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069 天乃さんと練習の成果

 引き直された真っ白なラインが、ちかちかと眩しい。

 二人三脚は四ペアが一斉にスタートし、トラックを一周してゴールする。


 何度か転ぶこともあったけれど、今日までずっと練習を重ねてきた。

 セキレイとは最初から息が合うほうだったが、今はその時よりもはるかに速く走れるようになっている。

 ……その感覚が間違いでないことを祈るばかりだ。


 ついさっきまで自信があったはずなのに、いざ走る直前になると緊張が鎌首をもたげてくる。

 地面が揺れているように、イスカは感じた。


「――大丈夫よ。私たち、たくさん一緒に走ってきたじゃない」


「……うん、そうだね――――いたっ」


 セキレイの言葉を噛み締めていたら、不意に背中へ衝撃がきた。

 叩いた手が腰へ回されて、今のって天乃さんが――?! と横を見るイスカ。

 青い瞳を細めて、いたずらっぽくセキレイが笑う。


「いつも有馬くんにやられてるじゃない? ……気合、入れていきましょ!」


「……ふふ。了解」


 不思議と、緊張がほぐれた。

 セキレイがぎゅっとイスカを掴む。

 応えるように、イスカもぐいと引き寄せる。

 結ばれた足がぴったりと重なって、一つの太い足になった。少し腰を落として、見据えるは前方。

 青い瞳も黒い瞳も、同じ一点を見つめている。


「位置について。用意――――」


 ――――パン。


 聞こえた破裂音を置き去りにして、二人は飛び出した。

 わずかに速かった隣のペアが先行する。

 赤いゼッケンがぴらぴらと、闘牛士の布のように揺れる。


 (1-Cの……!)


 その後ろ姿には見覚えがあった。

 ティトと組んだ最初の練習の時、ぺたりと座った地面から見た速いペア。

 あの時は、追いつける気がしなかったけど。


 ――――天乃さんと組んだ、今なら。


 ちらりとセキレイを見る。ふいっと白髮が揺れる。


 (――抜きましょ、下地くん)


 青の奥に、炎が見えた。

 二人の踏み込みに力がこもる。


 前へ。もっと前へ。一番前の、その先へ――――!






「――1-B、今先頭でゴール!」


「やったーっ!」


 お腹に当たったゴールテープが、はらりと落ちる。


「……勝った」


「ええ、勝ったわよ! 一位よ!」


「……やった!」


「ええ!」


 腰に当てていた手を、上からぽんぽん叩かれる。

 学校では珍しく、セキレイは感情のままに喜んでいた。

 幸いにも観客の興味は次の走者に移っており、その様子を見ていたのはスタートラインに並んだティトとエナくらいであったが。


「――二人ともっ! よくやったーっ!」

「あたしたちも勝つからーっ!」


 その二人も気付いてないのか、大きく手を振って勝利を祝ってくれていた。

 イスカとセキレイは、ちらと顔を見合わせて。


「「二人も、がんばってーっ!」」


 笑いながら拳を突き上げた。

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