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 リラが普通の女の子であるという証明が出来た決闘裁判から一週間がたった。


 現在、エルゼはグレーテル国の女性だけの修道院で、ベッドや机がある小さな部屋で一日中、過ごしている。修道女たちに「何か手伝えることはあるか?」と聞いているが、いつも断られて、トイレや入浴以外は外に出られない状況だ。部屋に出る時は見張りの修道女たちについて行かれて、息が詰まるような雰囲気である。


 心当たりがありすぎるためエルゼは逃亡や反抗することは無く、私の手入れや修道女たちに借りた聖書を読んだりしていた。

 幸運なことに業物である刀の私とエルゼから取り上げられることは無かった。




***

【ローエングリン子爵当主と妻、強盗に殺され、愛娘が誘拐される】


 シルビアの国にいた書籍売りから頼んでもらった新聞の切り抜きを、エルゼは眺めていた。すでに私の手入れや聖書を読むのに飽きて、自分の事件についてまた再読していた。


「……ここの人に新聞とか取り寄せてもらおうかしら」


 そんなことを呟いていると、ドアのノック音が聞こえてきた。エルゼはドアを開けると修道女がおり、「お客様です」と言った。

 初めての来客だ。エルゼは「どちら様ですか?」と聞いた。


「オルト・ルートゥリア様です」


 意外な来客である。エルゼのそう思ったようで、少々驚いた様子だった。

 修道女の案内で修道院の応接間へと向かう。廊下を歩いていると静かな空間が広がっている。人里離れた場所に建てられた修道院で、修道女たちも落ち着いている。近隣にある森にいる鳥の声、風の音、それくらいしか聞こえない。

 そんな空間をエルゼは歩いていると、応接間に着いた。案内した修道女は一礼して、去って行く。どうやら一緒に聞かないらしい。

 エルゼはキョトンとした顔になったが、すぐにノックをして入室した。


「お待たせしました」


 そう言ってエルゼはカーテンシーをする。オルトは頭を下げる。エルゼは頭を上げて、微笑み「お久しぶりです。オルト様」と言うと「ああ」と彼は答えた。

 エルゼは向かい側の椅子に座って口を開いた。


「どういった処罰が下るんでしょうか?」

「ん? 処罰?」

「ええ、守護者が出る精霊の盾を壊してしまいましたから」


 そう言うとオルトは大きなため息をついて、「処罰なんて出来ないよ」と話した。


「すべては違法に審判を行い、我が教会が納める盾を無断で持ち出して、和解しないで決闘し、負けた。すべての元凶はバスロ牧師にあると判断している。そして君はリラと言う少女が普通の少女であることを証明するために戦って勝っただけだ。処罰する理由が見つからない」


 更にオルトは眉をひそめながら「それに……」と続けた。


「もし処罰されそうになったら、君は覆るために決闘裁判を起こすだろ?」


エルゼは答えずに優雅に微笑んだ。オルトの考えはあっている。もし処罰されそうになったら、彼女は裁判を起こすつもりだった。

 このエルゼの態度に、オルトは「……やっぱり。決闘裁判は野蛮だ」と呟いた。




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