025 天乃さんと小さな不満
「まぁ、答えられたのだからいいじゃない」
授業の最後、余った時間での反省会。
開口一番、不満を言い始めたカラをセキレイは軽くなだめた。
「……普通は答えられません。というか、微妙に答えられそうな質問で余計にたちが悪いです」
それでもなお頬を膨らませ、腕組みし続けている。さすが天乃、ってことでいいじゃねえか、とティトが助け舟を出した。
「でも珍しいよな、天乃を困らせようとするなんて。だいたい皆、崇拝したり憧れたりしてんのに」
「……確かに。天乃さんにああいう態度取る人、初めて見たよ」
セキレイを困らせるといえば、この前の告白を思い出す。でもあれは好意が暴走した結果だろうし、これとは別物か。
さっきのやり取りは、セキレイを快く思っていないことがわかる言い方だった。
ところで本人はといえば、あまり気にしてはいない様子で。
「崇拝……? それはなんというか、困るわ。好意を持たれるのはありがたいけれど」
「諦めろ、信者は結構多いんだ」
全然違う方を気にしていた。
学校併設の飛行場を飛び立てば、建物はあっという間にまばらになる。
たまに畑や牧場があったり、ぽつりぽつりと家が建っていたりはするが、ほとんどは焼け残った柱や緑がかった骨組みが残るだけの草原が広がっていた。
小川が自由きままに流れ、舗装されていない茶色の小道がかろうじて伸びている。
牧歌的な印象に隠れる荒廃した景色の上を、黄色い機影が通り過ぎていった。
「……あの質問、よく答えられたね」
イスカが、さっきから気になっていることを尋ねた。
皆で前もって準備していた回答の中には、あのようにピンポイントな質問は入っていない。それなのにアドリブで――怖気付いたりしないのはセキレイだからと言う他ないが――あそこまで説得力のある回答がなぜできるのか。
「実はね、結構適当なのよ? うまくいったけれど」
まず、セキレイが担当していた戦闘機の使用率へそれとなく誘導。年代から使われていた機体を予想し、調べた時に見ていた使用率の表を思い出して答えた。
だからは機体名は当てずっぽうだし、戦闘機以外の機種は答えられなかった。
「……ね? 意外とがばがばでしょう」
「そもそも年代から使われていた機体を予想するところから無理だよ……なんで予想できるんだ」
「それは私が飛行機好きだからかしら」
「そうなのか。……意外だ」
あれ、言ってなかったかしら。小さく首を傾げたセキレイだったが、そうよそれよりも、と手を叩いた。
「これからは、学校でも話しかけるようにするわね」
「えっ」
「だってもう変じゃないでしょう? 同じグループだったっていう理由もできたし、大丈夫よ」
「ええっと。僕が皆から恨まれる気がするんだけど」
「諦めて。友達でしょう」
「……いいけど。なんで突然」
「内緒。――あと、この間カラに褒められたとき、すごいへらへらした顔だったわよ。カラは美人だし、仕方ないけれど」
「なっ……そんな訳ないよ!」
「自分の顔は自分で見れないもの。気をつけることね」
ふん、とそっぽを向かれてしまう。
なんか怒らせることしたかな……、と思い返すも、やっぱり何も思いつかない。困った。
(……秘密の友達だったのに)
「ごめん、今なにか言った?」
「いいえ、なーんにも」
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