038 飛行機カフェでお昼ごはん
「――何にする? 私はとりあえずオリジナルブレンドを頼もうと思うけれど」
「いいね、僕もそれにしようかな」
「わかったわ。――マロンさん、オリジナルブレンドを二つくださいな」
「はーい、ちょっと待っててね……そうそう、二人ともお昼は食べてきた?」
首を振る二人を見て、カウンター越しにマロンは顔を近づける。
「……実は、軽食で新しくメニューに追加しようと考えてるものがあるの。よかったら、食べて感想を聞かせてくれないかな?」
「え、食べたい! どういうもの?」
「ホットドッグだよ。あ、でもセキレイちゃんにはちょっと大きいかも……」
「大丈夫、食べられるわ! 下地くんも食べるわよね!」
「うん。――じゃあそれも二つ頼みます」
「はーい!」
指で丸をつくるマロン。
ポットを火にかけ、二つ取り出した細長いパンにナイフをひとなで。保温してあったオーブンへ入れたら、今度はコーヒーミルへ豆を入れ、ハンドルを回す。絶え間なく、豆を挽く音が響く。
「……このお店は、マロンさんが始めたの?」
「ううん、もともとはわたしのパパのお店。空軍の戦闘機乗りだったんだ。パパが軍に戻ってきてほしいって頼まれちゃったから、わたしが跡を継いでる感じかな」
戦闘機乗り、という部分で、イスカが無意識に目を伏せた。とはいえ誰にも、もちろん彼自身も気づくことはなかった。
それで飛行機カフェなのねー、とセキレイは店内を見回す。
そうそうと頷きながら、マロンはフライパンへソーセージを二つ入れる。入れ替わりに丁度沸いたお湯を取って、挽きたての粉の上からゆっくり注いだ。
こんもりと膨らんだところでポットを置き、ソーセージをひっくり返す。流れるようにパンの焼き具合を見てから、他のお客さんの会計へ向かっていった。
(……すごい、無駄な動きが全くない。惚れ惚れするくらいスムーズだわ……!)
(……天乃さんから見てもそうなのか)
(もちろんよ。私には出来ないかも……さすがマスター)
こそこそと感心しあう二人。
すぐに戻ってきたマロンは、てきぱきと残りの作業を済ませ、とん、とカウンターを鳴らした。
「お待たせ、オリジナルブレンドとホットドッグ。熱いから気をつけてね」
湯気の立つマグカップと、一つずつお皿に載ったホットドッグが並ぶ。
いただきます、とどちらからともなく言って、二人はカップを口に運んだ。
「――おいしい。……ほっとする味」
セキレイがほぅ、と息を吐く。
イスカはごくりと喉を鳴らした。苦いというより香ばしい、そしてなんとなく甘みを感じる味わい。毛布で包まれた時のような温かさが、じわりと染みわたる。
もちもちのパンに焦げ目のついたソーセージが目立つホットドッグには、良く冷えた酢漬けの千切りキャベツがたっぷりと詰め込まれていた。
程良い酸味が溢れ出す肉汁と相まって、ジューシーでありながらも後味はさっぱり。こってりさはほとんど感じない。
今すぐメニューに追加するべき、と太鼓判を押した二人に、マロンはよかった、と微笑んだ。
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