047 天乃さんとハーレム王子
「――うわ、王子サマじゃん」
エマが小声で呟く。
声の主は、まさにその呼び名の通りの顔立ちであった。
ポマードで整えたブロンドの髪に高い鼻。自信に満ちあふれた瞳。
女子が数人、彼の一歩後ろからついてくる。
「……ティト、誰だか知ってる?」
「――ああ、1-Dの大吉キリ。通称『王子』って呼ばれてる、天乃の男子版みたいな奴だな」
ティトがイスカに耳打ちする。
なんでも、取り巻き全員と付き合ってるらしいぞ――と付け加えた。
イスカはうわ、と少し引く。
「――大吉くん、だったかしら。……どうして私と? お話したこともないわよね」
「それはもちろん、天乃くんが魅力的な女性だからさ。確かに話すのはこれが初めてだが、これから仲よくしてくれると嬉しいよ」
「それはどうも。だけど私たち、もう行かなきゃだから――」
「いいじゃないか。おーい、カメラの人! 一枚頼むよ!」
ちょっと、とカラが止めに入るもすでに遅く、にこにこしながら片膝をつくカメラマン。
王子の一団が隣に来た。取り巻きの女子がちらり、とセキレイを一瞥する。あきらかに不満そうな顔をしていた。
しゃーない、さっさと終わらせて早く行こ、と諦めた声で言うエナ。渋々、といった様子で、カラはセキレイの隣にしゃがむ。
不意にズボンを引っ張られたような気がして、後ろにいたイスカは目線を落とした。
小枝のような指が、くいくいとつまんでいる。
青い瞳が、さりげなくイスカを見た。白い首が、小さく横へ動いた。
――横に来て、というような仕草。
背中を押し、行けよとティトが囁く。
ふっ、と息を吐いて、イスカはセキレイの隣に腰を下ろした。王子のグループと、ちょうど境になる位置。
「――撮りますよー、2×6はぁ?」
――12、と声が揃った直後。
「……ありがと」
微かに、だけど今度はちゃんと、声が聞こえた。
「……さっきのハーレムにさ、大間いたよな。大間シコ。気が強そうなポニーテールの」
「えっと……ああ、グループ発表の時に意地悪な質問してきた人か。それがどうしたの」
「俺が思うにさ、あいつは王子が天乃に気があるのが気に入らねえんじゃないかな。だからああいう質問したんじゃねえか?」
「……なるほど、そういう事ですか。一理ありますね」
艦内に入ったため小声で、ひそひそと話すティトたち。
嫉妬ってやだねー、とエナが呆れ顔で言って、――セキレイにまで手を出されちゃたまったもんじゃないよ! と鼻息荒く言い放った。
そしてその調子のまま、イスカを睨みつけた。
「……な、何?」
「――下地。あんたが虫除けになるんだよ。覚悟してよね」
「ええと……僕が……?」
どもるイスカを見て、くすり、とセキレイが笑った。
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