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056 イスカと水着

 ――戦争で人口が減り、街同士の距離が遠くなったとはいえど、航空機があるため人の足は伸びた。

 けれども少し買い物をするだけのために、わざわざ空を飛ぶというのは不便なことこの上ない。

 

 国もそのことは十分に分かっていたので、戦後の復興政策のひとつとして、各地への商業拠点の設置が行われた。

 それは全ての街に一箇所ずつ、生活に必要なものが全て揃う規模のショッピングモールを建設するというもの。 

 開業当初は最低限の店舗しか入っていなかったが、今では複数のアパレルショップ、本屋、アクセサリーや玩具を扱う店まで多種多様なテナントが参入し、すっかり娯楽施設としての地位を確立していた。

 

 二人続いて回転扉を通り抜ける。少し暑くなった肌に、そよ風のように当たる冷房が心地よい。

 夏休みということもあってか、お客さんはそれなりに多かった。


「――まずは下地くんのを買いましょう」


 セキレイは入ってすぐの案内版を眺めながら言う。

 モールは三階建て。一階は食料品売り場とフードコートが入っており、二階はアパレルショップを始めとしたファッション系の店舗が占めている。

 三階には大きな書店と、子どもが喜びそうなおもちゃ屋さんがあった。

 

 エスカレーターで二階へ上がり、まっすぐ向かう先はスポーツ用品店。

 一緒に来たのは初めてだが、モールにはしょっちゅう買い物に来るので、二人とも迷うことなく歩いていく。

 お目当ての店は建物の端に、三店舗分ほどのスペースを使ってどん、と構えていた。

 蛍光色が目を引く看板の下、棚の最前列にずらりと並んでいたのは……。


「あら、さっそくあったわね!」


 水着――というよりは海水浴セットだった。

 今が売り時とばかり、大々的に展開されたレジャーコーナー。シュノーケルやビーチサンダルといった海用のものだけに留まらず、ごついブーツやリュックサックなどの山用のものも勢ぞろい。

 

 店の奥にもまだあるのだろうが、まずはここから見ていくことにする。


「……言うて色と柄くらいだよな」


 イスカは並んでいる海パンを適当に掴んだ。

 ダークグリーンで地味めな印象。男の水着は地味なくらいがちょうどいいんじゃなかろうか、なんて考えながらサイズを確認してみる。――少し……いやだいぶ大きかった。

 よく見ないまま、流れで隣のものを手に取る。目線を下ろす。


 ――ケバいオレンジ。


 ちょっと派手すぎる、とイスカはそっとそれを戻した。

 その隣のは……なんかきらきら光っている。

 スパンコールか? まるで魚の鱗みたいだ。


「――それ……にするの?」


 人の趣味嗜好は否定しないわ、と相変わらず微笑みを浮かべてはいたが、わずかに青ざめているセキレイ。


「まさか」


 苦笑して他を探すイスカだったが、並んでいる水着はどれも派手だったりサイズが極端だったり。


 (売れないやつを並べてるだろこれ……)


 イスカは首を振って、店の中へと足を進めた。

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