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033 天乃さんの誘い

「――下地くんって、休みの日は何しているの?」


 いつもの放課後、空の上。

 セキレイの質問に、イスカは少し考えて答える。


「そうだな……基本的にはゆっくりしてるよ。たまに本を読んだりもするけど」


「ふうん……だったら今週末も、同じ感じかしら?」


「ああ。そのつもり」


「じゃあ私と遊びに行きましょうか」


「ああ……は? え?」


 少し機体が揺れた。聞き間違いだと思った。

 しばし思考を巡らせて、ぽん、と膝を叩く。

 

「――ああ、こないだトランプをした皆でってことか……」


「違うわよ。二人でってこと」


 ――そのままの意味だった。

 動揺しつつ、こっそりバックミラーを覗く。いたって普通の顔をしたセキレイがいた。


「えっと、なんで僕と」


「友達だからよ?」


 ――不意打ちをくらって照れそうになる。後席から顔が見えなくて本当によかった、とイスカは思う。

 愛機の座席配置に感謝するのは初めてであった。

 

「――まあ実を言うと、行ってみたいお店があるのよ。ここなのだけれど」


 がさ、と回ってきたのは、イスカでも名前は知っているファッション誌。天乃さんもこういうの読むんだな、と少し意外に思いながら、左手で膝の上へ。

 付箋がついてるとこね、と付け足す声に従ってページを開くと、ユニークなカフェ大集合! とポップなフォントが踊っていた。

 

 見開きで四店舗が紹介されていて、付箋のあるページには「FLAP」と「フクロウの森」という二つのカフェが載っている。

 流し読みしてみると、どうやら「FLAP」は飛行機がテーマの店で、「フクロウの森」は猛禽類と触れ合えることが売りらしい。


「……どっちに行きたいの?」


「どっちだと思う?」


 どちらも行きたいと言いそう、と迷うイスカ。

 飛行機好きだと言っていたし、動物と戯れるのも好きみたいだったし。

 とりあえず、最初のほうを言ってみた。


「飛行機のほう?」


「当たり! 下地くん、私のことわかってきたわねー」


 ――適当に選んだことは黙っておく。


「まあそういうことで、下地くんに乗せていってもらおうかな、って。私の飛行機、なんかメーカーの工場まで持ってかれちゃうみたいで、全然戻ってくる気配がないのよ」


 ――あぁなるほど、要するに移動手段が欲しかったのか。

 イスカはうんうんと頷いた。そりゃあそうだ、いきなりデートじみた事に誘われたのかと驚いたが、それなら納得できる。むしろ安心したくらいだ。

 ……少し期待してしまったことは、心の奥にしまっておこう。


「わかった、いいよ」


「やった! ありがと」


 戻ってきた雑誌を受け取り、セキレイは声を弾ませる。

 それから囁くように、そっと付け加えた。


「……ちなみに下地くんと行きたいっていうのは建前たてまえじゃないわよ。そのままの私を知っているの、下地くんだけだから」


 ――今度こそ、イスカは派手に照れた。

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