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第二十七話 王

──────

────


 トローシャ襲撃から二日後の夜。


 クク国の中心にそびえ立つ城の一室で、月明かりと共に怪しげな声がただよう。


「クク国から民が逃げ出しています」

「そんなことは分かっておる」


 声の主は転次郎を召喚した魔法使いと白く長い髭を揺らす国王。


「失礼しマス」


 身体中に巻き付けた白い布から生える赤毛を揺らしながら、国王の会話に割り込んだのは死んだはずの人物だった。


「サチェルか重要な情報があるそうだな、国王にもご説明なさい」

「はい。その前にひとつお約束いただきたいことがありマス」


 不機嫌そうに眉をひそめた国王が口を開く。


「約束だと? ──申してみよ」

「異世界人、転次郎の首を私にくだサイ」


「失踪した異世界人か、構わん。好きにしろ」

「感謝いたしマス」

「して、情報とはなんだ? 約束までさせて下らん情報なら命は無いと思え」


 現れるなり権利を得ようとする態度が気に食わず、鼻をならし脅しをかける。


「──国民失踪の黒幕は転次郎デス。やつは国外に新たな国を作っていマス。消えた民はすべて亡命したのデス」

「なんだと! ワシの奴隷どもを異世界人ごときが奪いよったのか! 即刻兵を差し向けて殺せ!」

「国王サマ、約束をお忘れですカ?」

「なんだ、貴様ワシに意見するつもりか」


 数秒前の約束を違えようとする国王をサチェルは真っ直ぐに見つめる。


「ヤツハ私ノ獲物デス」


 瞳孔が開ききり、深い闇を抱える目に見つめられ、国王は思わず黙りこんだ。


「やつらはボヘミア国を名乗り、強化したスキルで魔物を抑え込んでいマス」

「スキルを強化だと? だがトローシャに見つかれば死は確実だろう」

「一匹のトローシャはすでに討伐されましタ」

「トローシャが死んだのか! ──ボヘミアはそれほどの戦力をもっておると言うことか」


 トローシャはクク国にとって脅威だった。過去に自軍を壊滅させられ、以降国外への遠征は少数で行わざるを得なくなっている。


 クク国王にとってトローシャが減ったことは朗報だったが、トローシャに対抗できる軍団の存在は脅威以外の何者でもなかった。


「私に策がありマス。軍を預けていただければ必ずや転次郎を抹殺しマス」


 眉を寄せ怒り満ちた感情のままサチェルはにっこりと笑う。


「愚か者が! 貴様なんぞに──」

「よい。こやつの目は深淵を見ておる。死してでも成し遂げようと言う狂気をやどしているのだ。──軍を使え。ただし、しくじるようなら死ね」


 大きく揺れた白い髭はサチェルの話に乗る。


 シワだらけの右手でもった杖を握りしめ顔をしかめる魔法使いは反逆を恐れたが、王の決定に言葉を飲み込んだ。


「それでは、失礼シマス」



 約束を取り付けた赤毛の狂人は、子供のように喜びあしばやに部屋を出る。



「──事が済めばサチェルを殺せ。あれは手に余る」

「────っ! 仰せのままに」


 流されるがまま軍を明け渡した王を、心配していた魔法使いだったが杞憂だったと反省する。


 王は王。


 すべての国民が自身の奴隷だと、心の底から思っている王は、意見するものに生きる権利など与えない。


 王もまた狂人なのだ。

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