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10

 国へと入ると綺麗に整った道が続く。だが決闘裁判が行われる広場に入る道は凸凹していて、馬車がガタガタと揺れた。


「王都まで行く道はとってもきれいにしているんですが、他の道は整備して、いないんです。うわ!」

「もう、お尻が痛い」

「ぎゃ!」


 悪道で揺れる馬車内でクレアやエルゼ、ラコンテは悲鳴をあげたり、お尻をさすったりしていた。

 馬車の窓から見ると大通りの道じゃないと浮浪者のような汚い服を着た人が居たり、ゴミが散乱していたり、窓も割れていたりと治安が悪そうだ。

 あまりいい国じゃなさそうだな……と思った。

 少々治安の悪い場所を眺めながら、ようやく決闘裁判が行われる広場にやってきた。




***

 決闘場へと行くとすでに証人であるオルト・ルートゥリアが待っていた。


「初めまして。オルト・ルートゥリアです」


 ものすごく真面目そうな雰囲気の男性だった。堅苦しそうな詰襟の牧師服と丸眼鏡、一切表情を崩さない厳しい顔を崩さないが思っていたより若いと思った。三十半ばくらいか。

 クレアが自己紹介をして、エルゼとラコンテを紹介する。


「この度はありがとうございます。わざわざ他国からお越しいただいて、証人として来てくださって」

「当然です。実際に私も契約書に名前を書いているため、それが虚偽と言われたら反論しなければいけません」


 随分と堅苦しい感じで言うオルトにクレアは「それでもありがとうございます」と頭を下げる。

 そしてオルトは眉をひそめてラコンテを見る。


「それで君が代闘士か?」

「代闘士?」

「決闘士の別名だよ、ラコンテ」


 どうやらオルトはラコンテを決闘士と勘違いしたようだ。そこでエルゼが「私が代闘士です」と名乗った。すると当然だがオルトは眉間に深いしわが刻まれた。


「はあ? 君が決闘士?」

「はい。私が戦うんじゃなくて、この剣の精霊である助太刀が戦います」

「精霊って、教会や王宮などにある人の姿を現す宝石とか武器とかの精霊か?」


 更に眉間にしわを入れて聞くオルトにエルゼは「そうです」と答える。するとオルトは眉間を指で押さえて少し考えた。


「なるほど。でもあなたの出番はないと思います」

「え? どういう事でしょうか」

「契約書が存在して違反もしていないんだから、決闘する意味なんて無いでしょう。和解どころか宣誓する前に終了しますよ。こんなので、いちいち裁判していたらキリがありません」


 オルトが眼鏡をくいっと上げて言っていると、歓声が上がった。

 先に到着していたアルコバレーノ・サーカス団の芸に民衆が驚いたり、楽しんでいる声だ。この光景に今まで以上に眉間にしわを入れたオルトは「誰だ、サーカス団を呼んだのは!」と怒り出す。


「決闘裁判って言うのは神聖なる神の采配だ! それなのにサーカスなんて呼んで! 裁判について何も分かっていないんじゃないのか? この民衆は! この裁判が終わったら上司に報告してやる!」


 烈火のごとく怒るオルトはさっさと決闘場の横にある小屋に入って行った。この小屋は原告が決闘になるまで待っている控えの小屋だ。

 サーカス団の一員であるラコンテは「うわ、ヤバい奴」と呟き、クレアは苦笑いをする。そしてエルゼは微笑んでこう言った。


「なかなか心強い証人ね」



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