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029 天乃さんと二人の友達

「トランプやろー!」


 お昼休みの、半ばを少し過ぎたころ。

 お弁当を食べ終えた友達二人の前で、エナが腕を振り上げながら宣言した。

 

 手にはトランプの紙箱が握られている。古めかしい三輪車のイラストが描かれた、「トライシク」という有名な銘柄。


「……いいですけど、どうして急に?」


 カラが尋ねた。

 どこでも売っているような安物ではない上に、よく見れば箱の封すら切られていない新品だというのがちょっと気になる。

 

 よくぞ聞いてくれました! とばかりに、エナはえっへんと腕を組んで言った。


「……実はね、こないだマーケットですごいの見つけて、思わず衝動買いしちゃったんだよ――なんと、カートンに入ったトランプ!」


 目が半開きになり、へえー……と呆れるカラ。

 セキレイの方は、目をぱちくりさせていた。


「……え、すごくない? 十二箱セットのトランプだよ? それもちょっと高級な、なんだっけ……そうそうトライシク、ってやつ!」


「――確かにカートンで売っているのは見たことないわね……」


「でも買おうとはならないと思いますが……だいたいトランプは一個あれば十分では? エナはトランプ持っていなかったのですか?」


「ううん、確かキャラ物が何個かある!」


「ならどうして」


「え、すごい……から? そうそうレアだから!」


「初等部の子供ですか」


「子供心は忘れちゃだめだよー、ただでさえカラは真面目堅物委員長なんだから、早く老けちゃうよ?」


「ん? バカにしてます?」


「そっちこそー」


「まあまあ、とりあえずやってみない? お休み終わっちゃうわよ?」


 するり、とセキレイが止めに入る。

 エナとカラはちらりとセキレイを見て、くいっとお互いを見つめ合った。


「……いいでしょう、勝負はトランプでつけましょう」


「……望むところだぜ、お嬢ちゃんよ」


 芝居がかった口調で言って、エナは紙箱を持ち上げた。

 蓋を抑えているシールを、爪でなぞって筋を入れる。三回目でぴり、と綺麗に破れた。

 覚悟はいいか、と勿体ぶって二人の顔を見つめる。

 それからゆっくり指を差し込み、開けた。


「……すごーい! さらさらだよこれ!」


 するっと流れ出てきたカードをつまむ。

 程よい厚みとはっきりした印刷、しかも触るとほのかな凹凸があって、滑りすぎないような加工をされていることがわかる。

 まさに、名のある銘柄にふさわしい質感。


「……水を弾きそうですね」


「……なんだか、気持ちのよい触り心地ね」


 興味のなさそうだった二人がつられてカードをいじっている様子に、エナの口角がにまーっと上がる。


「――では! この高級トランプでババ抜きをしよう!」


 とんとんとカードの角を揃え、配ろうとしたエナ。

 その手が不意に、ぴたっと止まった。


「――待って。三人だけでやるのはもったいないかも……」

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