041 天乃さんと関係の露呈
「セッキーまたね!」「また明日」
「ええ、二人とも気をつけて」
教室を出ていく二人に、セキレイがぱらぱらと手を振った。
下校する生徒たちが廊下を歩く。その流れは階段で直角に折れ曲がる。
人混みに紛れて進んでいたエナとカラは、階段の手前で目配せし合った。折れ曲がらずにそのまま直進し、廊下の曲がり角でようやく曲がった。
上から見た校舎は、長方形をしている。辺に沿って、そのままぐるりと一周すれば、教室が並ぶ廊下の一番後ろに出る。
ひんやり冷たい壁に体を寄せて、エナが様子を伺った。慌ててカラが引っ張った。
角からはみ出していた半身がすっと引っ込んで、顔の左半分だけになる。もし視線を向けられたとしても、だいぶバレにくくなった。
後ろ手で親指を立てるエナ。
「――私ったら、何をしているのでしょうか……」
カラは思わずため息をつく。にひ、とエナが笑って振り返る。
「なんだかんだ言って、手伝ってくれるんだね。うんうん、やっぱり気になるよね~」
「セキレイを悲しませないためです! エナ一人ではすぐにバレるでしょうし、穏便に済ませるには手伝うほかないでしょう……」
「わー、説得力ないー」
声を抑えつつ笑うエナ。
セキレイが一人残った教室は、まだ動きがない。帰り支度でもしているのだろうか。
ちらりとそれを確認してから、一段と声を落として口を開く。
「……もしかして、彼氏って下地かな? 最近なんだかつるむ事多いし、怪しくない?」
「――さあ。歴史のグループワークで同じになったからでは? それにこう言ってはなんですけど、下地さんはセキレイを狙うようなタイプには見えませんが……」
「まーそうだよね。そんな訳ないか――あ、セッキー出てきた」
がらりと音がして、白い髪が揺れた。
きゅうん、スターターが叫ぶ。
排気管が震えて、エンジンが目を覚ます。
プロペラがゆっくりと回り始め、唐突にぐんっと加速。三翅の羽が視認できないくらいまで早くなり、回転が安定して、薄茶色の残像に変わる。
計器盤を一通り眺め、三舵の動きも確認して、イスカはぐぐっと伸びをした。
振り返ればぴったりのタイミング。ひとつ結びにした髪を揺らして、セキレイが歩いてきた。
「おまたせ!」
「いいタイミングだったよ」
「そう? それはよかったわ」
すた、と翼に飛び乗った。
初めの頃はゆっくり慎重に足をかけていたが、もう慣れたものだ。頑丈な部分だけを正確に踏んで、軽い身のこなしで後席へ乗り込む。
がらら、とキャノピィを閉めた。ベルトを締める。
「よし、じゃあ帰ろうか――ん……?」
バックミラーがちらちらと瞬いた。イスカが目を細めて覗き込む。
――何か動いている?
セキレイが後席から顔を出して、その様子に首をかしげた。キャノピィを開けて、後ろを見た。
「――――――あっ」
「……どうした?」
イスカも振り返り――。
「あー……」
手を振りながら走ってくるエナを見て、思わず固まった。
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