042 天乃さんとイスカと覚悟
「見たー! 見た、見たっ!」
「待って、なんで飛び出ていくのですかっ!」
「ねえすごくない!? やっぱり思った通りだったっ!」
興奮冷めやらぬといった様子で駆けてきたエナは、二人の乗った機体と、慌てて追いかけてきたカラを交互に見た。
どうしよう、と顔を見合わせるイスカとセキレイに、ほんのり頬を染めながら聞いた。
「――二人はやっぱり、そうなの?」
「――そう、とは」
イスカが聞き返し、
「カレカノなの!?」
「違うわ」
セキレイが否定した。
「じゃあどういうこと?」
「それは……ええと」
……言葉に詰まった。
正直、説明することが多すぎる。これは相乗りみたいなもので、そもそも発端は事故で、いや、近所に住んでいることからかしら――?
珍しく混乱しているセキレイの太ももを、何かが軽く叩く。ゆっくりと、とんとんと。
目線を下げると、それは操縦桿だった。
練習機の操作系は、前後の席で連動している。つまり前席で操縦桿を倒せば、後席の操縦桿も同じように倒れるのだ。
右手をゆっくり動かしながら、イスカが振り返って頷いた。
「……いろいろ聞きたいとは思うだろうけど、一旦明日に持ち越してもいいかな。なんというか、簡単に説明できないから……」
「――そうですね。スクールエアに乗り遅れてしまいますし、エナ、今日は帰りましょう……ちゃんと、明日教えてもらうことにして」
「えー……約束だよ? 放課後聞くからね!」
「……わかったわ」
しぶしぶ引き下がるエナ。
カラの援護射撃に助けられ、なんとか二人は帰路につく。
――もう、正直に全部言うしかないわよね。
帰りの空で、セキレイが最後の確認をした。イスカがそうだね、とそれに答えた。
翌日。
いつもより幾分短く感じた授業が終わり、ため息をつくイスカ。
課題が終わっていないからと、ティトが先に帰ってくれたのはせめてもの救いだったが、これから興味津々な女子二人の誤解を解かなきゃいけないことを考えると、どうしても気が滅入る。
二人とも無意識のうちなのか、一日中ちらちらと視線を向けてきていて、若干味方サイドかと思っていたカラはどうやらエナサイドらしい。
援護射撃は期待できなさそうだ。
四つの机をくっつけて、適当に教科書を開く。傍から見たら勉強会のように見えるような場を整えて、エナはらんらんと輝く瞳で二人を見つめた。
「……ではお二人さん。説明をどうぞ!」
セキレイがイスカに目配せをして、私から言うわ、と口を開いた。
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