分からないようで難しい顔をしたままだった。




***


 そうして決闘裁判、当日となった。今回、オルトが審判となり、「それでは宣誓をお願いします」とエルゼとボイドに言った。


「全知全能の神が紡ぐ言葉の葉よ、お助けください。行方不明中の姪、エルゼ・ローエングリンと騙る者が現れました。これが詐称であることを私は誓います。私の権利によってこのことを証明します」


 ボイド・ギャトレー子爵はラコンテの父親、サーカス団の団長よりも年下だったはず。だが白髪で顔は皺が多く、まるで老人のように見えた。あの事件の時は苦労が絶えない雰囲気はあったが、十数年でここまで変わるのか……と驚愕した。

 彼の宣誓が終ったので、エルゼも聖書に触れて口を開いた。


「全知全能の神が紡ぐ言葉の葉よ、お助けください。私は本当のエルゼ・ローエングリンであると言うのに詐称していると訴えられました。これが間違いであることを誓います」


 エルゼは少し黙って「そして」と続ける。


「両親を殺したのはボイド・ギャトレー子爵であることをここで訴えて、証明します」




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