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012 始まる二人のエアライン

 翼に二つのエンジンを付けて、イスカの愛機「ストルクⅡ」より二まわりほど大きな機体が滑走路を走ってゆく。

 

 スクールエア――輸送機を旅客機へ改装し、数十人の生徒を街の飛行場まで送り届ける、いわばスクールバスの飛行機版。

クリームイエローのボディに「5th I.S.(第五統合学校)」のステンシルが黒く輝く。

 ごうんごうんと唸りながら、クジラのような機影はのっそりと上昇していって、瞬く間に見えなくなった。

 

 あれがイスカたちの街まで来てくれれば、こうやってセキレイと帰ることもなかっただろう。恨み言を言うべきか、お礼を言うべきか。

 今のイスカはまだ、はっきりしない。

 急かすかのように自動管制装置のモニターが光って、イスカはぐるぐるした感情を追い出すようにスロットルを押し上げた。





 

 行きとは逆に太陽は沈み、オレンジの濃度が増していく、そんな帰り道の空。

 キャメルイエローの「ストルクⅡ」は周りの色に溶け込むように、夕暮れの中を飛んでいる。


「――そういえば、思ったのだけど」


 セキレイの声が、伝声管から聞こえてきた。


「珍しいわよね、練習機に乗っているのは。男の子ってだいたい、戦闘機に乗りたがらない?」


「……ああ、確かに。まぁ速いし、憧れるんじゃないかな」


「下地くんは、戦闘機に乗りたいとかは思わないの?」


「全く。こいつで充分だよ」


 そう言ってこんこんと軽くガラスを叩いた。


 ――それに、戦闘機にはいい思い出がない。


 ざざ、とさざ波が心を揺らす。

 後席のセキレイはそんなイスカに気付くことなく、話を続けた。


「私は、空が好き。そこへ手を届かせてくれる、練習機も戦闘機も旅客機もひっくるめて、飛行機が好き」


 ――空はどこまでもひと続き。なにも混じり気がない、素直なところが羨ましい。


「……下地くん、()()()()()()()()のは好き?」


 バックミラー越しに真っ直ぐな瞳が、イスカに問いかける。青空のように透き通った、素直な瞳。


「……()()()()のは好きだよ」


「……そう。私も」


 全て通じてはないけれど、通じ合う所もあって。

 だけどクラスでは片や天、片や地という反対ポジション。

 そんな二人のちぐはぐなエアラインは、この日から始まった。






 とはいえ、学校の中で会話することはほぼなくて。

 珍しくその機会が訪れたのは、それから数日が経った、ある日のことであった――。

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