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「決闘令嬢?」

「ええ、そうです。決闘令嬢として、この判決をこの刀で非難します」


 そう言って私である刀を取り出すと、バスロ牧師は小さく悲鳴を上げた。先ほどまでの強気な態度は消え失せた。


「お、お前は何者だ! 非難出来る者は親族だけだぞ!」

「私は彼女の親族ですよ」

「この娘の母親の家系は把握しているが、お前の名前は無かったはずだ!」

「ピクシの民は全員、親戚なんです」


 澄ました顔をしてエルゼが言うと、ピクシの民の観衆は「そうだ!」という声が出てきた。


「というわけで、我々は親族です。これにより正式に手続きして判決非難をして決闘裁判をします。そしてリラが普通の女の子であることを証明します」

「つまり神が下した判決を非難するのか? 傲慢だ!」

「傲慢なのは、あなた、です! 神判や裁判は本来、日中に行われるものですよ! あなたの都合で、夜にやっているんでしょう! それに私は神を非難するつもりは毛頭ない! 神の判決を読み間違えたバスロ牧師、あなたを非難するんです!」


 いつもより怒りを込めて言ったエルゼ。それに答えるように観衆も「そうだ!」「お前が間違えたんだ!」とヤジが飛ぶ。

 バスロ牧師や仲間たちがたじろぐ。ピクシの民の事を【劣等】とか言っているから、知識と口が立つエルゼに太刀打ち出来ないようだ。


 そんな時、一台の馬車が現れた。紋章が付いており、かなり位の高い人間が乗る馬車のようだ。ピクシの民は「誰だ?」と不思議がっているが、バスロ牧師はマズイと言った顔になり、「あの紋章はハーバードクラー公爵の者だ」と呟いた。

 どうやら大物が来たようだ。




***


 馬車が初老の綺麗なスーツを着た男性が出てきて、舞台に向かう。明らかに強い権力を持った雰囲気を持った者でピクシの民も自然と道を作る。

 やがて舞台にあがり、手を怪我したリラを見て「この子の手当てを」と舞台にいるピクシの民に言う。我先にと舞台からピクシの民がリラを運び出そうとしてバスロ牧師は慌てる。


「お待ちください。この子は犯罪者ですよ」

「だとしたら、どんな罪を犯したんだ?」

「この領地を混乱に陥れた罪です。公爵様」

「私はこのリラと言う少女のおかげで、この不毛の地を豊かにしたと聞いたが?」


 そして公爵は「それから、この地は私が納める事にした」と言い、バスロ牧師は「やはりか」と呟いた。


「この地を納める者として、このような騒ぎを起こすことは許さない。さっさとこの茶番を終わらせて……」

「恐れ多いですが、発言させてください! ハーバードクラー公爵!」


 そう言って、バスロ牧師は一枚の書類を出した。公爵は書類を手に取って読んでいたが、しばらくすると目が見開いて「なんだ、この書類は」と怒り出した。


「ここの領主のグラファ子爵様と交わした契約です。リラの素性を調べ、怪しい場合には神判をして、もし魔女のような事をしていた犯罪者だったら処刑をしても構わないと了承を得ています」


 本当に許可したのか……、ここの領主は! と、恐らくピクシの民の全員が思っているだろう。エルゼも唖然としている。

 更にバスロ牧師は話す。


「それにまだあなた様は、まだ領主としての手続きは終わっていないはずです。だからこの契約は有効です」

「今の領主は病気で公務が出来ない」

「ですが、この契約は有効です。あなたが来る前に行われたので」


 釈然としない返答だったが、公爵は頭が痛いような顔をして黙った。そしてエルゼを見て、「君は何者だ?」と聞いた。


「決闘令嬢で、リラの親戚でございます」


 そう言って貴族っぽくカーテンシーをするエルゼ。


「彼らがリラも灼熱の棒を握って判決を下す熱鉄審判を行い、魔女と決めつけて処刑しようとしていました。私がこの判決を非難し、決闘裁判でリラが普通の女の子であることを証明したいと思います」

「何と罰当たりな」

「黙れ!」


 ハーバードクラー公爵の言葉にバスロ牧師は首をすくめる。


「分かった。深く事情を聴きたいから個別で話しを聞く。皆の者、これで解散せよ」


 そう言って、この熱鉄神判と言う茶番を終わらせた。



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