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088 ガルホークの焚き火祭り

 ガルホークの焚き火祭りは、エリアナ共和国全土で行われる伝統的な冬祭りだ。

 イスカたちの地元、四一区くらいの小さな街では比較的小規模だが、主要な街では毎年盛大に開催されるイベントになっている。

 第五統合学校がある地方都市イニシアでは数日前から準備が進められ、イスカたちは登下校の度に高まっていく活気を感じていた。


 そして今日。


「――セッキーこっちこっちーっ!」


 飛行場の入口でぴょんぴょん跳ねながら、エナが手を振っている。その横にはカラとティトもいた。


「――おまたせ、みんな! ………………どうしたの?」


 ごくりと喉を鳴らしたエナに、セキレイが首を傾げる。

 その足先から頭の先までをじっくりと眺めてから、エナは胸を押さえてうずくまった。


「ちょっとエナっ!?」


「…………妖精じゃん……」


 漏れ出た声にカラが思わず額に手を当てる。

 隣でティトが吹き出す。


「可愛い……っていうより、美だね。いやもう最高」

「ありがとう……でも恥ずかしいからやめて」


 おっさん臭く絡むエナに困り顔のセキレイ。

 そのくらいにしなさい、とカラが止めに入る。

 そんな女子勢を見ながらティトが一言。


「――――酒がうまいなあ、イスカ」


「おっさんじゃん……」


「ははっ。それにしても、絢爛華麗な眺めだな――――あぁ天乃しか見ていないか」


 イスカにとっては名実ともに天使だものな、とからかわれる。

 半分図星だったので、イスカは聞こえないふりをしておいた。






 街道沿いにはずらりと屋台が並んでいた。

 普段行き交っている自動車は今日だけ進入禁止になっており、通りはたくさんの人で賑わっている。

 ぽこぽこと揺れる頭の先に、煌々と燃える焚き火のやぐらが顔を見せていた。


「――あれ街の外に立ってんだよな? でかすぎねえか」


「歴史ある祭りは大げさなものですよ。さらに花火も打ち上げるのですから」


「てか花火何時からだっけー?」


「……七時からみたい。あと一時間後ね」


「じゃあそれまで屋台巡りだっ! 行くよセッ――むぐっ」


 セッキー、と言いかけた口をカラが塞ぐ。

 こそこそと囁かれ、エナは何か思い出したようにはっと背筋を伸ばした。そうだった、とウィンク一つ。

 頷くカラとティト。


「じゃあみんな行こ、ちなみにはぐれても無理に探さないで、各自楽しむってことで! 花火が始まる頃に、飛行場の入口に集合ね!」


「……えっ?」


 セキレイがびっくりして聞き返す。

 いつものエナなら、みんなで楽しまなきゃ! って思うはず……。

 なんて考えていると、するするとカラが寄ってくる。


 (セキレイ、下地さんの気持ちを確かめるチャンスです。……頑張って!)


 (えっ……えっ、あれそういうことなの)


 (もちろん! 私たちは味方ですからね!)


 ぽん、と背中を叩かれ、白い髪があわあわ揺れた。


 

 一方、イスカの側には――――。


 

 (……うまくやれよ!)


 (……何か企んでるだろ)


 (別に? どちらにせよ実質デートだからな)


 (……どちらにせよって)


 攻めろ攻めろと煽るティトを肘で小突く。

 かははと笑いながら、ティトは背中を叩いてきた。


「男子ー! 置いてくよーっ!」


 いつの間にか、ずいぶんと先行していたエナたちが振り返る。

 応を返して、イスカたちは小走りで後を追いかけたのだった。






 ――――そして、そのわずか数分後。

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