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024 天乃さんと不穏な質問

 迎えた最終日。

 全グループ分の時間を取るため、始業チャイムを皮切りに発表が始まった。


 人口の変化、ターニングポイントとなった戦い、各国の参戦理由などの真面目なテーマが多かったが、戦時中の恋愛という珍しいものや各勢力の戦術ドクトリンという相当マニアックなものも。

 

 ちなみに、ティトが最初に提案した「戦時下の食事」というテーマは、三つのグループが採用していた。

 ほら言ったでしょう、とカラにいじられ、苦笑いするティト。


「――このようにスコラ市のアキュラ神聖国軍が撤退したことが、結果的に連合国軍の反攻作戦を成功させたと考察できます。以上で発表を終わります」


 ぱちぱちと拍手が起こり、前のグループの発表が終わる。質問はあるか、と教師が見回すが、相変わらず挙手はなかった。

 くるくるとポスターを丸めて戻ってくるクラスメイトと入れ替えに、四人はぞろぞろと黒板へ向かう。

 セキレイがいるからか、期待の視線がひしひしと感じられた。


 ――発表するのは、くじ引きで決まったイスカなのだが。


 若干のプレッシャーにたじたじしながら、ポスターをひろげて磁石で止める。おお、と声があがるのは、カラ渾身のレイアウト&セキレイ画伯のイラストのおかげだろう。

 教師が頷き、開始を告げた。

 一礼して進み出るイスカ。ブーイングこそないものの、セキレイじゃないのかとがっかりした空気。

 台本に意識を集中させて、話し始めた。






「――以上で発表を終わります。ご静聴ありがとうございました」


 しっかり台本通りのナレーションを終え、ほっとするイスカ。贈られる拍手はこれまでのグループに対するものと変わりないが、それがかえって安心できた。

 変わってセキレイが、質問を受けるために進み出る。とはいえ、質問は無いだろうと四人は踏んでいた。

 教師が質問を促す。


 手が挙がった。


 (え、マジ?……痛っ)


 ぼやいたティトをカラが小突く。

 どうぞ、とセキレイが言って、気が強そうなポニーテールの女子が立ち上がった。確か、名前は大間オオマシコと言ったか。

 おや、とイスカは違和感を感じる。セキレイに向けられた視線が、少し尖っているように見えたのだ。

 

「――前のグループはスコラ市の重要な戦いについて発表していましたが、その時に使われた飛行機って今どれくらい乗られてるんですかー?」


 わずかに悪意を感じる声で、投げられた質問。

 

 ――そんなこと、知っているはずがない……!


 発表の内容は今日知ったばかりだし、そもそも前のグループは使われた飛行機の種類までは言っていない。

 仮にそれを知っていたとしても、現在の使用率は意識して見ていないと覚えている訳が無い。

 明らかに、答えられないことをわかって言っている。


 ――もしや、人気者に恥をかかせようと……?


 セキレイを除く三人が、後ろで顔を見合わせた。

 カラが文句を言おうとした、その時。


「――スコラ市での戦いは、八一年だったかしら」


 それを後ろ手で制しながら、セキレイが聞く。前のグループメンバーが頷いた。

 ありがとう、と微笑んで、続けた。


「……航空機――とりあえず数が多い戦闘機で考えると、その年代の主力機はアリオンMk.ⅩⅤ。私たちが調べた戦闘機使用率のデータによれば、現在のアリオンMk.ⅩⅤの使用率は第五位。今でもそれなりに乗られていると考えられます。……これでよろしいかしら?」


 一瞬の静寂の後、驚嘆の声がそこかしこから溢れ出た。

 すげえ、答えられるのかよ! さすがは完璧美少女だ……。やーんかっこいい!

 後ろでは、呆気に取られるイスカたち。


「……へぇ。あーはい、ありがとうございました」


 口をへの字に曲げて、質問したシコは座った。

 それ以上の質問はなく、一礼して出番を終えたセキレイたちには万雷の拍手が贈られたのだった。

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