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022 天乃さんとお気に入り

「……ごめん。戦闘機以外を選ばせてほしくて」


「そりゃいいけどよ……戦闘機は人気なやつじゃないか。何かあるのか?」


 唇を噛む。言った以上、理由は言わなければいけないだろう。しかし声が出てこない。

 ティトは不思議そうな顔、カラは怪訝な顔。セキレイは一瞬首を傾げてから――少しだけ、微笑んだ。


「――無理に言わなくても、大丈夫よ」


「……だけど」


「いいわよね? 二人とも」


 困惑の色を浮かべつつも、二人は頷いた。

 ありがとう、とイスカが頭を下げた。

 空いた間を逃さず、じゃあ私が戦闘機をやるわね、とセキレイが言い出し、我に返ったティトが待ったをかける。

 俺がやりたい、戦闘機は男の憧れなんだ。じゃあじゃんけんしましょう、じゃんけんぽん。私の勝ちね。


「ウッソだろ……」


 テンポよく負けるティト。戦闘機はセキレイに決まり。


「――用途の変化が分かりやすいので、私は爆撃機を希望しますが……下地さんはいかがですか?」


「うん、大丈夫。僕は戦闘機以外ならいいから」


「……四重、なんでイスカだけに聞くんだよ?」


「有馬さんはセキレイに負けたでしょう。選ぶのは最後ですよ」


「あ、マジか」


「ええ、マジです」


 ――結局イスカが先を譲り、ティトは輸送機に落ち着いた。理由は大きいかららしい。






 三回目の授業では、四人は図書室にこもっていた。

 流石に人気機種まで国が統計を取っているわけもなく、そこらへんの情報はマニアックな本に頼るしかない。


 幸い蔵書は多く、新冊の購入も頻繁に行われているため、昨年度までの情報はなんとかなった。


「――マドガルMk.Ⅱ、グラヴラーA3、ラストラス……だいたいこの三機種かな。グラヴラーは本によって年式がばらばらだけど、まあいいか」


 イスカの担当は攻撃機。二人ないしは三人乗りが多く、一人乗りの戦闘機が十代に人気なのに対し、こちらは二十代からの支持が多い。

 ちなみに年齢が上がるにつれて、家族全員を載せられるように搭乗人数が多い機種が人気になってゆくようだ。


 ノートに内容を書き留めていると、何かが手元へ転がってきた。手で壁をつくる。消しゴムの脱走は終わりを迎える。


「助かった、イスカ。そいつすぐいなくなるんだ」


「もう変え時かもね。ビー玉より小さいし」


「だな。――はー、疲れた!」


 ティトの声につられて、イスカもペンを置いた。

 ひと段落ついたような空気が流れて、女子二人もノートをはらった。


「みんな、今どんな感じかしら?」


「私、一応調べ終わりました」


「俺もー」


「僕も」


「ちょうどいいわね。ちょっと見せ合いましょうか」


 ばさばさ、と並べられるノートたち。

 達筆のカラ、まとまったセキレイ、書きなぐったようなティト、つらつらと長いイスカ。


「……読めるからまだいいですけど。有馬さん、もう少し綺麗に書いてくださいな」


「次はな~善処するわ」


「カラのはさすが、見やすいわね。有馬くん、真似したらどう?」


「どうぞしっかり真似してください」


「うえー了解。――おいイスカ、お前も一緒に……いや汚くねえな。しかも意外とちゃんと書いてるな!」


 正直ここまで書かなくてもよかったかも、とイスカは苦笑いする。

 カラがページを覗き込んで、――へえ、と瞳を大きく開いた。


「内容――特に考察、わかりやすいです。下地さんは文章が上手ですね」


「お、よかったなイスカ。こう見えて優秀なのがバレちまうな」


 ちなみに俺のには何かないの、とティトは聞いたが――。

 

「有馬さんは……そうですね。勢いがよい……んじゃないでしょうか」


「……悪かった、無理して褒めなくていいから」


「あと全体的に雑ですね。下地さんを見習ってください」


「切り替え早いな!」


 カラが小さく笑いを漏らす。

 セキレイは相変わらず笑顔だったが、その瞳がほんの僅かに不満の色を映したことには、誰も気付きはしなかった。

読んでいただき、ありがとうございますっ!


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