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基本的にエルゼはサーカス団の中では、あまり話さない。
元々エルゼ自身がいい暮らしをしていたのでサーカス団の中では異質な雰囲気があったり、過去の記憶で辛くなってしまったり、そもそも団員の中で話が合わなかったり、……様々な要因でエルゼは一人でいることが多い。
そう言ったエルゼを、みんなの中に連れていくのがラコンテだ。
「ボツ」
「はああああ! なんでだよ!」
夕飯と食べた後、ラコンテが「読んでくれ」と頼まれた脚本を全部読んだエルゼ。そしてすべてを読み終えた彼女はあまりにも無情な評価を下した。
「どこが悪いんだ。確かに【助太刀】を普通の騎士の剣にしたところか? だって極東の国の文化なんて知らねえもん。あいつが着ている【着物】? って言う服だって手に入らないし。設定を変えちゃったけど、これはしょうがなく……」
「違う。すべて」
どうやら決闘令嬢 エルゼの活躍を描いた脚本のようだ。極東の国の文化や歴史など周辺諸国の王族ですら知らない者も多いだろう。だから私が騎士の設定にするのは別にいいが、エルゼはすべてが嫌らしい。
ちなみに理由は「だって恥ずかしいもの」と彼女は答えて、ラコンテは呆れる。
「今更、恥ずかしいって。お前が決闘場でやっていることは平気なのに」
「それはそれで、これはこれだもの」
「違いが分からない」
ラコンテは首を傾げながら脚本を見ながら、「絶対に成功するのに」と呟く。
そんな時、遠くで話しを聞いていたゴーシュがやってきて「エルゼが本人役でやったら?」と言ってきた。
「本人がやった方が……」
「そっちの方が、恥ずかしい!」
珍しく語気を強めてエルゼは言い、ゴーシュとラコンテは笑った。
***
みんなが就寝する頃、エルゼはその場からそっと離れようとする。それをラコンテの母親に見つかり「こら、エルゼ」と注意をされた。
「また一人で寝ようとしているでしょ」
「……いや」
「ガーディンの近くのテントで寝なさい。野獣もいるかもしれないけど、犯罪者がうろついている事もあるんだから」
エルフたちのために国と国の間に森を残せという決まりだが、犯罪者の潜伏先になっている事もある。国の外で森の中だから分からないし、エルフたちも住まない森もあるので、犯罪者も隠れやすいのだ。
「あんたは、弁は立つけど、さすがにその刀で襲ってくる犯罪者達には太刀打ちできないでしょ。あんたに何かあったら、死んだ姉さんに顔向けできないわ」
「じゃあ、ちょっと稽古してから……」
「分かったわ。でも寝る時はテントに居なさい」
まだ色々と言いたい事がありそうなラコンテの母親だったが、結局エルゼの稽古に行くのに許可した。
エルゼが向かったのはキャンプをしている所から少々離れた場所。そこには背が高く、屈強なエルフとラコンテの兄で副団長、そしてラコンテもいた。
ここで二人は護身術の練習をしているのだ。
「エルゼも一緒に稽古するか?」
「はい! やります!」
そう言って袋から刀である私を取り出した。
稽古と言ってもエルゼがやっているのは素振りだ。エルゼは女の子に比べて体力はあるだろうけど、屈強なエルフのシュマと打ち合いはまだ早い。ただ素振りの姿勢についてシュマは分かっており、的確な指摘をする。
数時間、素振りをしたのちシュマにお礼を言って、ガーディンが見張るテントに戻った。




