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068 ローハイドと見敵必殺

 空砲とともに飛び出す、戦車のようなシルエット。

 土煙を上げて突進した騎馬は、設置された机の前で急停止。

 その上に載せられた一斗缶へ向かって、騎手がロープを振り回す。

 先につけられたおもりが一回転ごとに近づいていき――――ばごん! と的を捉えて吹っ飛ばした。

 

 湧き上がる歓声を受けながら、急いでロープを束ねつつ騎馬はスタート地点へ戻る。

 ロープをバトン代わりに、次の騎馬が走り出す。


「きた! 有馬と下地だっ!」

「ちょっと遅れてますけど、まだ勝ち目はありますっ!」

「下地くん落ちないわよね……」


 応援席では、仲良し三人組が固まってそれを見ていた。

 現在、赤チームがわずかにリード。

 白チーム、イスカたちの騎馬は遅くもないが特に速いわけでもなく、差は縮まらずとも更に開くことはないだろう。


「下地ィー! やっちまえー!」

「吹っ飛ばせぇ!」


 男子たちが叫ぶなか、イスカがロープを回し始める。

 飛行機の操縦には、空間把握能力が必須だ。イスカも例外ではなく、だいたいこのくらいで当たるかな、という直感があった。

 遠心力でピンと張ったそれは、騎馬が停止した時にイスカの頭の後ろを通過して。


 バゴンッ!


「……え、一撃で当てたっ!? 二人とも見てた?」

「ええ、これは勝てますよ! ほら赤チームはまだ回してますっ」


「いいぞ下地!」

「よくやったーっ!」

 

 エナとカラの声に釣られるように、どっと応援席が揺れた。

 

「白チーム、これはすごい! まさに見敵必殺、差を縮めるどころか一気に抜き返しましたァ!」

 

 衝撃的なオーバーテイクに、実況の声にも興奮が混じる。

 周りが思わず飛び跳ねる中、セキレイは座ったまま、イスカのゴールを見届ける。

 そして嬉しそうに、こっそりガッツポーズをした。






「――いやあ大活躍だったなイスカ!」


 ばんばんと背中を叩かれ、思わずむせる。

 口の中の体育祭限定サンドイッチを飲み込んでから、イスカはたまたまだよ、と返した。


「謙遜しやがってまったく。あれがなければ勝てなかったぞ? 胸を張れ!」


「……まあ、足を引っ張らなくてよかった」


 そう言いつつも、口元は緩む。

 こういうことは初めてだった。

 相変わらず目立つのは避けたいけれど、今は不思議と嫌な気持ちはしない。

 練習した甲斐があったというものだ。


 ――少しは、天乃さんにも恥ずかしくない働きができたかな。


 応援席に戻ったときの、嬉しそうな笑顔を思い出す。

 好きな子が喜んでくれるのは、こっちも嬉しい。


「――天乃にいいとこ見せられて、よかったな!」


「……なんで天乃さんが出てくるんだよ」


 平然を装ってイスカはもう一口、サンドイッチを齧る。黒色の瞳がわずかに揺れた。

 ティト、恐るべし……。

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