063 天乃さんと種目決め
宿題をしつつもだらだらと過ごしていたら、いつの間にか夏休みが終わっていた。
海に行ったのはついこの間のはずなのに……もしやそれも夢だったとか、とセキレイに確かめたら変な顔をされてしまった。
時間の流れが、どうも前より早く感じる。
そうこうしているうちに暑さは過ぎ去り、季節は秋へと入った。
定期考査が終わり、次なるイベントは体育祭である。
イスカたち1-Bクラスは、1-Dクラスとタッグを組んだ白チームとして参加することになった。
「――個人種目を決めるので、やりたい種目に手を挙げてください!」
「一人何種目ー?」
「一人につき二種目!」
体育祭実行委員がチョークを握る。
黒板にはすでに種目が並んでいて、悩む声や誘い合う声でクラスは活気づいていた。
「イスカ、思い切って百メートル走とか行くか」
「行かないよ!」
ふざけて言ったティトに返すイスカ。
目立ちそうな競技はできれば遠慮したい。
ティトやセキレイと違って、イスカの運動神経は可もなく不可もなくといったところ。
腕試しをする気は全くないし、クラスに迷惑をかけない程度にこなせる競技がいいと思っていた。
「――とか、どうせそんなこと思ってんだろ?」
「……」
「図星か。となるとそうだな……個人系より団体系の競技にするか。二人三脚とかよさそうだな」
「……それは思ったけど、ティトは運動神経いいからなあ。僕だと足を引っ張りそうで」
「ん? あれは足の速さあまり関係ないぞ? 息が合うかどうかだから」
「そうなんだ。それなら、二人三脚にしようかな」
「んじゃ決まり。順番来たらすぐ挙げるぞ」
百メートル走が決まり、障害物競走が決まり、借り人競走がじゃんけんで決まった。
「えーっ! あたしだけなんでぇっ!」
エナが悲痛な声で叫んだ。
セキレイとカラの背を押しつつ前に出てきたことから鑑みるに、どうやら三人で出ようとしていたらしい。
だが現実は非情なもので、じゃんけんで勝ち残ったのはセキレイとカラともう一人の女子。
エナは一人だけ脱落した。
「……エナの分もがんばるわね」
「えーん頼んだー」
少し困った顔で微笑むセキレイへ泣きつくエナ。
だがすぐに拳を握りしめ、次の団体競技を探し始める。
「……カラはもう二つ決まっちゃったし、セッキーと出れる競技に賭けるしかないっ!」
「――賀島ー、座れー」
「ごめんなさーいっ」
エナが小走りに席へと戻る。
実行委員がチョークを取って、決まった選手の名前を記す。
――天乃さん、借り人競走に出るのか。
片肘をつきながら、イスカはそれを眺めていた。
借り人競走と言えば、とあるシチュエーションが思い浮かぶ。最近買ったコミックでも見た。
気になっている人が借り人になったり、または主人公を借りに来るシーン。
実際、そういうのはフィクションだって、分かっているけれど。
僕も立候補したら、天乃さんを借りに行けたのかな――なんて少し思ったりするイスカであった。
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