093 王子の訪問
「……まぁ、イスカらしいわな」
休み明けの月曜日、いつもの教室。
呆れ顔のティトがやれやれと笑った。
「気を遣ってくれたのにごめん。だけど焦って告白するのはなんか違うな、って思ってさ。天乃さんのことよりも告白することばかり考えてるみたいで……」
「間違っちゃいないが……なんつーか、奥手だなぁ」
うかうかしてると、俺みたいな奴に取られちまうぞ。何気ない言葉に、イスカの首がぎゅいんと回る。
ちげえよ、と慌てて手を振るティト。
「俺自身のことじゃなくてな、俺みたいなパッションで動く奴にってことだよ。興味なかった奴でもぐいぐい押されてころっと落ちちまうとか、よくある話だぜ?」
「やめてくれよ……」
「慎重すぎるのも考えものってことだ。ただでさえ天乃は人気があるし、かの王子からも狙われてんだから――――っと、噂をすれば」
がらり、音の方を見たティトが声を潜めた。
イスカも振り返って、ぴしりと固まる。
しっかり整えられたブロンドの髪、鼻筋のはっきりした顔立ち。覗いた歯がきらりと光り、ポジティブな雰囲気が全身から立ち上っているような。
――王子こと大吉キリ、来襲。
女子が数名、きゃあと上げた黄色い声をスマイルだけで静かにさせ、つかつかと向かった先は……。
「珍しいね、今日は取り巻きの人たちがいない……」
「それどころじゃねえだろしっかりしろ」
教室の後ろ、エナやカラと話していたセキレイに手紙を渡したのが見えて、イスカはバグった。
ティトが叩いて正気に戻す。
「…………どう思う、あれ」
「……告白の呼び出しじゃねえの?」
だから言っただろ、と首を振るティト。
青ざめるイスカへ、ぽりぽりと頭を掻きながら付け加えた。
「だがまぁなんだ、多分大丈夫だよ。なるようになるさ」
「なにも大丈夫じゃないよそれ……」
「え、セッキー行くの!?」
セキレイの言葉に、エナとカラはびっくりして口を押さえる。
手紙は「放課後、話したいことがあるから校舎裏に来てほしい」といった内容で、特に隠すこともないかと二人には明かして。
その上で、とりあえず呼び出しには応じようと思う、と話した後のことだった。
「ええ、はっきり返事をしないと相手に失礼だもの」
「……確かに今までの告白もそうでしたね。最近は皆諦めてるのか、めっきり減りましたけど」
「全員もれなく振ってるもんね! 覗きに行っても結果が分かってるからつまらんよー」
「……え、覗いてたの? どの時?」
「あっ……ええと、最初の十回くらいまで……? でもでも、途中からやめたからねっ! ねぇカラ?」
「なんで私に振るんですか……止めてた側ですよ?」
「でも何回か一緒に覗いたよねっ」
「……あ、あれはエナが無理やり隠れさせたからでしょうっ!」
はは……とセキレイは苦笑いをしてから、きゅっと眉を寄せる。
「――もう覗かないでね、恥ずかしいから」
ぴしりと言われて、こくこくと頷くエナとカラであった。
読んでいただき、ありがとうございます!
面白いと思っていただけたら、ぜひブックマークをお願いします。
励みになりますので、★評価や感想もお待ちしております!




