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037 天乃さんと飛行機カフェ

 すらり、と香ばしい空気が流れ出て、二人を包んだ。いらっしゃいませ、と奥から声がかけられる。

 柔らかな光に誘われるように、セキレイはゆっくりと足を踏み入れる。イスカは後ろ手で扉を閉めた。

 入って右手にカウンターが伸びている。その後ろには棚があって、ずらりと飛行機のミニチュアが並んでいる。

 

 カウンターの向かいには年季の入ったテーブルがいくつかあって、ぽつぽつとお客さんで埋まっていた。

 天井で空気をかき混ぜている換気扇からは、紐で飛行機の模型が吊り下げられて、店内をぐるぐる旋回している。

 奥の方にはなぜか、円筒形のエンジンが鎮座していた。飛行機カフェなのだから、航空機用のレシプロエンジンだろうか。

 

 ――ところどころマニアックだけど、意外と普通のカフェだな……と、イスカは思った。てっきり真ん中に実機が置いてあったり、それどころか実機の中にお店があるとか、そういうのかと思っていた。


「いいわね、いいわね……!」


 イスカの印象には反して、セキレイは物足りなさなど全然感じないといった様子。


「あからさまにじゃなくて、ちょうどいい塩梅なのがいいわ……!」

 

 若干前のめりになって、うんうんと頷いている。

 なんとなくそれを見ていたイスカは――不意に足元に気配を感じた。


「――オゥ」


 思わず変な声が出た。

 隣の白髪がぴく、と跳ねる。

 セキレイはまずイスカの顔を見て、目線を辿って下を見て――目を輝かせながらすとんとしゃがんだ。


「……こんにちは!」


 真っ黒な尻尾をひとふりして、なー、と返事が返ってくる。背筋をぴんと張って、つややかな毛並みの黒猫がそこにいた。

 濡れた鼻先で、差し出された白い指先をふんふんと嗅いだ。


「――その子、うちの店員なんだ」


 優しい声に二人して顔を上げると、黒いエプロンを付けた女性が微笑んでいた。

 ふわふわしたブロンドヘアは後ろで結ばれ、垂れた目尻とぱっちりしたクルミ色の瞳が穏やかな印象を感じさせる。背はイスカと同じくらい。

 威圧感はないが堂々としたその佇まいから、多分年上だろうな、とイスカは思った。


「ようこそFLAPへ。わたしはマロン、ここのマスターをしてます」


 それからその子はココっていうの。マロンに紹介されて、黒猫のココはなぁ、と挨拶する。


「私はセキレイっていいます。 こちらの彼は下地くんです」


 勝手に紹介されるイスカ。


「セキレイちゃんね。それと……下地君、下の名前は何ていうの?」


「――イスカです」


「イスカ君。セキレイちゃんとイスカ君ね! 来てくれてありがとう」


 にこりと笑ってから、マロンは空いてる席にどうぞ、と促した。

 迷わずセキレイはカウンターへ向かう。オイル仕上げのスツールを引いて、二人は並んで座った。

 とてとて、と去っていく尻尾を名残惜しそうに眺めてから、セキレイはメニューを開く。

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