043 一件落着と思いきや
「――昨日も言ったように、私たちは付き合っている訳ではないわ。エナとカラが知っている通り、下地くんは友達よ」
「ふんふん?」
「それで、どうして二人で帰っているかだけれど。……実は私も下地くんも、同じ街に住んでいて――」
「そ、それってもしかして、同せ――痛っ」
「……話は最後まで聞きましょうね。セキレイ、どうぞ続けてください」
「え、ええ……」
食い気味に言いかけたエナをチョップで止め、カラが先を促す。そう言うカラも少し前かがみ。
動揺しつつも、セキレイはこれまでの過程を一通り説明する。
愛機が突然故障したこと。その時に、イスカが助けてくれたこと。
代機の都合がつかず、修理が終わるまではイスカの機体に相乗りさせてもらっていること、などなど。
もちろん、性格のことやFLAPへのお出かけのことまでは口にしなかった。
分かってはいたが、セキレイが話し終わるまで少しどきどきしていたイスカは、小さく安堵の息を吐く。
「――なるほど、話は理解しました」
カラは静かに頷いて、……ですが、とまっすぐセキレイを見た。
「なぜ、私達に言ってくれなかったのですか? そういう状況……ましてや危険な目に遭ったなんて……」
「そうだよ、水くさいじゃん。あたしら友達でしょ? 頼ってくれてよかったのに!」
「……それは。そうね……」
セキレイが目を伏せる。
確かに罪悪感はあった。できるだけ早く、言うつもりではあったのだ。しかし少し思うところもあり、自分から言おうと決意する前に、事が露呈してしまった訳で。
だが再び口を開く前に、イスカが口を開いた。
「……僕が言い出したんだ。噂にならないために」
え、とイスカを見るセキレイ。頷くイスカ。
――嘘は言っていない。
学校でできるだけ関係を悟らせないようにしようと最初に提案したのはイスカだ。二人に言うなと直接言った訳ではないが、自分とセキレイだけの秘密にするということは当然、そういうことになるだろう。
「二人にも、それから天乃さんにも申し訳なかったとは思うよ。だけど事故で通学手段が無くなったと言えば、芋づる式に僕と通学していることも言わなきゃいけなくなる。だから話せなかったんだ。――そうだよね」
「――そう。ええ、そうよ。それにね……もちろん二人のことは信じているけれど、もしこの事を言った後で噂になってしまったとしたら、やっぱり二人を疑うことになるし……私はエナもカラも疑いたくなくて……」
――ごめんなさい。
セキレイは頭を下げる。
顔を上げると……エナの泣きそうな顔があった。
きゅう、と胸が締めつけられるセキレイだったが。
「――セッキーやっぱりいい女だよ……ううっ」
「えっ……?」
「……あたしたちを疑いたくなくて言わなかったって、なにそれ、泣けるんですけど……いいよ怒ってないよ、謝んないで大丈夫だよ。むしろこっちがごめんだよ」
「……そうですね。セキレイも下地さんも、後をつけるような真似をしてすみませんでした。絶対に他人には言いませんので。――エナもそうですよね?」
「もちろんだよお……ごめんねえ」
「――ううん。……わかってくれてありがとう」
困ったような、ほっとしたような顔をして、セキレイが微笑む。
イスカは椅子の背にもたれ掛かった。
よかった、これで一件落着だ。
そう思った。
――ガラガラと、教室の扉が遠慮がちに開けられるまでは。
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