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「申し訳ございません。精霊が出る武器を持ってくるのに、手間取ってしまいまして……」
「……許可証を出していませんね」
審判は呆れた眼差しで見るが、バスロ牧師は気にしないで「では、始めましょう」と言ってきた。
「あの許可証を出してください」
「それは試合後に出す」
何にも気にしないバスロ牧師に何か言いたそうな審判ではあったが「それでは宣誓してください」と言った。
エルゼとリラは聖書に手を置いて口を開く。
「全知全能の神が紡ぐ言葉の葉よ、お助けください。私、リラはバスロ牧師が行った間違った神判により魔女であるとして処刑を言い渡されました。これが冤罪であることを私は誓います。私は、私の権利によってこのことを証明します」
二人の宣誓が終って、バスロ牧師が聖書を手に置いて宣誓をする。
「全知全能の神が紡ぐ言葉の葉よ、お助けください。私、バスロ牧師は正式な手順を踏んでリラを魔女であるとして処刑を言い渡されましたのですが、これを不服として決闘を挑まれました。私が行った神判が正しいことを私は誓います。私は、私の権利によってこのことを証明します」
さすがは牧師と言わんばかりのハッキリとした声の宣誓だった。
バスロ牧師の宣誓が終って、審判が「初め」と言った後、にエルゼは「和解のための話し合いをしたいと思います」と言った。
「それに聞きたいと思いませんか? リラさんの父親の謎を」
***
「リラさんの父親の存在を、バスロ牧師は気にされておりましたよね。父親の存在を隠したり、分からないとしたら、悪魔であると思い込み神判を行った」
「それ以外にも理由はある。どうして彼女は画期的な農業方法や強い種を持っていたかの情報の出どころが不明だ」
「それについてもお話ししましょう」
そう言ってエルゼはリラのローブに視線を向けると、バスロ牧師は目を見開いた。
「リラさんが来ているこちらのローブ。とあるエルフの一族が大人になった時の証だそうです。幸福の証と考えている四葉のクローバーをあしらったものです」
「それはクローバーの民か!」
「はい。ピクシの民が農園をしていた場所で、かつて深い森に住んでいた賢いエルフの一族です」
ここでバスロ牧師は大きく目を見開いて、「やはり、悪魔じゃないですか!」と怒鳴った。
「彼らは知恵と武力を持って人間達を滅ぼそうとした……」
「それはかつての話しだし、本当にそうだったか分かりません。ですか、彼らは教会と戦い負けて遠くの森へと生き残りました」
「審判! なんで彼女を処刑しないのですか? 同じ牧師でしょう」
バスロ牧師はエルゼでなく審判である牧師に訴えるが、審判は面倒くさそうな顔になって「私の教義では、エルフは脅威のある一族ではないです」と言った。
エルゼは気にしないで話しを続ける。
「リラの父親はクローバーの民でした」
傍聴人は感心したようなため息が聞こえる中、エルゼは「半分だけですが」と付け加えた。




