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045 天乃さんと校外学習

 クリームイエローのずんぐりした飛行機が四機、夏空の下を連なって飛んでいた。

 いつもは生徒の送迎を担っているスクールエアだが、毎年この日は仕事が増える。一機に一クラスずつ生徒を乗せて、第一学年全員を校外へと連れ出していた。

 

 夏休み前の恒例行事、平和校外学習。

 全国の高等部一年生を対象にした、戦跡や戦争博物館を訪れて平和を学ぶ行事である。

 もちろん第五統合学校も例外ではなく、イスカたちのクラスは二機めのスクールエアを充てがわれ、まっすぐ目的地へと向かっていた。

 

 貨物スペースを改装して作られた客室には、簡素なシートが二つずつ、八列続いている。

 イスカは三列目の通路側、ティトは窓側。その後ろの四列目にセキレイとカラが座っていた。エナは通路を挟んでカラの隣。


「――スクールエアって結構揺れるんだな。でかいから安定してるとばかり思ってたぜ」


 ティトがイスカへ話しかける。気流のせいで、さっきから機体は沈んだり浮いたりを繰り返していた。


「……そうだね。僕も初めて乗ったけど、いつも乗ってる単発機と同じ感じだよ」


 空を飛ぶ以上はどんな機体でも揺れるんだろうね、と言ったイスカに、ティトはなるほどと頷く。

 それから少し声を落として、


「……しかも後ろには天乃もいるしな? そりゃいつもと変わらんだろうな」


 からかうように言った。

 イスカは無言で友人を小突いた。


「ところで行動班さ、いつものメンバーでよかったよなー。なんかお決まりになってきた感じもするが」


「――うん。気が楽で助かる」


 しみじみとつぶやくイスカ。

 目的地では班ごとに見学をすることになるため、事前に班決めの時間があった。

 メンバーは自由だったので、クラスは当然セキレイ争奪戦になりかけたものの、いち早くティトやカラがいつものメンバーを集めたおかげで未遂に終わった。

 

 相変わらず男子勢からは嫉妬の目線を向けられたが、不本意ながらもセキレイがイスカの保護者として認識されている節があり、下地なら仕方ないかという空気になったのは幸いだった。

 

 イスカとしては好都合なのだが、やはり少し情けない気もする。

 なにはともあれ、セキレイとイスカの事情を知っている班であることはありがたかった。


「――ほいよ、有馬」


 前席の男子が菓子の袋をティトに渡す。


「おう? なんだこれ」


「担任からだ、取ったら後ろへ回してくれ。酔い止めも兼ねてるらしいぞ」


「なるほどな。了解」


 ティトは個包装の飴を一つ掴み、隣へ渡す。

 イスカは手元のパッケージを眺めた。どうやら何種類か入ったアソートパックらしいが、好みも特になかったので無作為につまみ出す。黄色かった。


「――天乃さん、先生から差し入れだって」


 体をねじると、シートの隙間からセキレイと目が合った。その瞳の青さがすっと増して、ありがとう、と微笑みが浮かんだ。

 後ろへ回すように伝えてから、イスカは姿勢を戻す。

 

 飴を口へ放り込むと、レモン味だった。

 心地良い酸っぱさを感じながら、窓の外を覗く。山岳地帯の上空のようだ。

 厚い山脈がずらりと、進む先にそびえている。

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