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現実世界恋愛

とんかつは祖父の初恋の味

作者: 本羽 香那

しいな ここみ様が主催されている「とんかつ企画」に参加させていただきました。

 

 毎回とんかつを見る度に祖父の話を思い出す。

 とんかつが初恋の味であると言うお話を。



 祖父は明治時代に生まれた人であり、学生の時に大正時代で当時流行りであったとんかつと言う洋食料理は、皆が口を揃えて美味しいと言っていたらしい。

 そんな噂を聞いた祖父は近くにある洋食屋に足を入れ、とんかつを注文したと言うのだ。

 しかし、その時店主が体調を崩して作ることが出来ないからと、代わりにそこの娘が普段より少し安くして料理を作ると言うことだった。

 祖父はちゃんと作れるのか少し不安になったらしいが、その当時はとんかつは高かったと言うことで、少し安く食べられるなら良いかと注文したのだと言う。

 出されたとんかつの見た目は少し歪つであり、そこでも不安を感じたらしいが、食べると見た目に反した味だったらしい。

 とても優しくてホッコリする味だったと言うのだ。

 祖父は思わず美味しいと言うと、娘は後光が差したかのような眩しい笑顔でありがとうございますとお礼を述べたと言う。

 この時、大きな胸の高鳴りを感じたらしい。

 その店を出た後、もう1度食べたいと思ったらしいが、まあまあ高いため、おいそれとは行くことが出来ず、次に行けたのは1ヶ月後だったと言う。

 しかし、その時には店主が復活しており、残念ながら娘が作ったとんかつは食べられなかったらしい。

 そのとんかつは、娘のとんかつよりもサクっとジューシーで美味しかったらしいのだが、好きなのは娘が作ったとんかつであったと言う。

 そのため、その時とんかつを運んで来た娘に、思わず貴女のとんかつの方が好きだなと言ってしまったらしい。

 その言葉を聞いた娘は大変驚いたらしいが、褒めてもらって嬉しかったらしく、良ければまた作りますよと言ってくれたことからその娘と仲良くなり、交際が始まったと言うことだ。

 実はその娘と言うのが、祖母であり、交際後そのまま結婚したのである。

 当時はお見合い結婚が主流だったため、恋愛結婚と言うのはかなり珍しかったらしい。

 とんかつが恋のキューピットと言うことで、祖父の初恋の味は甘酸っぱいとかそう言うのではなく、祖母が作るとんかつであると言うことだった。

 

 祖父母はその当時でも、大変仲が良く、その話をとても羨ましがって聞いていたのだが、まさか自分も祖父と同じく、とんかつが初恋の味になるとは夢にも思わなかった。

 自分の場合は、学生時代にお弁当を忘れた時があり、その時にたまたま隣にいた女子がお弁当をお裾分けしてくれて、その時の具材がとんかつであったのだ。

 そのとんかつが美味しいからまた食べたいと言ったことがきっかけで仲良くなり、後に彼女が妻になったと言うわけである。

 そんな妻とは、今でも大変仲良しな夫婦だ。

 



 もしかしたら、とんかつは様々なところで初恋の味として思い出に残っているのかもしれないと常々思うのだ。


ご覧いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵ななれそめ! ホンワカする話ですねー。( *´艸`) 現実恋愛だけど、大正時代だから歴史ジャンルでもアリというお話ですね。
[一言] とんかつが初恋の味……素敵なエピソードですね(´ω`*) プロのお父さんより、娘さんがつくったとんかつ。 娘さんの人柄があらわれていたのかも知れませんね。 自分の素直な気持ちを伝えるおじいさ…
[良い点] 現代の時間軸からそう遠くないであろう視点人物の学生時代と、視点人物の祖父の青春時代である大正期。 二つの時代においてトンカツが恋の馴れ初めになっているのが、何とも奥深いですね。 [一言] …
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