エピローグ 1
「さあ! 百戦錬磨の巨人が丸太を投げました! しかし! そこには可憐な令嬢がおります! 危なーい!」
百戦錬磨と言うには優しすぎると思う巨人 ゴーシュが投げた丸太は一直線にエルゼの方へと向かった。だがエルゼは大きく武骨な剣を振りかぶって丸太を切り裂くフリをした。
すると丸太は一刀両断で切り裂いて、エルゼの間に落ちた。お見事。
その瞬間、観客から大歓声が沸いた。
「いやはや、皆さん。驚きましたね。こちらは我がアルコバレーノ・サーカス団の凄腕女性騎士 エルゼ嬢です」
ラコンテの兄の紹介でエルゼはそっとカーテンシーをして、観客は歓声と拍手が上がった。
クレアのいる修道院の敷地でエルゼたちはサーカスを開いていた。決闘裁判後はかなり観客が増えて、今日で千秋楽だ。
最後まで盛り上がっていたサーカスは終わり、舞台でみんながお辞儀する。すると観客達から大きな拍手が挙がった。
観客が帰った後はみんなで後片付けをする。
そんな時、ファニーから「エルゼ」と呼ばれた。
「お客さんがエルゼ指定でお呼びだよ」
「あれ? 誰だろ?」
「確か決闘裁判で証人として出ていたオルトさん? だったかな? その人だよ」
エルゼは意外そうな顔をして、オルトがいる場所に向かう。そして当然のごとくラコンテも後に続く。
「ちょっと、ラコ兄ちゃん。なんでエルゼの後を付いて行くの?」
「いや、今行かないでいつ行くんだよ! エルゼに何かあったら、次の公演はキメラのミーコと曲芸しないといけないじゃん!」
「牧師だから紳士だよ。さあ、ラコ兄ちゃん。これ持って」
「いや、重いし」
ファニーとラコンテの会話をエルゼは少し笑いながら、刀である私を持ってオルトの所に向かう。
サーカスのテントから少し離れたところにオルトはいた。
「オルトさん。裁判の時はありがとうございました」
「いや、別に」
素っ気なく言うオルトは「うまいもんだな」と話し出した。
「丸太斬り。ガスラに襲われた時も軽くあしらっていたけど」
「あれ? サーカスを見ていたんですか? 嫌いだと思っていたんですけど」
「嫌いではない。ただ裁判の前でやるなって話だ」
エルゼは「なるほど」と呟いた。
「今日が千秋楽だから見に来ただけだ」
「お越しいただき、ありがとうございます」
「それと君に聞きたいことがある」
そう言ってオルトはエルゼを見据えて口を開く。
「決闘裁判について、どう考えている?」




