表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/99

011 天乃さんと初めての放課後

 学生の一日は早いもので、昼食を取ったと思えばあっという間に放課後がやってきた。

 

 「じゃあね、セッキー!」「セキレイ、また明日」


 「ええ、またね」


 駄弁っていたクラスメイトもぱらぱらと席を立ち、セキレイは穏やかな笑顔でそれを見送る。


 ティトは他クラスの友達と遊びに行くらしく、彼は今回も誘ってくれたが、イスカはやんわりと断った。

 

 いい感じに人も捌け、教室には二人きり。

 単に「帰りは先に飛行機出しておくから、後からこっそり来てほしい」と伝えたかっただけなのだが、突然話しかけに行くと周りから怪しまれるのでタイミングを伺っていた挙げ句、放課後になってしまった。

 

 飛行場に着いた時点で言っておけばよかったのだろうが、言い忘れたというのは、自分も割と緊張していたのだとイスカは気付く。

 人との関係を云々言っておきながら、美少女と登校するくらいで緊張する自分に少しうんざり。

 それはともかく、今から言ってもぎりぎりセーフだろう。そう思って鞄を手に取ると。


「――じゃあ下地くん、帰りましょうか」


「ちょっと待った」


 普通に話しかけられて慌てるイスカ。

 スパイ映画のエージェントよろしく、目の動きだけで周囲を索敵。……よし、誰もいないようだ。


「……話しかけないようにって言ったじゃないか」


「そうね、だけどもう誰もいないわ。それに帰りをどうするか、話してなかったから」


「ちょうどそれを伝えに行こうとしてたんだよ……」


「え、これから帰るのに? そうしたら一緒に帰るほうが早くないかしら」


「まあそうではあるけど……そうだ、天乃さんはどうなの?」


「どうって?」


「僕と二人で帰っているのを見られたりでもしたら、嫌じゃないの」


 「べつに嫌じゃないわ。私、下地くんのこと嫌いじゃないし」


 そういう意味ではないと分かってはいる。

 分かってはいるが。

 ――曇りのない真っ直ぐな瞳で言われると、どうしても鼓動が早くなる。


「……あら、勘違いしないでね。嫌いじゃないし感謝しているけれど、好きってほどではないわ。普通よ」


「わかってるよ!」


 男性本能として残念な気持ちもわずかながらあるものの、マイナスではなく普通だと言われたことが少し嬉しいイスカだったが。


「それに噂になったら本当のことを言えばいいのよ。やましいことはして無いのだから」


「勘弁して、有名人のゴシップよろしく民衆が押し寄せてくるから」


「民衆って……ふふ」


「とにかく飛行場までは別々、これは絶対」


「つれないわねー」


 恐ろしいことを口にするセキレイをなんとか押し留めたことで、イスカはまたしても、どっと疲れてしまったのだった。

続きが気になってもらえたら、ぜひブックマークをお願いします!

★評価も頂けると、とても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ