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027 天乃さんとぞうきん犬

 誰だ今のは……?

 こっそり覗いてみると、跳ね回る犬と戯れる人影が見えた。

 ぞうきんみたいな、灰色もしゃもしゃ犬。

 そして白い髪を後ろで結んだ、制服の女子。

 後ろ姿はセキレイに見えるけど……。


「んーっ、よしよしよしよし! 可愛いわね、えへへ……きゃんっ!」


 ……いやあれは天乃さんじゃないな。


 勝手にそう決めるイスカ。彼女に姉妹やそっくりさんがいるという話は聞いたことがないが、セキレイがああやってはしゃぐとは到底考えられない。

 ほら、今度はぞうきん犬と一緒に踊っているし。人違いだろう。


「わっふ、わっふっ………………」


 くるくる回っていた女子は、こちらを見るなり停止した。わふ? とぞうきん犬が不思議な顔をする。

 風が二人の間を、静かに流れていった。

 白い髪が、ぺたり、と顔に張り付いた。

 こちらを向いた、その顔は――。

 

「――下地くん……」


 ――セキレイだった。

 一瞬頭が理解を拒む。ふるふると首を振り、二度見するイスカ。やっぱりセキレイである。


「――――ッッッ!」


 透明感のある白い肌が、瞬く間に真っ赤に染まった。青い目が、何回も瞬きをする。口を押さえた二つの手も、いつもより幾分赤みがかって見える。

 イスカは話しかけようとした。

 見なかったことにして、戻ろうと思った。

 だが、口を開きかけた次の瞬間。


「……い、いやーーーーーーっ!」


 セキレイはその場から逃げ出した。






「――待って、どうして逃げるのっ」


「ワンワン!」


「――やだ! 恥ずかしい! やだーっ!」


「ワオン! ヘッヘッヘッヘッ」


「――見なかったことにするから、忘れるからさっ!」


「嘘! 笑うでしょ、笑って私のことをかわいそうな目で見るんだわ! わかってるものっ!」


「ワンッ!」


「しないよ! だから待ってくれ――そうだっ、帰りはどうするっ――待ってればいいっ?」


「――歩いて帰るわっ!」


「――無理に決まってるだろ!」


「バウ!」


 二人と一匹の校内鬼ごっこ、スタート。

 セキレイは速かった。軽さを活かしてスピードを殺さずに階段を駆け、廊下を疾走。食堂を通り抜け、中庭を走り抜け、飛ぶように階段を駆け降りた。

 楽しそうに吠えながら、ぞうきん犬が後に続く。ちぎれんばかりに振られた尻尾を睨みつけ、イスカも校内を駆け回る。

 

 迷子犬を探しているはずの教師たちは外にいるのか一度も出会わず、誰もいない校舎の一階から四階までを二往復もして、結局元いた場所まで戻ってきて、ようやく鬼ごっこは引き分けとなった。


「ゥワンッ!」


「……お前は、はぁっ、元気だなあっ……」


 もう終わり? とでも言いたげな顔をするぞうきん犬を、イスカとセキレイは恨めしそうに見つめた。

 息も絶え絶えの二人は、ぜえぜえと空気を吸い込み続ける。どこもかしこもびしょびしょなのは気にする余裕もない。

 息が落ち着くまで、ぞうきん犬はおとなしく待ってくれていた。


「ああっ! 見つけたぞっ……おや?」


 遠くから聞き覚えのある声がして、ざすざすと足音が近づいてくる。

 さっきすれ違った担任は、汗だくの二人と一匹を見て混乱していたが、不意にぽんと手を叩いた。


「――そうか、お前たちが捕まえてくれたんだな! 助かったぞ二人とも!」


 ……イスカとセキレイは顔を見合わせた。

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