第1話 御主人様、危ないですにゃ!
新作です! 書き溜め72,000字、33話あります!
異世界で喫茶店経営を軌道に乗せるお話です!
チート&ねこちゃんありです!
もちろん美少女もあり! ショタもロリも出てきます!
今日4話、明日4話、以降毎日1話ずつ更新していきます、よろしくお願いします!
十二月の土曜の夜、僕はいつものように行きつけのファレス『クトゥルーフ駒込店』で本を読んでいた。
僕は、週七でこの店へと通っている。
他に行く場所なんてない。
家にも学校にも居場所がない。
近所の図書館も早く閉まるので、こうして本を借りてファミレスで閉店時間まで時間を潰してるってわけだ。
読む本はなんでもいい。
内容なんてちゃんと見てないから。
ファミレスが閉店したら、そっと家に入って静かに寝る。
これが僕のルーティン。
誰とも喋らない、親の顔すらもうずっと見てない。そんな毎日。
けど、ここにはそんな僕に優しく接してくれる唯一の「存在」がいる。
それが──。
「にゃにゃ! いらっしゃいませにゃ! なにか御用があったらお気軽にお呼びくださいにゃ!」
猫型配膳ロボットの「ニャビィ」だ。
ニャビィだけは、僕がコーヒー一杯で何時間粘ろうとも嫌な顔ひとつしない。
理由はロボットだから。
ロボット最高。
その「ニャビィ」の一台に、僕はこっそりと名前を付けていた。
『ニャモ』
この店にいる何台かの「ニャビィ」。
その「ニャビィ」たちの中で、この『ニャモ』だけが、お尻にちっちゃな傷がある。
型も他のよりはちょっと古そうな感じ。
けど、その型遅れながら頑張って給仕してる『ニャモ』の姿に、僕はなんとなく好感を抱いてた。
しかも、不思議とその『ニャモ』が、毎回僕を接客しにくる。
(まさかロボがカメラで僕のことを認識してたりしたり……?)
な~んて、あるわけないか。
けど、たまに他の「ニャビィ」を押しのけて僕に接客しにくる時あるからなぁ。
そんなところも含めてなんか可愛らしくて笑ってしまう。
さて。
今日もお店の閉店時間ギリギリまで粘った僕。
憂鬱な家に帰るべく、仕方なく席を立つ。
お客さんは、もう僕だけ。
店員からの「またこいつかよ。さっさと帰れよ」的な視線が痛い。うぅ……。
まったく毎度のことながら、この視線はちょっと堪える……。
そんな僕の元へ、ニャモがフィ~ンとやってきた。
「ご利用ありがとうございましたにゃ!」
お見送り。帰る時、いつも来てくれるんだよな。可愛い奴め。
声は機械的な音声だけど、顔の部分のディスプレイには「>ω<」な表情が記されていてとてもかわいい。
(ふふっ。ニャモ、いつもありがとう。じゃあ、また明日)
心の中でそう声をかけた瞬間、急にニャモがガタガタと震えだした。
「あ……ああ……あ……あああ……!」
「えっ!?」
ニャモから「ギギギ……」と歯車が錆びたような、イヤ~な軋み音が鳴る。
(うわぁ……古い型だろうとは思ってたけど、とうとう壊れちゃった……?)
焦る僕。
ニャモのディスプレイの中の表情がコロコロと入れ替わっていく。
【^ΦωΦ^】【 ̳- ·̫ - ̳ˆ】【*ฅ´ω`ฅ*】【^>ω<^】【^ơωơ^】【ˆ•ﻌ•ˆ】【`・ω・´】【๑*д*๑】【*Φ ﻌ Φ*】【^ω^】【 *`꒳´ *】
(うわ……本格的に壊れてきてるって……)
すると、今度は「ブー! ブー!」という音とともに赤文字が。
『ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR ERROR』
(えぇ~! こわっ!)
店員さんたちは遠巻きに見つめてるだけで何もする様子はない。
(え、冷たくない?)
っていうかニャモが壊れるの、地味にショックなんだけど…………。
(うぅ……唯一の友達だったのに……)
そう、友達。
今、気付いた。
僕にとって、ニャモは「友達」だった。
少なくとも僕はそう感じてたんだ。
うぅ……そう思うと余計に悲しくなる。
突然、店の電気がパチパチと点滅した。
パリンっ! 電灯が割れる。
窓がガタガタと揺れる。
落下したグラスが「パリンッ!」と派手な音を立てて割れる。
え……えぇぇ!? なに、続けざまに!?
「あああ……にゃ……にゃにゃにゃ! 異常検知、未登録次元エネルギー反応を感知しましたにゃ~! あ……ああ……危ないですにゃ、御主人様ぁ~~~~~!」
ご、御主人様ぁ? 御主人様って言った?
するとニャモが「お守りいたしますにゃ~~~!」と叫んで僕に体当りしてきた。
「うわっ!?」
どすんっ!
直後、床に浮かび上がった魔法陣がまばゆく光る。
「え? えぇぇぇ……!?」
ジェットコースターがてっぺんから落ちる時の感覚。
内臓だけ残されて。
落下、するような。
・
・・
・・・
「ん……ここは……?」
顔を上げる。
高くそびえるレンガ造りの建物。
石畳の道。
ガラガラと砂埃を立てて馬車が遠くを通り過ぎていく。
嗅ぎなれない香辛料の匂いが風に乗って漂ってくる。
ここ……どこ?
しかも昼だし。
っていうか、周りにいる人……。
えっ……人?
なんかトカゲ頭の人とかもいるんだけど……。
「にゃ、御主人様! 無事に次元跳躍が成功したことをお知らせしますにゃ!」
「うおっ!?」
振り向くと、そこにはニャモの姿が。
ニャモ。
ネコ型配膳ロボットのニャモが普通に喋ってる。
「えぇ……と? ここって……?」
思わず普通に話しかけちゃう。
「はいにゃ! ここは地球ではない、別の次元の世界ですにゃ!」
別の……次元?
「えと、じゃあニャモが喋れるようになったのは?」
「? ニャモは元から喋っていましたにゃ?」
「いや、まぁ、たしかに喋ってはいたけどさ……」
機械音声でね。
っていうか自分のこと「ニャモ」って言ったぞ、このニャモ……。
う~ん……なんだろう……。
異世界。
喋るニャモ。
次元転移。
この状況で僕がすべきことは……。
コー……ヒー……。
僕の頭に思い浮かんだのは、さっきまで『クトゥルーフ駒込店』で飲んでいた一杯のコーヒーだった。
そうだな。
とりあえず、コーヒーが、飲みたい……。
コーヒーを飲みながら色々整理したい、うん。
「ニャモ、喫茶店の場所とかってわかる?」
「にゃ! お任せくださいにゃ!」
ニャモの頭の上にピンクの霧のようなものが浮かび、それが風見鶏へと姿を変えてくるくると回りだす。
ぴこーん!
「こちらの方向にある可能性が高いと思われますにゃ!」
そう言ってニャモは、石畳の上をきゅるきゅると移動しはじめた。
(なんなんだよ……今のピンクのは……。っていうか移動性能高いな……)
たくさんある疑問は一旦横に置いといて。
僕は、ニャモの後についていくことにした。
この世界での。
一杯の、コーヒーを求めて。
読んでいただいてありがとうございます!
これから先も可愛いニャモちゃんとツカサくんのスローライフ(を目指すコーヒーあり、モンスターあり、ヘイト役あり)な物語は楽しく続いていきます!
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