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「こちらが私の夫が持っていた品です」
裁判の書類にサインして、リラはハーバードクラー公爵の馬車でお世話になる教会へと向かった。
そしてエルゼはラコンテと一緒にリラの父親が残した品を見ていた。またピクシの民達も集まってきている。
父親の遺品はローブと古い簡単なノートのみ。
エルゼはノートをめくったが、諦めた顔をしてすぐに閉じた。周辺諸国で多くの者が使われている文字ではなかったので読めないみたいだ。
一方、ラコンテはローブを広げる。大切に使われていて、破けた部分は丁寧に直されている。ローブには大きな色褪せた黄色い四つの花弁の花が刺しゅうで描かれている。
「……このローブに刺しゅうされた花って何だろう?」
「どこかの民族のシンボルかもしれないね」
「この花さえわかれば、絞り込めるかもしれないな。なんだろう? パンジー?」
だが母親は「実はそれは花じゃないんです」と答えた。
「一度、このローブの模様について聞いたんです。そしたら『花ではない』と言っていて、『幸せ』のシンボルとも言っていましたね」
「あ、そう言えば、四葉のクローバーをリラさんは『見つけたら幸せになれる』って言っていましたね」
「じゃあ色褪せているけど、これは花じゃなくて四葉のクローバーかな?」
そんな話をしていると野次馬で集まってきたピクシの民達が「もしかして、あいつらの事じゃないのかな?」「ああ、あのエルフたちか」と話し出した。
エルゼが「何か知っているんですか?」と聞くと、ピクシの民の一人が話し出した。
「近くの村の長老が飢饉で逃げ出した人たちが住み始める大昔は、エルフの森だったって言っていたんだ。そのエルフはかなり賢くて狩りも上手くて、何より強かったんだ。だけどそれが教会の人間達に危険視されて滅ぼされたんだって。その生き残りがどこかの森に住んでいるって話しをしていたな。そいつらはクローバーをシンボルにしていたって話していたぞ」
「多分、隣の隣の領にある大きな森じゃないかな? あそこの領は飢饉の時、エルフの民に知恵をもらって助けてもらったことがあるらしいぞ」
「そんな話しをしていたな。それに黄色の花みたいな刺しゅうをつけたローブを着ていたって言っていたし」
おしゃべりで自由人なピクシの民から、様々な情報が出てきてエルゼとラコンテはにっこり笑う。
彼らの情報を集めて精査して、二人は早速調べ始めた。
***
あっという間に裁判の日になった。すでに会場は作られており、ピクシの民達全員が傍聴席に集まった。貴族席にはハーバードクラー公爵も座っている。
裁判が始まる前、エルゼは原告の控室にしている小屋でリラに父親の出生について話した。聞いているリラは涙を流していた。
「ありがとうございます。お父様について調べてくれて」
「いえ。裁判に必要なものですから」
エルゼは「それから……」と言いながら、あるものを出した。それは父親が着ていたという四葉のクローバーの刺しゅうが付いたローブだ。
「お母さまがリラさんの背丈に合わせてお直ししてくれました。これを着て決闘裁判に挑んでほしいと」
リラは涙を拭いてローブを受け取った。




