064 イスカと頼れる友人
ローハイド。
四人一組の騎馬で行うリレーで、上に乗る人が先端におもりをつけたロープを振り回し、途中にある的を倒して戻ってくるという競技である。
騎馬を組むという特性上、参加人数は多くなる。
一クラスにつき二チームが出場するため、必要な選手は八人。実行委員の呼びかけに挙手した立候補者は六人で、ちょうど二人足りなかった。
イスカは特に出ようと思っておらず、二人三脚の希望が聞かれるのを待っていた。
体格が少し細めのイスカでは、騎手を支える騎馬役にはとても向いてはいないだろう。
人数が足りないこの状況には同情しつつも、自分には力不足だと思って立候補はしなかった。
しかしイスカは失念していた。
目立ちそうな役だからと意識の外に追いやっていたのもあるが、騎馬は土台だけでは出来ていないのだ。
体格が細め――つまり軽い人ほどぴったりな、はまり役があったのである。
――下地とか、騎手に向いてんじゃね? 細いし!
ある男子の提案に、イスカはあわてて飛び起きた。
「えっ、ちょっと待って――」
だがその声は前まで届かず。
降って湧いた打開策に、クラスの意見は固まりつつあった。
「――下地はそれでいいかい?」
ほぼ強制なような気がするけど……。
イスカは少し考えて、――まあいいか、と頷いた。
絶対嫌だというほどでもないし。
「――じゃああと一人は俺が出るぜ」
「マジか有馬! 助かるよ」
黒板に、下地と有馬の文字が加わる。
「ティト…………!」
「ま、いいってことよ」
がたんと椅子を揺らしながら、イスカに親指を立てるティト。
それより次だぞ、と前を指差す。
「……では次、二人三脚に出たい人! 四名!」
「おし今だっ」
ばばっとティトとイスカは手を挙げる。
その勢いに少し押されたか、実行委員は一瞬固まったものの、すぐに頷いて周りを見渡した。
「……ぴったり四人なので、決定です!」
――――四人?
他に誰が、と首を回して、イスカはぴたっと止まる。
「やった! 決まったよセッキー!」
「よかった、今度は一緒ね」
手を挙げたままはしゃぐエナ。
彼女に優しく声をかけてから、声の主はちらりとイスカを見て――こっそりウィンクをする。
「……よかったなイスカ」
ティトがばし、と背中を叩いた。
翌日から、練習が始まった。
普段は座学をしている時間が、体育祭期間は練習に当てられる。なんだか少しお得に感じる。
「――よし。きつくないか?」
紐をぐっと結び終えて、ティトが尋ねた。
イスカとがっちり足首を揃え、第三の足が誕生する。
痛くもないし、引っ張ってみても緩む様子はない。
「――大丈夫、ちょうどいい感じ」
「おーし、そんじゃ歩いてみっか」
がしっと二人は肩を組む。
まずは結んだ方の足から、ゆっくり一歩を踏み出す。
「……いち、にい、さん、しい」
「にー、にい、さん、しい」
「止まるぞー、ほい」
「はい」
――いけるぞこれ、とティトが笑った。
「歩きなら完璧だな! 走ってみるか。多分大丈夫だろ」
「ああ。わかった」
同じように結んだ足から、と確認し合い、ようしと息を吸う。
軽く腰を落として構え、目配せを飛ばす。
「よし行くぞ。さん、はいっ!」
勢いよく飛び出した二人は。
「――――――ぶっべ!」
頭から地面へ突っ込んだ。
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