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第16話 ワープですにゃ!

 石畳が敷き詰められた商業地区の街道の上空には、たくさんのカラフルな布がひらひらとはためいている。


 その極彩具合が僕の焦りを加速させる。


「ソフィーさん!」


 この世界で僕たちの保護者的立場だったソフィー。


 いなくなったのはソフィーなのに、まるで僕たちが迷子になったかのような不安が押し寄せてくる。


「ニャモ! 喫茶店を探した時みたいに調べられないのか!?」


「にゃ……あれは空気中に漂うコーヒーの粒子を追っただけなのですにゃ……」


「コーヒーの粒子? 今、それは追えないのか?」


「ここは色んな匂いが充満していて難しいのですにゃ……。力不足なニャモで申し訳ないのですにゃ……」


「ツカサ、粒子ってなんなのだ!?」


 あぁ、こんな時にヨルが質問してくる。


「粒子ってのは、すごくちっちゃい欠片みたいなものかな。それよりもソフィーを……」


「ちっちゃい欠片って、たとえばあんな感じなのだ?」


 ヨルの指さした先。


 そこには、コーヒー豆が()()()落ちていた。


(ん? あれ? これって……さっきソフィーが抱えてた……?)


 ひと粒だけ? さっき地面にぶち撒けられてたやつじゃなく?


「ツカサ、こっちにも一粒落ちてるのだ!」


 少し離れたところにまた一粒。


「ニャモ!」


 ニャモの顔のモニターにピコペコという高音と共に<超高速計算中……>と映しだされる。


 そして、すぐに──ピコーン!


「あれはソフィーの持っていたコーヒー豆【ピコペリ】と成分が一致ですにゃ!」


「ピコペリってたしかレアな豆だったはず! ってことは!」


「はいにゃ! これで目視にてソフィーを追えますにゃ!」


 ヘンゼルとグレーテルはパンくずを置いていったけど、コーヒー豆って。


 ソフィーって一体どこまでコーヒーなんだ……。



「ぬぬぬ~、ではいきますにゃ~!」



 唸るニャモの頭上に立ち上がったピンクの霧が「目力のすごい風見鶏」へと姿を変え、くるくるとすごい速さで回る。



 ぐわっ!(風見鶏の目力) & カッ!(風見鶏の目力)



「あっちですにゃ!」


 僕たちは何事かと驚く人々の間を抜け、ソフィーの残した手がかり──【ピコペリ】の跡を追った。



 ◇猫◆猫◇猫◆猫◇猫◆猫◇猫◆



 石畳の表通りから脇に入ると、すぐに土の踏み固められた裏通りとなった。


 どうやら華やかなのは表だけで、裏はスラムと大差ないらしい。


「こっちですにゃ!」と先導するニャモの後をついていく。


 ぐにゃぐにゃと入り組んだ路地裏を進んでいくと、急にニャモが立ち止まった。


「御主人様……時間短縮で行ってもいいですかにゃ?」


 時間短縮?


 う~ん、嫌な予感がする。


 けど、今はソフィー優先だ。


「うん! やっちゃって!」


「はいにゃ! 了解ですにゃ~!」


 そう答えたニャモの体がピンク色に輝きだし、ウィーーーンという起動音が響く。



「では、()()()()()すにゃ!」


 ん? ワ? ー? プ?


「えっ、今なんて言っ……」


 次の瞬間。


 キュイン──という音と共に、ピンク色の光が僕らを包んだ。


 自分が、糸になったような感覚。


 ひょろひょろの紐。柔らかな。


 細い線になってほわほわと温かい海を漂っているような……。


 そんな感覚に陥ってると、ふいに体が重力を取り戻した。


「うわっ!」


 どっす~~~~ん!


 尻が地面に激突する感触。すなわち尻もち。


「あいたた……」


 目の前で知らない男の声がする。


「て、てめえぇらは……!?」


 次に知ってる女の声が聞こえた。


「ツカサくん!」


 ソフィー。


 顔を上げると、そこにはソフィーが。


 布で顔を隠した男に担がれている。


「ソフィーさん!」


 男は瞬時に目を色を変え、手に持った鎌を構える。


「それ以上近づくんじゃねぇ! 人質がどうなってもいいってのか! これは脅しじゃねぇぞ!」


 言ってるそばから、ヨルがツカツカと男に近づいていく。


「て、てめぇ……!」


 男が手に持った鎌を振り上げる。


 刹那──。


「なっ──!?」


 いつの間にか男の背後に移動していたヨルの二本の指が鎌を挟みこんでいる。



 パキッ──。



 指の力だけで鎌が真っ二つに割られる。


「貴様──! 一体──!?」


「なんのつもりなのだ? こんなものが武器だとでもいうのだ?」



 パキッ──パキパキパキ……。

 


 ヨルの手が雷を帯び、残りの鎌の部分も飴細工かのようにパリパリと砕かれ、地面に散った。


「あ……あぁ……き、貴様ら……何者なんだぁ!?」


 武器を失った男がうろたえる。


「何者って? 僕は……喫茶アンタルテの従業員だ!」


「にゃ! 同じくにゃ!」


「我はその客なのだ!」


 男は唖然とした表情を見せた後、すぐに我に返ってソフィーの首を掴む。


「クソ……ふざけやがって……! どうやって先回りしたかは知らんが、こいつを返すわけにはいかねぇ!」


 男はソフィーの首を思いっきり締め始めた。


 その瞬間。



「やめろっ!」



 僕の中で。何かが。弾けた。

 気が

 した。

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